裏喜利大会(四)
サラマンダーに敵を教えて貰ったフェニックスは、そいつら全員の顔を見た。
「あれ、アンタらも敵なの?」
フェニックスが幹部を見て言う。
「…………。」
全員目を背けた。
「見損ないましたよ…」
ジームが言う。
すると、天上界王が言った。
「地下界の奴等に裏切られたと解った今、お前達はどちらに付く?」
「我々は…」
全員が戸惑ったが、
「天上界王、あなたに忠誠を尽くします」
「それでこそ誇り高き天上界の戦士だ。罪は全てが終わってから償えば良い」
「ありがとうございます…。」
フェニックスは、一段落ついたのを見て言った。
「っしゃ、地下界のハエドも!形勢ぎゃ…!」
二界道から大量の地下界軍兵士が出てきていた。
「フン、何が形勢逆転だ。貴様らがつまらん事を話している間にこっちは戦闘準備が整ったわ」
地下界王が不気味に笑う。
「くっそ〜。また滅世禁炎之舞で…」
「待って、フェニックス君」
「何だよサラマンダー」
「これは長編。番外編はもう終わってる」
「ん、ああ、そうだけど?」
「一応僕らが主役なんだ。僕達に任せてくれないかな」
サラマンダーが真面目に言った。
「…そうだな。俺ァ既に脇役だし、あんまり手柄持ってくのもな。よしッ、一発どでかいのをぶちかましてこい!」
「え、一発だけ?」
「いや、二発でも良いけど」
「三発が良いな」
「じゃ、三発」
「やっぱり四発?」
「ん〜、四発…?」
「くぉら」
「へぶっ!」
「しゃぎっ!」
ペガサスが二人を蹴った。
「何すんだよ〜、ペガサス」
「ったく、やるなら早くやらせろ」
「はいはい」
フェニックスが後ろに下がる。
サラマンダー、クラーケン、ペガサス、サンガー、バジリスクの五人が最前線に並んだ。
「各々最強の技で攻めるぞ」
サンガーが言う。
敵が二界道から向かってきた。
「いくぞ!」
「大龍火炎!」
「アイスキャノン!」
「フォレスト!」
「雷太鼓!」
「岩石弓矢!」
もう、これを見た戦士は顔が真っ青になった。
龍の形をした炎が来たと思えば、
全てを凍らせる大砲の弾が飛んでくる。
かと言って前ばかり見ている訳にもいかず、
下からは波動の森、
上からは際限無き落雷。
締めには不定期な岩の矢が襲う。
地獄絵図である。
そして、逃げ惑う兵は地下界扉に辿り着いた。
「こ、ここまで来れば安心だ…」
そう言って中に入る兵士達。
だが、それさえも悲劇が襲った。
「総力奥義!」
『主は土の覇者』
「出でよ土蛇!」
岩で出来た蛇が二界道に潜り込む。
中から断末魔が聞こえたが、「ハードボイルドルーラーズ」にはお構い無しだ。
そして、出てきた土蛇は赤かった。
「な…地下界軍兵士をたったのこれだけの時間で…!」
「ひとまず引きましょう、地下界王!」
「そうだな、ツルギ…」
「逃がすかよ!ドラゴンフレア!」
とっさの事に、地下界王は対応できなかった。
火の龍が地下界王にぶつかり、燃え尽きる。
はずだった。
「あ…アンタは…!」
地下界王とサラマンダーの間に一人の男が立っていた。
「兄さん…!」
いたのは、どんぶりうなぎだった。
「マジかよ!?どんぶりうなぎ、テメエは俺が滅世禁炎之舞で跡形も無く…」
「言ったはずだ、俺は不死身だと」
「何だよそれ…」
「参りましょう、地下界王」
「うむ」
地下界王、サイゴ、ツルギ、どんぶりうなぎは消えた。
気付けば夜だった。
地下界にて。
「…何奴」
「地下界王でございます、我が君」
「入れ」
「我が君、敵は更に強くなっておりました。どうしましょうか」
「案ずることはない、地下界王。私の計画は万全だ。死を恐れる必要のない我々に勝てる者などいないのだ。今回の敵のように、『裏切り』さえなければ、な」
その男は、地下界王の額をつん、と指でつついた。
「我が君、地下界の全てはあなたに忠誠を誓います。この地下界王も」
「フハハ、天上界も、地下界王より上の人間がいるとは思っておるまい!」
「全てはあなたの仰せのままに」
上には、上がいる。