空舞う炎(五)
まず、フェニックスは言われた事をを整理することから始めた。
「箇条書きだな」
こういう時に役立つのは箇条書きである。
・今は「初めてのお使い」の時
・皆いないけど、数時間で帰ってくる
・それまでに、嬲木雨曇と右大軍ロビン(in地上界)を殺す
・どんぶりうなぎは地上界にいる
・天上界に行けない
・クリアしないとヤバイ
・頭使わないと殺せない
「ざっとこんなもんか」
最後の一文はフェニックスにとって、裁判が始まる前に死刑宣告されたような感じだが、やるしかないのだ。
「早速探すか」
何をする気だろうか。
フェニックスファンの皆さん、彼のおバカで必死な行動をしかと見届けて欲しい。
ピーンポーン…。
「はーい」
フェニックスが行ったのはその頃友人だった人の家だ。
「よぉ」
「え…?猛ちゃん?たっ、猛ちゃんが何で生きてるの?え?え?いっ、生きてるの?」
「あ゛」
逃走。
翼を使って、自分の知らない街へ。
見知らぬ人へ声を掛ける。
「あの…」
「何だね、坊や」
「ぼ…!ゲホン、嬲木雨曇と右大軍ロビンがどこにいるか解りませんか?」
「き、君…。率直に聞くんだね…。」
直線を歩む少年。
「で、知ってますか?」
「いやぁ…。確かに有名だけど、そーゆー事は…。」
「すいません、どうもありがとうございます」
「役に立てなくてすまんな、坊や」
「…………。」
俺の方が百五十歳くらい年上なんだよ!
そう、心で呟くフェニックスであった。
「どーすりゃいーかなぁ…。」
一時間経過。数十人に聞き込んだが、収穫は0。
手も足も出ていない状況である。
読者の皆さんは、こういう時にどうすれば良いかお解りだろうか。
解っているなら、大声で叫んでフェニックスに教えてやって欲しい。
ほら、子供向けの映画や劇のように。
せーの、
「(読者の皆さんの叫び)」
「え、聞こえない…。」
聞こえていないッ!
もっと大きな声で、
せーの、
「(再びどうぞ)」
今度は届いたか?
「なるほど!出版社に行けば良いんだ!皆、ありがとう!」
皆さんが、出版社に行け、とフェニックスに言ったかどうかは別として、とにかくフェニックスは出版社に向かった。
大日本出版にて。
「どうも」
「どちら様でしょうか」
「少し聞きたい事が」
「はい?」
「嬲木雨曇と右大軍ロビンの居場所を教えて欲しいのです」
「ならば、担当の彼に…。」
この経緯を見て、
(自分も有名人の居場所を知りたいなら、担当に会いに行こう♪)
と思った諸君。
現実でこんなに上手くいくと思うな。
これはあくまでフィクションである。
「ども」
「こんにちは。嬲木雨曇と右大軍ロビンの居場所を知りたいんだって?」
「はい」
すると、担当は困った顔をした。
「実はね、担当の僕も知らないんだよ」
「え゛」
「実はね…。
彼らが書いた本は嬲木雨曇が『今宵十五夜也』だけ、右大軍ロビンが『ラストオブヒーローズ』だけなんだ。
しかも、両作とも原稿はファックスで送られてきた。
普通なら、本人と話し合って書き直す点を書き直さなきゃいけないんだけど、両作間違いは0。
そのまま出版したんだよ。
だから、僕は彼らの顔も居場所も知らないんだ」
ここで、読者の皆さんには疑問を幾つか持って欲しい。
「え、でも書いたのは一冊だけって…。無名の作者の作品を受け入れたんですか?」
「うーん、確かに、普通なら断る。でも、居場所を聞くってことは君も読んだことがあるのだろう?」
「はい」
因みに、今宵十五夜也は二十ページも読んでいない。
「だったら、二作がどれだけ凄いか解るだろう。無名の作者とは言え、あれほどの作品を捨てる訳にはいかなかった」
「…………。」
結局、手掛かりは掴めないのだろうか。
フェニックスが諦めかけたその時だった。
担当が話し出した。
「君は…今までの話を聞いて、何も思わないのかい?」
「え?」
担当が不審そうな顔をして言ったのだ。
「何も…思った事は無いのかい?」
「え…手掛かりは無いのかなぁ、と…」
「…………。」
担当が呆れた顔をする。
「普通ここまで来たら一つ思い付く事があるだろう…。…………。」
それを聞いたフェニックスは、愕然とした。
「それ…本当なんですか…?」
「いや、あくまで推測だからね」
「じゃあ…どうして、こんな事を?」
「解らない。でも、ほらこうすれば…」
「マジか…!」
指示語ばかりで申し訳ない。読者の皆さんから真実を隠すためだ。
とにかく、フェニックスは担当が紙に書いたものを見て、驚愕した。
そして、フェニックス自身もその紙に数文字付け加える。
「これが本当なら、俺が殺すべき人物は…!」
変に推理小説っぽくなったこと、ここに謝罪する。
だが、いつかきっとタイトルらしくなるだろう。