双刃の二重奏
レオは【スレイ・レッディオ】を構えると右足を一歩引いた。
ルキトも駆け出すと、レオとの距離を一気に縮めてきた。
レオから1メートル程離れた所でジャンプすると空中で回転、その遠心力を加速力に上乗せし、レオに叩きつけた。
レオも右回転から来るルキトの右の剣を、自身の右手にあるスレイで弾いた。
更に迫る左の剣をも左手のレッディオで弾き返した。
「くっ…!」
先制攻撃に失敗したルキトはレオへ激突する形となった。
あわよくばこのまま体当たりで先制攻撃成功なるかと思いきや、レオはそんなに甘くはなかった。
「よっと」
眼前のルキトを最小限の動きで避ける。
ぶち当たる目標をも失ったルキトはなす術もなく芝生の地面へと突っ込んだ。
しかし、ルキトもただ芝生に突っ込んで行ったわけではなかった。
空中で弾かれた双剣を何とか前へと持ち直すと、激突寸前で芝生へと突き立てた。
それにより多少は力が減少され、頭から芝生に激突することはなかった。
ただし、それでも加速力全てを相殺できたわけでないので、3メートルほどゴロゴロと転がった。
「おいおい、素晴らしい転がりっぷりだなぁ」
レオがここぞとばかりにからかってくる。
だが、ルキトはほとんど気にもしなかった。
「ほっといてください」
とだけ呟くと、素早く立ち上がりレオに迫った。
左の剣を振りかぶって真上からレオの脳天目掛けて振り下ろす。
それと同時に右手の剣も下から這うように心臓へと走らせる。
「へぇ…」
しかし、レオの表情に焦りの色は微塵もない。
スレイで頭上から迫る剣を受けると、レッディオで心臓に来る剣を叩き落とした。
しかし、ルキトの攻撃はそれでは終わらない。
スレイの刀身上を滑らせ、左の剣がスレイの盾から抜けると一気にレオの右目を狙い突きを放った。
さらに右の剣を、叩き落とされた時の勢いを利用し、腕を一回転させて真上からレオの左肩を襲う。
ここまでの流れで、ルキトの動きに乱れはない。
普通双剣を使う時は両方の手で攻撃を行わなければならないため、視線が泳ぎがちになる。
その隙を突かれて、倒されることも多い。
これは双剣が上位武器と言われる由縁の一つである。
しかし、ルキトにそんな隙が一切見られないので、これにはレオも驚かされた。
(へぇ。ここまで双剣をものにしてるとはな。まさか俺以外にもこんなに双剣を使いこなす奴がいたのか。にしても…)
そう、レオには何かが引っかかっていた。
この的確に急所を狙って来る太刀筋。
(誰かに似ているような…)
そんなことを考えつつも、しっかりとルキトの攻撃からは逃れていた。
瞬時にレッディオでルキトの右手の剣を弾くと、バックステップで距離を取り、突きを避けた。
それでもルキトはそこからさらに駆け出し追い打ちをかけた。
「【二刺突】」
腰を落とし、両の剣を同時に突き出す。
ルキトの狙いは十二指腸と胃の下部だ。
「へぇ…」
レオはその顔に一瞬関心の色を浮かべると、【スレイ・レッディオ】を逆手に持ち替え二つの突きの軌道上に振り下ろした。
スレイとレッディオによって進路を阻まれた二本の突きは外側へ抜けて行き、レオの脇腹を掠めて行っただけだった。
「まだまだぁ!」
ルキトはそこからさらに足の加速力にブーストをかけ、レオの身体の正面へ肩から体当たりをかました。
「ぐっ……!」
真正面からまともに鳩尾へ体当たりをくらったレオは後方へと吹っ飛んだ。
しかし、空中でなんとか体制を持ち直し、バランスを崩しつつも着地する。
だが、そこにはルキトの高速連続攻撃が待っていた。
着地も同時に眼前まで来たレオは目にも留まらぬ速さで連続攻撃を放つ。
レオも必死に捌いて行くが、やはりあの高速化の技が発動していない今は、防ぐのにかなり苦労していた。
「くそッ、やるじゃねえか…」
「まだまだ!ですよ!」
さらに追い打ちをかけるルキトだったが、
「いや、終わりだ」
連続攻撃の合間を縫って、レオのスレイがルキトの頬を掠める。
ルキトが頬の痛みに顔を顰めたその隙を突き、レオは大きく出た。
「おらよっとぉ!」
レオはスレイとレッディオを重ねると、左の剣を真上へと弾き飛ばした。
「しまっ…!」
ルキトが今更ながらに後悔するがもう遅い。
左の剣は上空をクルクルと舞っている。
落ちてくるまでにまだ少しかかるだろう。
ちなみに、ルキトは武器を飛ばされたが双剣は二本揃って一つの武器なので、一本飛ばしただけでは戦闘続行不可能状態にはならない。
まだもう一本の剣が残っているからだ。
ここが双剣使いを相手にする時の厄介なところでもある。
「さぁどうする?残り一本だ」
「これくらいでは僕は諦めませんよ」
黒髪の少年は決意の色を瞳に宿し、双剣使い相手に自身も双剣使いでありながら、残る一本の剣で立ち向かった。
「いいぜ。来いよ!」
ルキトは右手の剣を両手で持ち、上段から振りかぶり、レオへと思いっきり振り下ろした。
レオは【スレイ・レッディオ】を交差させそれを受け止めた。
剣が一本しかない分、込められる力は何時もの2倍だ。
ルキトは叩きつけられた自身の剣へとありったけの力を乗せた。
徐々にレオの剣は押されて行くがやはり決定打に欠ける。
(やっぱり無理があったか…?)
ルキトがそう思い始めていた時、風切り音がルキトの鼓膜を揺るがせた。
(この音は‼︎)
咄嗟に右手を上に突き出す。
そこへ、舞い上がっていたもう一本の剣がパシッとルキトの手の中へと収まった。
「なんだ、もう戻って来たか」
「ここからですよ」
レオが苦笑いすると、ルキトもニヤリと笑みを返した。
鍔迫り合いになっていた剣を引き、構え直した。
右手の剣を横薙ぎに振るい、さらに左手の剣をも重ね合わせる。
そこで、剣速が一瞬だけレオに優った。
二重の刃がレオの首を狙う。
バックステップでは間に合わない。
レオは瞬間的にそれを確信すると、なんとか【スレイ・レッディオ】を首へと滑り込ませギリギリで防いだ。
しかし、力が強過ぎてパリィすることは出来ず、正面から受けるしかなかった。
下半身に力を込めて踏ん張るが、ズルズルと後方へ押される。
(何だこの力…!これじゃまるで…)
その時、ふと顔を上げるとレオの顔に焦りと驚愕の混じった色が滲んだ。
ルキトの背後に黒い影が揺らめいていたのである。
まるで人の形を纏っているような、そんな影の頭と思える辺りに、血にドップリと漬けたような紅い赫い眼光が光っていた。
しかし、周りの野次馬にはそれが見えていないようで、寧ろ違うことに驚いていた。
通常時のレオが押され気味。
これだけで、皆信じられないとでも言いたげな表情を浮かべていた。
今まで通常時のレオに焦りの色を浮かび上がらせた者はメセトライト帝国国主達以外はいない。
その常識が今破られたのである。
驚いて当然だろう。
ルキトが渾身の力を込めて来る中、レオは呻いた。
「お前、どこでそんな力を…」
「力…?今までいろんな事をやってきましたから、その賜物じゃないですか?」
どうやらルキトは自身の黒い影には気づいてないらしい。
(こりゃ俺も本気出さねーとやられるかもな…)
そんなことをふと思った時、頭にあの少女の声が聞こえて来た。
『あのババァの匂いがする…。レオ、誰と闘ってるの?』
いつになく声に真剣味が篭っている。さっきの眠そうな声とは大違いだった。
(なんだ起きたのか?まぁ、そろそろ起こそうとは思ってたからちょうど良かったがな。今は俺の訓練相手を受けてくれてる少年と闘ってんだよ)
『ふぅん。何かヤバそうね。私の力いるんじゃない?出た方がいい?』
(あぁ、頼むぜフレイ!)
その時、レオの身体から優しい炎が発生し、レオをどんどん包んでいった。
「これは!まさかフレイ様が出て来るの⁉︎」
「そんな!レオ様が通常時でそこまで追い込まれているなんて信じられないです!」
ルミナとサラがそれぞれに悲鳴を上げていた。
周りの野次馬達もかなり動揺していた。
「フレイ様…?ってまさか!」
ルキトも始めは疑問顏だったが、その名前を思い出した途端、やってしまったとでも言うような声を出した。
そこで、レオが包まれていた炎が一気に吹き飛んだ。
そこにいたのは、
「悪りぃな。ちょいとばかし本気を出させてもらうぜ。行くぞフレイ!」
「レオー!神様呼び捨てってそれどうなの〜⁉︎」
未だルキトの双剣を防ぎ続けているレオと、その背後に少し憤慨している可憐な美少女がふわふわと浮かんでいた。
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フレイ・イングナ。
彼女はメセトライト帝国の国主の元に舞い降りる女神の内の1人。
炎の国の女神のことだ。
僕はそれを忘れていた。
それにしても…
自分でも知らないうちにレオさんをそこまで追い詰めていたなんて。
さっきレオさんも言っていたけど、僕にそんな力あったかな…?
僕が思考を巡らせていると、フレイを呼び出したことで身体能力を格段に上げたのか、レオさんが僕の攻撃を押し返し、バックステップで距離を取った。
「うお〜〜〜!!女神様だ!」
「俺初めて見たぞ!」
「俺もだよ!」
「美しい…」
「神様なんて反則的だわ!なんてお綺麗なの!私のような人間の美しさなどゴミじゃない!」
「レオ様がフレイ様を呼ぶなんてよっぽどの事だぞ!それだけあの餓鬼が強いと見切ったのか…」
「フレイ様ーーー!愛してますぅぅぅぅ!!結婚してくださぁーーーい!!」
周りの野次馬も三者三様の反応だ。
最後のやつに至っては求婚してるけど、それって神様の立場的にいいの?どうなの?
それでもフレイはごく自然に挨拶を返していた。
「皆おはよ〜!ありがとね〜!
で、君がレオの相手かぁ…」
フレイは僕に向き直ると、まるで鑑定でもしているかのように僕を見つめてきた。
だったら僕も見つめ返してやる。
薄桃色の髪は腰下まで伸び、頭には煌びやかな装飾が施された髪飾りをしている。
長めの睫毛に、琥珀色の瞳。
柔らかそうな桜色の唇。
白を基調とし緋色を所々に走らせ、フリフリのレースがふんだんにあしらわれたドレス。
その身に纏うオーラには確かに神秘的なものが見て取れた。
そんな女神が急に顔をしかめた。
「やっぱり、あのババァの匂いがプンプンする」
は…?
ババァ?
僕は今まで自分のお婆ちゃんに会ったことはないハズなんだけど…
「そのババァってのは一体誰なんだ?」
「ごめんね。レオにも今は言えない…」
レオさんが訝しそうに聞いたけど、フレイは教えてくれなかった。
「まぁいい。さぁ、第2ステージだぜ!ルキトぉ!!」
どんだけ本気の勝負に飢えてたんだこの人…
目が血走ってますよ〜!
あれは絶対瞳の色のせいじゃない。
絶対違う!
たぶん……
そんな僕の戸惑いを気づいてか気づかずなのか、レオさんが双剣を交差させた。
「【炎舞剣技 参の章 火花 拡散】」
レオさんの双剣から無数の火の玉が出現し次々に空中へと浮遊してゆく。レオさんの姿が見えなくなるほどの火の玉がゆらゆらと漂っている。そんな時、レオさんが火の玉を双剣で打ち始めた。
僕に向けて。
「うわっ⁉︎」
僕は咄嗟に双剣を交差させ受けようとしたけど、それは無意味だと痛感することになってしまった。
目の前には無数の火の玉で構成された弾幕が広がっている。
それもただ広がっているだけではない。
一斉に僕に向かって飛んで来る。
避けるにしてもこの量の火の玉に追随効果があった場合、避けるという選択肢は全くの無駄だ。
となると防御方法はただ一つ。
「だったら全部、弾き返す!!」
気合を入れたその時、火の玉が眼前まで迫って来ていた。
「うおぉぉおおおおおおおおおお!!!!」
次から次へと飛んで来る火の玉を双剣で片っ端から弾き、去なし、叩き落す。
「お前がそれ全部防ぎ終わるのを、俺が指を咥えて待ってるとでも思ったか?」
「レオも意地悪ね〜」
背後からそんな声が聞こえた。
「なっ…⁉︎」
確かにその通りではあった。
レオさんが大人しく待っていてくれるはずがなかった。
だけど、今の僕は前の火の玉の群れで手一杯で、背後のレオさんの相手をすることが出来ない。
まさに絶体絶命ってやつだ。
そんなのはお構いなしとでも言うかのように、背後でレオさんの気配が動いた。
どうやら横薙ぎに双剣を振り放ったらしい。
と同時にレオさんのポツリとした呟きが、僕を完全に本気にさせた。
「はぁ…。結局こんなもんか」
何て言った?
こんなもん?
ふざけんなよ!
ここまで絶体絶命な状況を作っておいて、それを僕が乗り越える事を諦めてる。
僕だって死にたくはないし、この状況を打破する策が無いわけじゃない。
でもこの作戦をすると、レオさんがどうなるか分からないし、下手すれば僕は炎の国から第一級犯罪者として一生追われるだろう。
もしかしたら、このメセトライト帝国にすらいられなくなるかもしれない。
そんなことは絶対にごめんだったから、この方法を取るのは出来れば避けたかった。
でもここまでしておいて、そんな風に言うならもう迷わない。
どうなっても僕は知らないからな!
僕は眼前の火の玉達を防ぎながら、背後から迫る双剣をギリギリまで引きつけた。
背後の双剣が僕の左脇腹を斬り裂くその刹那。
「【爆脚】」
一瞬で地面を数十回蹴りつけることで爆発的な脚力を生み出し、右後方へ跳んで逃げた。
今の所、僕の唯一の緊急回避技だ。
僕という盾を失った火の玉達が背後から攻撃して来ていたレオさんに目掛けて飛ぶ。
「ほぉ」
「へぇ、やるじゃない」
背後からの攻撃者達は、眼前に自分が放った火の玉の軍勢が迫ってきているというのに、随分と落ち着いている。
その時、僕は信じられないものを見た。
「防いでた火花 拡散をよけることで俺にぶつけるっつー作戦は悪かぁねぇと思うぜ。だが、甘い」
レオさんは振りきっていたハズの双剣の勢いを強引に落とすと、迫る火の玉へと狙いを変えた。
そして、火の玉がレオさんの双剣に触れた瞬間。
火の玉が双剣に吸収された。
えっ……?
「自分が放った技なんだから、自分で制御出来て当たり前だろ?」
そう言いながら、僕に呆れ顔を向けつつ目の前の火の玉に楽々と触れ吸収していく。
そんなのアリかよぉおおおお!!
僕の心配と時間を返せぇぇえええ!!
僕が胸中で絶叫してる間に、レオさんが全ての火の玉を吸収し終えた。
「ん?こんだけか?こんなもんならお前も簡単に防げるようになれよ」
笑ってますけど、あんたが吸収する以前に僕が八割は防いでましたからね?
そこんとこ勘違いしないでよ?
僕が着地すると、レオさんが双剣を構え直した。
「もう一つ面白いもん見せてやるよ」
「面白いもの?」
「あぁ、【炎舞剣技 伍の章 火炎 憑下】」
レオの双剣に炎が宿り始め、それはやがて凄まじい炎の奔流と化す。
「そんなのアリですか…」
みるみるうちに双剣を呑み込む炎を前に、僕はただ呆然とするだけだった。
双剣を完全に覆い尽くした炎はさらに勢いを増し、剣先の先へもまとわりついて行く。
双剣は先程よりも長く、刀身は赫く染まっている。
「ほら、これで二炎剣の出来上がりだ」
いや、ほら、じゃないっすよ。
何?その見るからに熱そうな刀身。
当たり前か。
炎がまとわりついているんだから…
これはやり辛いぞ…
そうこうしているうちに、レオさんが真正面から斬りつけて来た。
僕も急いでそれを受ける。
あっつ!!
案の定超熱い!
剣で受けているだけなのに、ものすごい熱が伝わってくる!
凄まじい熱風が僕の首筋を撫でつける。
そんな熱波を正面から浴びながら、僕は必死にレオさんとの鍔迫り合いに挑む。
でもこのままじゃいつか返されてしまう。
それにいつまでもあんな熱気を受け続けていたら、腕や顔が火傷してしまう!
くそッ!どうすれば……
『ルキトお兄ちゃん。あたしの力、解放したら…?』
誰だ?
今、頭の中で誰かの声がしたような……
『ルキトお兄ちゃん。あたしはずっと待ってるよ……』
またか…!
誰なんだ一体。
あたしの力を解放…?
誰だよ全く。
この忙しい時に。
だいたい解放ってどうやるんだよ⁉︎
力込めりゃいいのか?
じゃ、そうしてやるよ!
「うおぉぉおおおおおおお!!!」
僕は熱いのを我慢して、必死に押し返した。
その時、急に体が身軽になった。
と思ったら黒い影のようなものが、僕の腕を蠢いていた。
「う、うわあぁぁあああああああ!!!」
なんじゃこりゃあぁぁあああ!!
僕は驚きながらも力を込め続けるしかなかった。
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「なんだ…?」
ルキトの背後に漂っていた黒い影が元々放っていた赫い眼光を、さらに一際強く光らせたかと思うと、かなりの速度でルキトの肩を侵食して行った。
その影はすぐに腕まで進み、今更現状を理解したらしいルキトの悲鳴が木霊する。
今もずっと双剣同士を打ち続け合っているレオも、流石にこの現象を見てしまうと、一旦退きたくなる。
ここで今退くとルキトは追随して来るかもしれない。
しかし、一旦戦略を立て直すためにも、ここは退くべきだと判断したレオは、鍔迫り合いを弾き返すと、バックジャンプでひとまず距離を取った。
ルキトは両腕をダランと垂れ下げて、顔を俯けている。
そんなルキトを見ながらも、レオはこの戦いを楽しんでいた。
ただの訓練だったはずのこの戦いを。
「次から次へと、つくづく俺を楽しませてくれるやつだな…」
「レオ、嬉しそうね」
「当たり前だろ。ここまで俺の本気を出すことを許してくれたやつはルキトだけだぜ」
「ま、頑張りなさいよ。それよりもあの子の影、あれは…」
「そう、それなんだよ!ありゃあ一体なんなんだ⁉︎」
レオがフレイを問い詰めるが、やはり今は教えることが出来ぬようで、「今は言えない」の一点張りだった。
仕方なく、自分でなんとかしようとふと前に視線を送ると、今の今までそこにいたルキトが突然消失した。
「何⁉︎」
瞬間、背後から気配を感じたレオが肩越しに振り返ると、そこにルキトはいた。
(一瞬で背後に⁉︎どうやって…)
わけが分からなかったが、何とかルキトの攻撃を防ぐと、双剣を押し返しながらバックステップで距離をとった。
(動きが全く見えなかった。これはアレを使わざるを得ないか…)
レオは双剣の柄頭をそれぞれこめかみにあてがうと、声高らかに叫んだ。
「【炎舞剣技 壱の章 火花 加速】」
左右の剣に宿る炎がレオの頭へと溶け込むように流れて行く。
「この技は脳内にある己の身体の限界のタガを炎で焼き切り外す。そうすることで、本来人間には出すことは出来ない限界を超えたスピードや…」
刹那、レオが消えた。否、ルキトには消えたように見えた。
「人間には到底あり得ない身体能力の強化が出来るってわけだ」
「⁉︎」
今の一瞬でルキトの背後に回ったレオは、【スレイ・レッディオ】を叩きつける。
ギリギリでルキトの防御も間に合ったが、踏ん張れず思いっきり吹っ飛ばれてしまう。
30メートルほどぶっ飛び、城の壁にぶつかり若干めり込んだルキトは大きく喀血する。
ルキトの背後に漂っていた黒い影も今や消え入りそうになってしまっている。
そんなルキトに一瞬で迫ると、突きつけるようにレオは言った。
「さぁ、第3ステージだぜ。ルキト」
圧倒的なまでの身体能力上昇と、目にも留まらぬ速さを見せつけたレオが、この時ルキトには炎を纏う鬼神のように見えた。
更新遅くなってしまってごめんなさい。