裏喜利大会(三)
油断していた読者の皆さん。
この話の題名を覚えていらっしゃるだろうか。
そう、「裏喜利大会」だ。
それなのに、裏切りがツルギだけのはずがない。
さぁ、話を続けようではないか。
「お前達…どうしてここに…?」
天上界王が幹部達を見る。
ジーム以外、全員がいた。
「天上界王、そのお命頂戴致します」
「させるかッ!」
覇者五人が天上界王の周りを囲む。
「おやおや。確かに、覇者が付くと我々だけでは太刀打ちできませんねぇ。我々『だけ』では、ね」
「なっ…!」
突如、周りに大量の兵士が現れた。
億単位だ。
「何だこれは…!」
天上界王が悪態をつく。
「皆、我々幹部の部下です。あなたの首を討ちに来たのですよ」
「…!」
だが、救世主は現れた。
「斬波!」
「轟斬!」
「満月斬り!」
三つのシルエットが兵士の間を縫う。
そして、その数を億と語った兵士達は半滅した。
しかも、襲撃はそれだけでは無かった。
さらに二人の剣が舞ったのだ(血もね)。
「しっかりしろや、バジリスク!」
「土方!」
「バジリスク君、わしがあげた日本刀が見えんが…」
「あ、家です家に飾ってます」
「なら構わない」
正答:あ、家です家のゴミ箱です
「来てくれたのだな、浪士組の五人!」
「フフ、危なかったね、天上界王さん」
「貴様ら…」
幹部が死体の山を見て憤る。
残る兵もすっかり怖じ気づいている。
だが、悲劇は起こった。
「フハハハハハハハハハハハハハ!」
地下界王が爆笑し出した。
「何笑ってんだアイツ…?」
「さぁ、打つ手が全部消えたから狂ったんじゃないの?」
「フハハ…。馬鹿め貴様ら!地面をしっかり見てみろ!」
「え?」
地面にぽっかりと穴が空いている。
「こ、これは…!」
天上界王の顔が青ざめた。
「この億の兵の役目は二界道を作ることよ!天上界王の首など我が部下で充分じゃ!
敵が勝手に殺してくれたわ!」
驚いた事に、この言葉に怒りを覚えたのは、天上界王の味方だけでは無かった。
「そ、それでは地下界王…!我々が兵を動かした理由は、天上界王の首を捕るためではなく…」
「無論、殺して二界道を作るためだ」
「そ、そんな…!」
「もう無駄だから、残りの兵も消しといてやる」
地下界王がそう言うと、兵が全員燃え尽きた。
違う話になるが、読者の皆さんは、地下界王は何の体系を使うと思っているだろうか。
火?水?草?雷?土?
それとも、マルチ?
答えは、どれも使わない。
以前、闇の魔術は地下界で形成されたと話したことがある。
そして、その最初の利用者が、地下界王なのだ。
だから、地下界王は闇の魔術しか使わない。
では、闇の魔術に、火を使うものはあっただろうか?
探してみてほしい(二百年大修行 フェニックス編【一】参照)。
それはただ一つ。
呪い火だ。
だが、呪い火は一度に一人しか攻撃出来ないし、殺人用ではない。
ところで、何故今このような話をしているかお解りだろうか。
まぁ、これから先に解るだろう。
「燃え尽きた…我々の兵が…」
幹部がぐったりしている。
他の人々も唖然としていた。
ツルギやサイゴも例外ではない。
増して、地下界王さえも何が起こったか解っていなかった。
水神、草神、雷神、土神も目の前の光景に何が起きたか解らず混乱している。
火神、彼だけが状況を理解したのだった。
「空を見ろ」
その火神がそう呟いた。
「え…?」
全員が上を向く。
すると、今までは混乱して気付かなかった事が解った。
「これは…!」
「空が赤いぞ…!」
「空だけじゃない…この世の全てが赤く染まっている…」
何が起きたかもうお解りだろう。
兵を燃やし尽くしたのは地下界王の技ではない。
五禁の一つである、
滅世禁炎之舞
だ。
そして、それを使ったのは真の英雄、
火鳥フェニックス。
上空にて。
「だからそれは封印しろと言ってるだろー!」
「うるさい、どんぶりどじょう!仲間が危なかったんだからよ!」
「てゆーかアレ、天上界軍の兵士達でしたよね…」
「…………。」
「フェニックス、テメエ仲間討ってんじゃねーか…?」
「そ、そそ、そんな事は無いだろう…」
すると、下の方から声が聞こえた。
「フェニックスー!フェニックスー!降りてこーい!」
「だってよ、降りようぜ、二人とも」
三人は地面に降りた。
「なんか大変な事になってたみたいだな、フェニックス」
「ああ、バジリスク。こっちもそうみたいだけど」
そう言うとフェニックスはツルギを睨み付けた。
「お前も色気使ってペガサスに近づいてたんだな!?」
タマは色気を使ってフェニックスに近付いていたのだろうか。
「私の場合は向こうから近付いてきたんですけどね」
「言い訳するな!」
「ホントなんですケド」
「黙れ!その語尾をカタカナにする当たりとか絶対色気使ってるだろ!」
物の判断基準がおかしい気がする。
「まぁまぁ、フェニックス君」
サラマンダーが肩をポンと叩いた。
「おう、サラマンダー。良い仕事してたみてぇじゃねぇか」
「直訳するとグッジョブだね」
「ん?群青?まあいい、敵が誰か教えてくれ」
「…はい?」
「敵が誰か教えてくれ」
「解らないの?」
「おう、解らん。見た感じこのイカツイ奴とか?」
「俺は浪士組副長の土方だッ!」
最強にして、最も馬鹿な英雄、現る。