空舞う炎(七)
「フェニックス!良く聞け!」
「い…言うな…」
どんぶりうなぎが起き上がって言う。
「ここは過去なんかじゃない!」
「え?」
「ここは、過去なんかじゃない。『今』だ。お前がスピーチした後の、『今』だ」
「で、でも、街も二百年前の…」
「全て兄さんが操っているんだ。
過去に戻ったと思ったのは兄さんが人と物を操ったから。時までが昔に戻った訳じゃない。お前の家族ももういない。
天上界に行けないのは、ラストオブヒーローズのせいじゃない。兄さんがお前をブロックしたからだ。だから、天上界にはお前はいない。いるのはお前の帰りを待つサラマンダー、クラーケン、ペガサス、サンガー、バジリスク、ツルギ、水神だけだ」
「ジームは?」
「彼は他の場所に作られたそっくりの部屋に移され、拘束されていた。既に解放している」
どんぶりどじょうがフェニックスの後ろを指す。
「ジーム!」
「フェニックス殿!」
「そして、兄さんを殺せば全てが元に戻る」
「無駄だ」
どんぶりどじょうに、どんぶりうなぎが反論した。
「兄さん、しらばっくれるな。兄さんがかけた魔法、兄さんを殺せば必ず元に戻る。」
「無駄だ」
「まさか、私達三人に勝てると思っているのか?」
「どんぶりうなぎ。俺は情に流されたりしねぇ。アンタを殺す」
フェニックスも、どんぶりうなぎを睨み付けた。
「無駄だ」
だが、どんぶりうなぎはそう言い続ける。
そして、
「無駄だ。この魔法をかけたのは俺ではない」
「は?何言ってんだお前」
どんぶりどじょうがそう言ったが、その強気な顔は青ざめていった。
「まさか…まさか!兄さん…まさか!」
「どうしたんだ、どんぶりどじょう!」
フェニックスが心配する。
「兄さんまさか…私のノウマインドの間違いだとは思うが、魔法をかけたのは…地下界王じゃ無いだろうな?」
「え゛」
情報を知るジームが硬直する。
良く知らないフェニックスは怒鳴った。
「ジーム、何なんだ!?地下界王とは!」
「天上界王と同じく、地下界の王です。どんぶりうなぎと呪い火で因縁を結ばれ、どんぶりうなぎが死んだ時に共に死んだはずなのですが…」
どんぶりうなぎがニヤリと笑う。
「そう、ジーム。俺と地下界王は因縁で結ばれた。だから、俺が生き返った際に共に生き返ったのだ」
すると、フェニックスがどんぶりうなぎに言った。
「なぁ、まずアンタは誰の手助けで蘇ったんだ?」
どんぶりうなぎがクククと笑う。
「ツルギだよ」
「は!?」
「タマがお前を裏切ったときに気づかなかったか?」
「何だそれ…」
「一度目はお前の親父…もう一人のどんぶりうなぎとタマでお前を攻撃した。だが、それは父親愛などという馬鹿なもので失敗した。第二の作戦が、俺とツルギだ」
「あの時親父は、アンタが死んだから俺を攻撃する、と言っていた」
「ああ、俺が死んだ後、確かに奴は貴様を殺そうとした。そこに、ジンギが来たのだ。カガミが死に、タマとツルギが俺と奴の間を取り持ち、作戦を練ったのだ」
「どうして…命をも分けてくれた俺に攻撃するんだよ」
どんな質問から始めても、結局はそこに辿り着く。
「気が変わったからさ」
「え…?」
「地下界の暮らしは良い。天上界などとは比べ物にならない。そして、地下界の長達に、俺は説得された」
お前が復活すれば地下界王も復活する、と。
「…………。」
「全ての謎は解けたか?そろそろバトルをしようじゃないか」
「最後に一つだけ」
「なんだ、フェニックス」
「今ツルギはどうしてる」
「残りの覇者達と戦っているはずだ」
「水神もいるぞ」
「だから、地下界王と復活したサイゴも向かった」
「…!」
「仲間の事は諦めろ。まぁ、すぐに自分も諦めることになるだろうがな」
「冥臨!」
「冥臨!」
「決死輪!」
フェニックス、どんぶりどじょう、ジームが技を出した。
どんぶりうなぎは守る暇もなかった。
確実に死んだ。
はずだった。
「な…何で生きている!」
「俺には地下界が付いている。幾ら殺しても無駄だ」
どんぶりうなぎが不敵の笑みを浮かべる。
本当の不死身が、現れた。
「だったら、植物人間にしてやる!どんぶりどじょう!ジーム!」
「おう!」「はい!」
フェニックスが結界を描く。
「神臨!」
「神臨!」
「呪い火!」
五体系全てを操る神が二人、当たった者が永遠の苦しみを味わう火が一つ現れた。
「命ず、あの男を殺さずに潰せ!」
「命ず、あの男を殺さずに潰せ!」
だが、二人の神は跡形も無く飛び散った。
呪い火が襲い掛かるが、どんぶりうなぎはシールドを使った。
「これが神臨?弱々しいな…。闇の魔術の方がよっぽど良いぜ」
「テラフレア!」
「マインドジャック!」
「フリーザー!」
マインドジャックは相手の思考を制御する技、フリーザーは相手を凍らせる技だ。
だが、二つとも避けられ、テラフレアは波動で消された。
「全く強くない」
「何も効かない…!」
絶体絶命だった。
それに、
「まぁ、若しお前らが俺を植物人間に出来ても、俺が死ななければ一連の魔法は解けないからな」
「あ…!」
万事休す。