第二次極界戦争(二)
全てを理解している第十二関門の兵士の元に、何も知らない六人が向かう。
六人、危うし。
と、思われた。
だが、第十二関門の兵士も一つ知らない事があった。
それは何か、読めば解る。
「そろそろ第十一関門を突破した奴が来るぞ。構えていろ」
「おう」
ズドドドドドド…
「走ってくるみたいだ」
「強行突破か、一匹も逃すなよ」
「おう」
ズドドドドドド!
「来たぞ!」
来たのはあの六人ではなく、竜が二頭だった。
「ん…?竜…?」
「戸惑うな、撃て!」
「デッドパイレーツ!」
「ギャオオオオオオオオオオオ!」
「ギュルルァアァァ!」
竜二頭は死んだ。
だが、その間に本命は彼方へと去っていった。
「やったな、竜殺ったぜ!」
「馬鹿野郎ッ!敵は竜に注目させておいて、その隙に通り過ぎたんだ!」
「え゛」
知らない人に言っておくが、その竜二頭とはフェニックスが使う精霊技のサラマンダーと奥義の火竜である。
「いやぁ、第十二関門も楽勝だったな!」
「この調子で地下界に行けるんじゃないですか?」
だが、彼らはこの後、今まで当たった事の無い苦悩を知る。
第十三関門にて。
「…………。」
「…………。」
「…………。」
これぞまさしく「てんてんてん」だ。
「…………。」
「…………。」
「(^з^)-☆Chu!!」
最後尾、異物発見。
「ちょっと待て、誰だ最後の余裕こいてる奴」
「俺」
「調子乗んな、フェニックス…!」
「いや、最近俺不調」
「そーゆー調子じゃねぇ」
「どーゆー調子だ。長子か?聴視か?銚子か?町支か?弔詞か?」
「既に親父ギャグの域に達しとるぞ」
「てゆーかフェニックス、お前いつからそんなに単語覚えた。お前は天然お馬鹿キャラで今まで来ていたはずだ」
「歌わずのバラエティ特化型アイドルみたいに言うな。俺は生活と屁理屈に必要な単語を覚えているだけだ」
「思い出しますねぇ、恐竜英訳ダイアナ事件(お金稼ぎ【三】参照)」
話に乗れないサラマンダーが切り替えた。
「とにかく、この状況をどうするんだい」
「まず、状況を整理しよう」
「まず、前には壁があります」
「そして、いくら攻撃しても割れなかった。俺達が知らない何らかの防御がしてあると見ていい」
「そして、ここを通るには条件がある、と貼り紙がしてある」
「内容は、」
女であること。
「だな」
無理難題にも程がある。
「確実にからかってんな、この向こうにいる奴」
「対策を考えよう」
「…壁の向こうに聞こえないよう、静かにな」
以下、ヒソヒソ声である。
「この中で作り声出来る奴いるか?女声作れる奴」
「僕行けるかも」
「マジで、サラマンダー?」
「やってみよう」
さぁ、誰も見たことの無いサラマンダーを見ようではないか。
一旦元の声へ。
「んん゛、あの…私女です…」
ガスッ。
「ぎゃんッ!?」
「えーと、下から手が伸びてきてサラマンダーの股間を強く握ったね」
「えーと、そうやって確かめるのかな」
サラマンダー、死亡。
再び、ヒソヒソ声。
「そうやって確かめるなら、突破しようが無いよな…」
「どうしましょうか」
「皆さん…股間に激痛が走っている僕の心配は…」
「使えない奴の心配なんかしないよ、いつまでもそうやって寝そべってな」
「グハーン」
サンガーだけが何かを真剣に考えていた。
「どうしたんだ、サンガー?」
「あれは…確かめていたんじゃない」
「あれ」とは…「あれ」である。
「サンガー、じゃあ何なんだ?」
「お仕置き…ってトコかな」
「お仕置き?」
「サンガー、何でそう思うんだ?」
「だってお前ら…もしあそこに本当に女性が立っていたら、あんな事したら大犯罪だぞ?」
「言われてみれば」
「確かにね、女性に『あんな事』出来ないよね、『あんな事』…」
「妄想をするな、妄想を」
サンガーが五人を現実に引っ張り戻した。
「多分向こうの奴等はどこかから監視している」
「穴でも開いてんのか?」
「解らん。とにかく、多分見ている」
サンガーが壁を睨み付けた。
「どうすれば良いんだ…?」