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五人の覇者  作者: コウモリ
番外編
101/147

空舞う炎(三)

「違うな」

「あ…。」

フェニックスの眼から涙がポロポロと落ちる。

その声の正体が解ったからだ。

「誰も来ていない。誰も何も食べていない。来たのは…」

その声はそう言う。

「やっと…会えた…。」

フェニックスがテーブルに突っ伏す。

「ずっと…会いたかった…。」

そこで泣いていたのは、勇猛果敢な英雄などではなく、一人の少年だった。

会うのを待ち続けた少年。

そして、会えたから泣いている。

「泣くな、フェニックス」

「止まんねぇよ…。会えたってだけで…それだけで涙が止まんねぇ…。」

「覇者よりも強くなった。そんな英雄がたかが再会で泣いてどうする」

フェニックスが泣き続ける。

「ふぅ…。」

フェニックスを見ている相手は溜め息をついた。

「とにかく、誰も来ない。誰も何も食べていない。ここに来たのは、どんぶりうなぎだけだ」






読者の皆さんは覚えているだろうか。

かつて、フェニックス、クラーケン、ペガサス、サンガー、バジリスクの五人を覇者にし、更に自分の命を捨てて五人を最強にした師匠。

どんぶりうなぎ(忘れたなら罰として、「プロローグ」から「地上との別れ」までを読みたまえ)。






「ふぅ、泣き止んだぜ、どんぶりうなぎ」

「ったく、たかが再会で泣きおって。しかも、どんぶりうなぎは立派な丼。それを茶碗などと…」

「悪い悪い、一見しただけだったから」

「もう一度言うぞ。誰も来ない。誰も何も食べていない。三回目だぞ」

「はいはい。じゃ、どんぶりうなぎはどうやって入ったんだ?てゆーか、『今』のどんぶりうなぎのくせに何で俺が覇者を越えたとか知ってんだよ」

今、フェニックスが言った「今」は、タイムスリップ後の、「今」である。

「お前達が覇者になった時、何で水神の森に集まったんだと思う?」

「水神の事も知ってんのか…。えーと、水神の力に引き寄せられたからじゃないの?」

「違う。どんぶりうなぎがそこに集めさせた」

「ふーん。それと何の関係が?」

「どんぶりうなぎと水神は知り合い」

「ふーん。それと何の関係が?」

「どんぶりうなぎは水神と同じ、予知能力を持っている。それで知った」

「え゛」

「だから、お前がどのような経緯でここに来たかを知っている」

「でも、どんぶりうなぎ、アンタ想定外という言葉を使ったことあるよね?(初めてのお使い 序参照)予知能力があるのに…」

「全てが予知できるはずがない。お前がここに来るまでの粗筋を知っているのだ」

「あらそう」

フェニックスが少しがっかりしたような顔をする。

「で、『今』は何年何月何日何時何分何秒何々なの?」

「そこまで詳しく聞くか。…………。」

「マジで!?それって俺が天上界にお使いに行った時じゃん!そして、アイツらはホワイトハウスと国連総本部に…」

「そう。そして、お前の父は拘留所、母と姉は親戚の家にいる」

「だから誰も来なかったのか…。ん、待てよ?」

フェニックスが何かを思い付いたらしい。どうせロクでもない事だろうが、作者として書かなければならない。

「初めてのお使いの時の俺達って…」


クラーケン、ペガサス、サンガー、バジリスクが出動


フェニックスがキング・ジャイアントの家を探す


四人が帰ってくる


フェニックスがキング・ジャイアントの家に向かう


フェニックスが帰ってくる


「誰もどんぶりうなぎの所にいない、っていう時は無いね」

「そう」

刑事ドラマではアリバイがある奴は絶対に犯人ではない、と考えているあなた方ならもうお解りだろう。

そう、

「何でここにいるんだよ」

「え?」

「天上界を離れるなら絶対俺達の中の誰かに見つかってるだろ」

だが、刑事ドラマではアリバイの有る奴こそ怪しい、と考えているあなた方ならもうお解りだろう。

そう、

「フェニックスの家に行くからフェニックスには黙っていろって言ったら快く黙ってくれるみたいだよ。どんぶりうなぎの予知能力が言うには。多分、イタズラするとでも思われてるんだろーね」

「あいつら…そーゆー約束は守るんだよな…。」

フェニックスの顔がピクピクとしている。

その顔を見てどんぶりうなぎが言った。

「その額の傷(過去の回想 二界道編〔四〕参照)、残しておるのだな」

「ん?ああ…」

その傷は、地下界精鋭部隊サイゴにつけられたものだ。

「『戒訓』だよ」

「『訓戒』だね、フェニックス」

「ああ、そうなのか?」

バカ王子は健在である。

どこの業界用語だろうか。

「まぁ、良い心構えだ」

「それで、俺に話す事は以上か?」

「いや、まだある。不安だから聞くが…一応ここまでは理解したな?」

バカ王子にどんぶりうなぎが聞く。

バカ王子はこう答える。

「アイ ドント ウォントゥー アンダースタンド。どうだ、少しは英語が上手くなっただろ?」

「フェニックス…それでは『私は理解したくありません』だぞ…。しかも、完璧にカタカナ発音だし…。」

因みに、英語の発音で言うと、

I don't want to understand.

である。

また、「私は理解していません」と言う場合は、

I don't understand.

若しくは、「私は理解できません」で、

I can't understand.

だ。

「とにかく、理解できていないんだな。もう一度言うぞ。…………。解ったか?」

「アイ スタンド アンダー」

「それでは、『私は下に立つ』だぞ…。」

「あーもう、この話題は終わりだ。ダラダラとやり過ぎた」

ダラダラとやったのはコイツである。

「で、どんぶりうなぎ。俺に続きを話してくれ」


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