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双剣の剣士兄弟(ブレイドブラザーズ)  作者: zaq
闇の力暴走編
7/14

紅き双剣

「ねぇ、本当にやるの?やめときなって!」


「心配しなくても大丈夫だよ」


さっきからずっとこれだ。

全く、ルミナも心配症だな。


僕はあの後食堂を出て、レオさんの待つ城の中庭へと向かっていた。

後ろからぴょこぴょこと、僕を説得しようとしながらルミナもついてくる。


だけど僕の返事は大丈夫の一点張り。


いい加減諦めてくれないかなぁ。


「もう!どうなっても知らないよ⁉︎」


お、諦めてくれそうな感じ。


「ハイハイ、ご心配どーも」


「バカにして〜!そんなんじゃレオ様にすぐ負けちゃうよ!だからやっぱりやめときなって!」


前言撤回。

そんなことはなかった。


そんなやりとりを繰り返していると、中庭に着いてしまった。


あれ?

あんなところに人集りが…


「あ、あの中にレオ様はいるよ!ほら早く!」


「お、おい!」


ルミナに引っ張られて近付くと、確かに人々の真ん中にレオさんがいた。


「お、来たか」


レオさんが僕に声をかけると、皆一斉にこっちを向いた。

え、何…?


「ほう!この小僧がレオ様の相手か」


「頑張れよ坊主!せいぜい死なんようにな!」


「お前なんかにレオ様の訓練相手など百年早いわ!」


「やめとけやめとけ!」


「見た目は確かにちょっと可愛いかも知れないけど、レオ様に勝てるとは思えないわね」


皆僕を見て次々に感想を述べたり、激励をしたり、ヤジを飛ばしたりして来る。

てか、半分以上僕を非難してないか?


どうやら僕はこの野次馬達の中ではただの調子に乗った恥晒しの餓鬼ってことらしい。


流石に酷いな。

ある意味事実ではあるかもしれないから、否定はしないけどさ。


それよりも人多いな。

50人くらいいるみたいだ。

訓練相手を受けるって言ったのはついさっきなのに、もう色んな所に情報が回ったらしい。

そーいえばレオさんが食堂から出て行ってからすぐ何人かが飛び出して行ってたなぁ。


「こいつらの言うことはまぁ気にするな。俺はお前の勇気に尊敬するぞ」


嫌味のない笑いを僕に向けながら、レオさんがこっちに来た。


それに合わせて野次馬も僕らを囲むように移動する。


「別に勇気とかじゃないですよ。ただ、僕でよければと思ったので」


「そうか。ではそろそろ始めると…」


「レオ様ーーーーーーー!!」


その時、可愛らしい声がレオさんの台詞を遮った。

誰だろ?


「はっ!この声は!!」


今まで黙っていたルミナが急に反応した。


すると、人混みをかき分けて1人のメイドがこっちにやって来た。


あ、可愛いの声だけじゃなかった。


「なんだサラか。遅かったじゃないか。

というか邪魔するなよ。これからこいつと朝の訓練をするっていうのに」


「いうのに…じゃありません!聞いたところによれば、相手は貴方よりも年下のこの城の兵士でもない少年だというではありませんか!

万が一大怪我でもさせたらどうするんですか!」


「いや、だってこいつが僕でよければって言うからさ」


「それでもです……!」


会話の途中でサラという名前のメイドさんは僕を見ると、声を落として話しかけてきた。


「あなたがお相手のルキトさんね。悪いことは言わないわ。やめておきなさい」


「いや、大丈夫ですよ。僕が自ら志願したことですから。危険は覚悟の内ですよ」


「そーだそーだ!ルキトは自分で決めてここに来てるの!だから乳牛はしゃしゃり出てこないで!」


僕が柔らかく返すと、ルミナが何故か擁護してきた。

コラ、お前はそっち側の人間だろ?

さっきまで僕を止めようとしてたルミナはどこ行った。


「なっ⁉︎あなたは二等兵士組のルミナ!っというか誰が乳牛ですか!

ペッタンコは黙っていて下さい!」


「〜〜ッ⁉︎誰がペッタンコだって⁉︎

バカみたいにでっかいおっぱい持ってるからって勝った気にならないでよね!」


「あら?ペッタンコよりはマシだと思いますよ⁉︎ペ・ッ・タ・ン・コよりは!」


「ペッタンコを強調するなぁ〜!!」


なんか喧嘩始めたんだけど。


内容が内容だからレオさんも苦笑いしてるし…


「悪いな。こうなっちまうとなかなか止まらないんだ、こいつら」


「いつもこんな風に喧嘩してるんですか?」


「会うたびに…」


「……なんと言いますか、ご愁傷様です…」


「全くだ」


2人で呆れながら喧嘩模様を見ていると、いつの間にか我を忘れて取っ組み合いにまで発展していた。


野次馬達も止めようとはせず、いつもの光景とでも言わんばかりの暖かい眼差しを送っている。


「こーんなでっかいおっぱい家事の時邪魔になるでしょうに!ざまあないね!」


「あなたみたいにつるぺたな絶壁よりは幾分マシですよ!

だからいつも言ってあげてるじゃないですか。あなたには一生を添い遂げる殿方は見つからないって!

そんな胸をしてる限りはね!」


「んなっ⁉︎デカけりゃいいってもんじゃないよ!

サラは貧乳は希少価値だ!って言葉知らないんでしょ!貧乳好きだっているんだよ!」


「それはごく一部の男性のみでしょう⁉︎

ほとんどの男性は大きいほうがいいのですよ。巨乳最高!!」


「あ〜も〜!!」


「ハイ、そこまで」


と、そこにレオさんが割り込んだ。


「俺は巨乳も貧乳もどっちもいいとは思うけどな。それよりも大事なのは中身だろ?」


うわー、一番ありがちな台詞で収めたー。

これあとあと大丈夫なの?

1ヶ月後くらいにレオさん血祭りに上げられたりしないよね?


「むー…レオ様がそう言うなら…」


「レオ様がそう仰るのであれば仕方ないですね…」


あれ、意外と二人ともあっさり引いちゃった。


それにしても確かにサラのアレ、でかいな…

メロンくらいあるんじゃないのかな?

でもルミナ、小さくても凹凸あるだけマシじゃないか?

僕は昔、凹凸が一切無い成人の女性を見たことがあるんだけど。


「よし!じゃあこれから始めたいんだが、ルールはともかく、審判をどうすっかなぁー」


「それなら私めにお任せを」


すると人混みを分けながらこちらに歩み寄ってくる男性がいた。


かなりの高身長で肉付きもすごい。

威圧感たっぷりのその人は、まさに歴戦の兵士って感じだ。


「部隊長!」


ルミナが驚いたように叫んだ。

この人が部隊長なんだ。


「ボルドか。じゃあ頼むぜ」


「では不躾ながら、この不肖ボルドめが審判を務めさせてもらいます。ルールはいつものでよろしいですね?」


「おー」


いつものってなんだよ?

説明を要求する!


「ではルキト。これからルールの説明をする。よく聞いてくれ」


せっかちでごめんなさい。

普通するよね、説明。


「まず、勝負は時間無制限の一本勝負。どちらかが戦闘不能、又は武器破損もしくは戦闘続行不可能に陥った時、勝負ありとする」


「戦闘不能と武器破損は分かりましたが、戦闘続行不可能とは具体的にどういった状態のことですか?」


そこすごく気になるんだよ。


「基本的には自分が武器を取り落とす、もしくは相手によって手放された場合のことだ。

そうなると、必然的に戦闘は続けられないだろう?なんせ戦闘を行うための武器が手元に無いのだから」


「なるほど。了解しました」


「さーて、そんじゃ始めるか」


「よろしくお願いします」


僕はレオさんに向き直ると、改めて挨拶をした。


「それでは、始め!」


ボルド部隊長の低い重みのある声が裏庭に響き渡った。





▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼





レオの武器である双剣は12年前、その当時炎の国で最高の鍛治士であったオルスという老人の最高傑作であった。



レオが彼の仕事場へ顔を出すと、オルスは刀を打っていた。


「オルスおじいちゃん!こんにちは!」


レオが元気よく挨拶すると、オルスは手を止めてふと顔を上げるとにこやかな笑顔でレオを迎えた。


「これはこれはレオ様。よくぞ我が仕事場まで来られましたな。少々お待ちを……

さぁどうぞ。これに座りなされ」


そう言ってオルスはどこからか少し小さめの石と大きめの石を持ってきた。


「ありがとう!」


レオも笑顔でお礼を言うと、その石にピョンと座った。


そして、オルスももう一つの石に腰を下ろした。


「して、今日はワシのような老いぼれめに一体どのようなご用件ですかな?」


「あのねあのね!お父様から聞いたんだけど、オルスおじいちゃんはメセトライト帝国一番の鍛冶屋さんなんでしょ⁉︎」


瞳をキラキラさせて問うレオに、オルス老人は穏やかに謙遜した。


「いえいえ、メセトライト帝国一というのはいささか言い過ぎではございませんかな?

ワシとしてはこの炎の国でも一番とは言えぬのではないかと思うとります。何やらこの国の方々はワシが一番だと言うてくれとるそうですが、とてもそんな大層なもんでは。

しかし、ワシは剣を打つ時はいつも全力を注いでおります故、そう簡単にナマクラなど出来ないと自負しておりますな」


「ふーん。でもすごいんでしょ⁉︎」


「もしかすると、すごいのかもしれませんなぁ…」


「じゃあさ!僕に剣を作ってよ!!」


「ほう、もうご自分の武器をご所望ですかいの?では今日は剣の製作依頼に来たと?」


オルスが少し驚きつつも鍛治士の顔で尋ねると、レオは5歳の子供らしさ満天の笑顔で元気に返事をした。


「うん!!」


「しかし、剣といえども様々な種類がございます。レオ様は一体どのような剣をお望みで?」


「双剣!」


即答だった。

何の迷いも躊躇いもせずに、あっさりと答えた。


しかし、オルスは少し顔を曇らせた。


「双剣でございますか。

双剣はその名の通り二本の剣を両手に携え戦う攻撃特化の武器。剣の技術が素晴らしいものに上達した上級者のみが武器の乗り換えを考える代物。

レオ様の戦闘能力を疑うわけではありませんが、まずは基本の片手剣などにしては如何かな?」


だが、それを聞いてもレオは依頼内容を変えなかった。


「ううん!僕は双剣がいいんだ!」


首を横に振りながら無邪気に叫ぶレオは、少し駄々を捏ねた子供のようにも見えた。


「ではなぜそこまで双剣が良いのですかな?理由をお聞かせ願いたいものです」


「理由?そんなの一つだよ」


レオは立ち上がると両手を頭の後ろに組んで

ニカッと笑うと言った。


「カッコイイからに決まってるじゃん!」


オルス老人は一瞬ポカンと惚けたのち半ば呆れつつ苦笑いした。


「カッコいいからですか。なんともはや、粋な理由ですな。しかし、いきなりの上位武器。しっかりと使いこなせる自信はお有りかな?」


「もちろんあるよ!信じられないならこれ見てよ!」


石から飛び降りたレオは近くの壁に駆け寄り、立てかけてあったショートソードを2本持つとオルスに向き直った。


「行くよ!」


レオが見せたのは剣を使った舞であった。

本来舞とは戦闘技術ではなく、剣の道を極めた者が行う儀式のようなもので、これを上手く美しく舞うことで、その武器の完璧な上級者だと認められる。


レオがそんな舞を舞う様は幼い子供ながらに必死に認めてもらおうと頑張る姿がなんとも感慨深い。


だがそれでいて完璧で完全で悠然としたその舞は見る者の目を惹きつけて止まない。


流れるような剣の動きに対してのしっかりとした脚のステップ。

とても子供に出来るようなレベルの舞ではなかった。

しかしレオは淡々と、それでいて確実に舞を舞った。


オルスはただただ見惚れていた。



レオが舞い終わると、オルスは称賛した。


「素晴らしい舞でした。ここまで完成度が高いとは流石ですな」


オルスは確かに感じていた。この子は将来、この炎の国を、世界を、変える存在になるだろうと。


褒められたレオは頬を朱に染めた。


「えへへ…まだマネしただけだけど、でもいつか僕は自分だけの舞を舞うんだ!」



舞はそう簡単に自分で作れるものではない。

皆それぞれの武器の舞を舞う時は、昔から伝わっている一般的なものを拝借している。

自身の舞を持つ者は本当にその武器の全てを理解し、極めた者のみ。

自身の舞を作った人間など、メセトライト帝国の歴史上でも片手で数える程しかいない。



喜々として、そんな壮大な夢を語るレオをオルスは静かに見つめると、厳かに告げた。


「分かりました。レオ様の双剣、この鍛治士オルスめが造りましょうぞ!ワシの最高傑作と言えるほどの素晴らしい剣をお造りいたします」


「本当⁉︎やったぁ!オルスおじいちゃんありがとう!」


剣を造ってもらえるのがよほど嬉しかったのか、頬を蒸気させ飛び上がった。


「しかし、今から素材の金属を採りに行き製作作業をするとなると、かなりの月日が経つやもしれませんがよろしいですかな?」


オルス老人が少し気になっていたことを尋ねると、レオはオルスの硬い胸に飛び込むと、鉄や鋼などの金属の匂いにまみれた服に顔をうずめながら嬉しそうに答えた。


「うん!でもやっぱり早く自分の武器は欲しいし、1年で造ってくれないかなぁ…」


子供特有のおねだりを添えて。


「1年ですか…分かりました。多少は過ぎるかもしれませんが1年でなんとか造ってみましょう!」


「オルスおじいちゃん本当にありがとう!」


そう言って再びオルスの服に顔を埋めた。


「では今から作業に取り掛かります故、レオ様も城に戻って訓練をし、剣技を更に極めてこの老いぼれめを驚かせてくだされ」


オルスはゆっくりと優しくレオを身体から引き離した。


「うん。そうする」


レオが少し名残惜しそうに工房の玄関へ行くと、オルスも見送りに来た。


「じゃあ僕の双剣よろしくね!」


「はい。ではお気をつけて」


こちらに向けて手を振りながら駆けて行くレオを見ながら、オルスは独り呟くのであった。


「5歳にしてあの舞の才覚。女神様の見る目は間違っておらんかったようじゃのう」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



そして1年後。


城にオルス老人からの手紙が届いた。

内容は約束の双剣が出来たので取りに来て欲しいというものだった。


レオは急いで城を飛び出した。


工房の扉を叩くと、少しやつれたオルスが出迎えてくれた。


「おや、手紙を出して間もないというのに、早いお着きでしたな」


「うん!だって僕の双剣が出来たんでしょ⁉︎早く見せて見せて!」


「そんな焦らずとも剣は逃げたりなどしませんぞ?」


オルスは微苦笑しながらレオを中へ入れてくれた。


工房の中央の大きなテーブルに双剣(それ)はあった。


レオはすぐさま駆け寄ると、新しい自身の初めての武器を手にとってみた…が。


「…ッ⁉︎重いっ…!」


そう、とてつもなく重かったのだ。

現在のレオの体重の半分くらいはある。


オルスは、まだ6歳のレオには双剣(これ)を十分に使いこなせるとは思えなかった。


なので、まずこの重さのことを謝った。


「すみませんレオ様。どうしても強く、これからもレオ様の良き武器となるよう製作していたのですが、どうしてもこの重さの問題は解決出来ず、現在のレオ様では到底持ち続けるのも困難かと…」


だが、今まで俯いていたレオは顔を上げると、嬉しそうに双剣を持ち上げた。


「ありがとう!重さの方は大丈夫!

僕はまだ子供だから、これからもっともっと力をつけてこれくらい楽に振り回せるようになるよ!」


改めて見ると、2本の剣は薄暗い工房の中で神秘的なオーラを纏わせていた。


刀身は赤く、流れるように綺麗な模様が入っている。

鍔は少し横長で真ん中に宝石のルビーが小さくはめ込まれていた。

二本の剣のデザインは全く同一ではなく、片方は真ん中のルビーが縦向きに、もう片方は横向きにはめ込まれていた。


「お気に召していただけたようで良かったです。

所でレオ様。早速剣達に名前を付けてやってはどうですかな?」


「名前?そうだなぁ…」


レオは逡巡すると剣達に名を贈った。


「じゃあこのルビーが縦向きのやつはスレイ。横向きのやつはレッディオにしよう!二本合わせて【スレイ・レッディオ】だ!

よろしくね、相棒達!」


スレイを右手に、レッディオを左手に持ったレオは剣同士を打ち合わせた。

乾いた金属音が工房に響き、双剣に火花が散る。

それはこの双剣達がご主人様との出会いを祝っているように見えた。








▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼









レオは腰に吊った双剣【スレイ・レッディオ】を抜き、構えた。


ルキトも背中の双剣を抜き放ち、構えた。


なかなか観られない、双剣同士の戦いが始まろうとしていた。

いやはや、表現力が無いというのはなかなか困ったもんですなw

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