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五人の覇者  作者: コウモリ
短編9
115/147

サラマンダー&リュウ

短編。サラマンダーの過去

火の覇者、火竜サラマンダー。

その名は産まれた時についた訳ではない。

無論ご存じだろうが、覇者になる時に変わったのだ。

その前の名を、リュウと言う。






「本当に元気な赤ん坊だ」

「あなたの様に強い戦士に育つわ」

「名前はどうする?俺に一つ案があるんだけど」

「言ってみて」

「リュウ」

「リュウ…その名をつければきっと素晴らしい戦士になるわ。そうしましょう」






リュウはマルチである事が後に解った。

マルチの戦士は最も少ない。

そして、最も強い。

だから、自慢の子だ、将来どうなるか楽しみだ、と彼の両親は考えていた。

だが、彼の将来を見ることは、両親には叶わなかった。






極界戦争の時、リュウはまだ三百歳程度だった。

「ママー、ママー」

「リュウこっちよ、早く来な…」

ドォーン…。

「ひぃい!怖いよママ…」

「大丈夫、あの中に入れば安全だから!早く来なさい!」

「もう、歩けないよ…」

「こんな非常時に…」

彼女は息子であるリュウを抱き上げた…

はずだった。

「ママ?マーマ、ママ!」

「リュ…ウ…生き残って…」

「ママー!どうしたの!?」

「んだァ?ガキか?どーします、隊長?」

「ほっとけ」

「おじちゃん達だーれ…?ママはどうなってるの…?」

「オメーのママはな…死んだんだよ」

「何で?何で死んだの?」

「お前のママが俺達の敵だからさ」

「どうして?」

「ごちゃごちゃうるせぇッ!」

「痛いッ!」

腹を思いきり蹴られた。

「ガキ!逃がしてやってんだからさっさと逃げろ」

それを聞くと、リュウは向かっていた方向にまた歩き出した。

「隊長、ホントに良いんスかぁ?逃がしちゃって…」

「フ…」

リュウが向かっていたのは修行の箱だった。

そこはシェルターになっていた。

だから、彼の母はそこに連れて行こうとしていたのだ。

母を失い、自然と涙が溢れる。

だが、修行の箱へと進んでいった。

罠とも知らずに。

「へぇー、そこに行くんだボーヤ」

「おじちゃんは…さっきの…」

「ありがとな、ガキ。皆の隠れ場所を教えてくれて」

「…?」

リュウには何が何だか解らなかった。

彼等が何をしようとしているのか解らなかった。

「おじちゃん達…何するの…?」

「あの中にいる奴を殺すんだよ」

「ダメだよ!あの中には友達がいっぱいいるんだ!」

「その友達は俺達の敵だ」

だが、男達の思うようにはいかなかった。

前に一人の男が現れたのだ。

「誰だテメエ…?」

「パパ!」

「あん…このガキの父親か…?」

「リュウ…ママはどうした?」

「死んじゃった…」

すると、父は敵を睨んだ。

「…貴様らがやったのか…?」

「その通りだ。そこをどいてもらおう」

「この向こうには沢山の仲間がいる…行かせん!」

「隊長、こいつやる気っスよ」

「上等じゃねぇか」

「リュウ、遠くに逃げなさい」

「パパは…?」

父は微笑した。

「リュウ、お前は生きろ。そして、強くなってくれ。それが俺とママの願いだ」

「やるなら早くやるぜ」

「未来の犠牲!」

「隊長、自爆技です!」

「チッ、ひとまず退散だ!」

「逃がすか!」

光が襲った。






リュウが戻ってきた時には、死骸しかなかった。

「パパ…」

リュウ、お前は生きろ。そして、強くなってくれ。それが俺とママの願いだ。

最後に、父はそう言った。他には何も言わなかった。

「パパ…僕、生きるよ。強くなるよ…」

リュウは、その晩ずっと泣いていた。

朝になってだった。

泣き止んだのは。

「見て…あそこに子供がいるわ!」

「い、生きてるの!?」

「リュウくんだ!向かいの家の子のリュウくんじゃないか!」

人が数人駆け寄る。

「リュウくん、解るかい?リュウくん?パパとママはどうしたんだ!?」

「二人とも死んじゃったんだ…」

母は不意に、父は犠牲に。リュウだけが生き残った。

「この子…これからどうするの?」

「まだ戦争も終わっていないし、一時的にでも保護してくれる人を探さないと…」

「師匠ならどうかしら…?」

そう言ったのは、まだ若いジンギだった。

だが、もうその顔をサラマンダーは覚えていない。再び出会ったタマとツルギの顔はサラマンダーには他人でしかなかった。

「し…しょう…?」

「彼ならきっと引き取ってくれるわ」

そう言われ、リュウは大人達と師匠と呼ばれる「人」のいる家に向かった。

「師匠、孤児が見つかりました」

「ドジョウじゃん」

「…………。」

すると、ドジョウがやって来た。

「おお、ジンギ。孤児と言うのはこの子かな?」

「はい」

「宜しくな、坊や」

「うん、えーと…」

「コーチと呼びなさい」

「うん。宜しく、コーチ」






戦争は終わった。

そして、更に五百年が経った。

「リュウ」

「何ですか、コーチ」

「お前、今何歳だ」

「八百二十です」

「そろそろ、この道場で修行をしないか」

「解りました」

そこでは、多種多様な子供達が取っ組み合いをしていた。

「これは…?」

「この道場では五百年前の極界戦争で必要となった実戦経験を積むのが目的だ。彼らは教えられた事以外の事も自分で作り出す」

「…!」

「無論、このやり方に合わない子も多い。そういう子は他の道場を当たっているが、お前はどうする?」

「僕は…」

リュウ、お前は生きろ。そして、強くなってくれ。それが俺とママの願いだ。

「…やります」

「解った。まず、一番弱い…と言っては申し訳ないが、あの子と戦ってこい」

「はい」

リュウは言われた子に話しかけた。

「あの…」

「なに?」

「僕はリュウ。君は?」

「ピリリだ」

「ピリリ…僕と勝負してくれないかい?」

「良いよ」

二人は睨み合った。

先に動いたのはリュウだった。

「フレア!」

「サンダー!」

力は同じと思われたが、サンダーが少し押されて、フレアがピリリに当たった。

「ぐっ…!」

リュウが笑う。

「フレア!」

また、同じポーズをピリリがとる。

(またサンダーか…)

リュウはそう思った。そして、勝てると。

だが、

「ライ!」

「…!」






「目が覚めたか」

「あ…はい…」

「最弱のピリリでもお前は負けた。どれだけ周りが強いか解るだろう」

「はい…」

「リュウ、沢山修行しろ。そうすればピリリを超えられる…いや、この道場で最も強くなれる。お前にはその資質がある。頑張れ、リュウ」

「はい!」

「良い返事だ。ピリリ!」

「何ですか、コーチ?」

「ピリリ、お前はこれから毎日リュウと組み合え。そうすればお互い強くなる。リュウに抜かれるか更に突き放すかはお前次第だぞ」

「はい。リュウ、宜しくなっ!」

「ああ!」






それから、二人は毎日戦い続けた。

最初の方はピリリの勝ち続きだったが、数十年ほど経つと勝負が混み始めた。

そして、百年経つとピリリはリュウに勝てなくなった。

「エレクトローダー!」

「ドラゴンフレア!」

「ぎゃっ!?」

「今日も僕が勝ったね、ピリリ!」

「うーん、リュウには勝てないなぁ…」

すると、年上の奴等が邪魔に入った。

「おい、ピリリ」

「…………。」

「遂にワースト一位のリュウにも負けたのかよ!?」

「…………。」

「また、最弱になったなぁ!」

すると、リュウが彼らの前に立った。

「何だよ、リュウ」

「ワースト一位かどうか、確かめてみろ!」

「やめとけ、リュウ!」

ピリリが忠告するが、リュウは止まらない。

「面白ぇ。やってやろうじゃん、リュウ」

道場で最も強いと言われている奴が一歩出た。

「望むところだ」






二人が道場の中心に立つ。

周りから道場の生徒全員が見ていた。

最弱が最強に戦いを挑んだのだ。

結果は見えているが、こういう事はやはり気になる。

「そっちから来いよ、最弱」

「自分から来れないのは度胸が無い証だ」

「なっ、テメエ…」

「お誘いを貰ったから遠慮なく行くよ。ドラゴンフレア!」

「ちっ、シールド!」

「チッ」

「どうだ、シールドは破壊出来ないだろう」

「それは、そっくりそのまま君の度胸が無い事を示している」

「はァ…?」

「そうだろう?守るという行為事態弱虫のやる事だし、ましてや絶対に破壊できない物でやるだなんて」

「…出りゃ良いんだろ、出りゃ…」

「ドラゴンフレア!」

「ぐあっ!」

「雷牙!」






「僕の勝ちだね」

「卑怯だぞ…口で解くなんて…」

「ここは実戦を重視した道場だ。実戦では敵はどんな卑怯な手でも使う…」

こういう時、決まってリュウは思い出すのだ。

自分のせいで皆の隠れるシェルターの場所がバレた事を。

「リュウの言う通りだ」

「コーチ…!」

「この勝負、リュウの勝ちのようだな」

どんぶりどじょうが言うと、どこからか拍手が沸いた。






リュウ、お前は生きろ。そして、強くなってくれ。それが俺とママの願いだ。

彼はその言葉を絶対に忘れない。

だからこそ、彼の成長は止まらないのだ。

「これからも強くなり続けるよ…父さん!」


サラマンダー&リュウ、終了。

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