決勝戦
レオは怒りに打ち震えていた。
「許さねぇ…」
「何をだ?俺はただ戦って勝っただけだ」
オーヴェンは冷たく言い放った。
「あそこまですることはなかっただろ!アレスの体ボロボロだったじゃねえか!」
「それがどうした?俺は勝つためにやっただけだ。他意はない」
「クッ…」
正論ではあった。
ボロボロにはしても殺してはいない。
それだけにレオは言い返す事が出来なかった。
「ほら、早く上がって来い。さっさと始めるぞ」
そう言い残すと、オーヴェンは武台の中心へと向かった。
「…レオ……」
「負けないでね!」
カナとリリィも心配そうに応援する。
「あぁ、勝ってやるさ!」
アレスが連れて行かれた方を見るレオ。
(死ぬなよ、アレス…)
「行ってくる!」
そう叫ぶと、オーヴェンが待つ武台へと跳んだ。
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「何だ、逃げなかったのか」
「誰が逃げるかよ」
レオの着地と同時に言葉を交わす二人へ審判の声が掛けられた。
「それでは、決勝戦。レオ・エスティーア様対オーヴェン・ディアスティーロスト様の試合を始めます!」
双剣を抜き放った時点でオーヴェンはもう、攻撃動作に入っていた。
武台上を疾駆し、すぐさまレオの心臓へとその右手に握られた黒刀を振りかざす。
「くっ…‼︎」
(作戦・対策を考える時間すら与えないってか…)
反射的に双剣を交差させ、黒刀の一撃を受ける。
だが、それは重かった。
黒刀そのものの重みもあるが、そこに更に圧倒的な力が込められているので、簡単に受け切る事は出来そうになかった。
徐々に力負けしてゆく双剣を、レオはただ見つめるだけだった……わけではない。
「そらよっ!」
黒刀【ダーク・リストランサー】がどんどん心臓に迫る中、レオはその場でオーヴェンの真下に体を滑り込ませた。
支えを失った双剣の壁は崩れ去り、黒刀は振り下ろされるがそこにレオの心臓はない。
流れるような動きで滑りながら、レオはオーヴェンの右足に蹴りを放つ。
右足を蹴られたことにより、体制を崩したオーヴェンは立て膝をついた。
ゴロゴロと転がり、オーヴェンの間合いから出るレオ。
そしてすぐさまオーヴェンに斬りかかる。
「うおぉぉ!!」
狙うはオーヴェンの利き腕である右の二の腕。
腕は斬り落とさずとも、血管か神経さえ切れればもう右腕は使えない、そう考えたのである。
左の剣を振りかぶり、オーヴェンの右腕へと振りかざした。
だがそれは、黒刀によって弾き返された。
受け止められたのではない。
弾き返されたのだ。
「んなっ⁉︎」
レオは目の前の光景が信じられなかった。
さっきの攻撃はほぼ全力である。
それがいとも簡単に弾き返された。そのショックは大きい。
そして黒刀は止まることを知らぬかのように、レオへと向かって来た。
「くそ!」
右の剣を下から振り上げ黒刀を弾こうとした。
だが勢いこそ弱まったものの、弾くことは出来なかった。
「終わりだな」
オーヴェンの声が残酷に響く。
【ダーク・リストランサー】がレオの左肩を貫こうとしたその時、間に壁が立ち塞がった。
「っぶねぇ!」
弾かれた左の剣がギリギリで間に合ったのである。
左のみで支えきれるはずもないので、遅れながらも右の剣を重ね、両剣で黒刀の突きを受ける。
オーヴェンは黒刀を一旦引っ込めると、バックジャンプし距離を取った。
「そう簡単にはやられはしないか…」
「当たり前だろ‼︎」
レオが怒鳴り返す。
しかし、頭の中では思考を巡らせていた。
(ってぇ‼︎両手がジンジンする…ったくどんだけ力強いんだよ!にしても本当困ったな…)
反省会が起こるばかりで、対策はちっとも浮かんでこない。
(こうなりゃ一か八かまたアレをやるか…?)
そうと決まれば善は急げだ、とばかりにレオは駆け出した。
「馬鹿正直に突っ込んで来るだけでは俺には勝てないぞ」
オーヴェンが親切にも忠告をしてくる。
「そんなの分かってらぁ!」
オーヴェンの眼前まで近付くと加速時の勢いを乗せ、ジャンプしながら回転する。
「【炎舞剣技 他の章 三角形之炎檻】」
大気が裂けるような速度で双剣を黒刀に叩きつける。
金属同士が放つ音撃を聞きつつ、着地する。
が、やはり受け止められたので、そこから間髪入れずにオーヴェンの右側をぬけるように瞬時に移動。
オーヴェンのすぐ右後ろまで移動すると、その場で回転、遠心力を利用しながら黒刀使いの右肩に両の剣を叩き込む。
だがやはり反応は早く、すぐに防がれた。
防がれたと見るや、レオはまたすぐに行動に移る。
オーヴェンの体の向きは変わっていないので、背中側を駆け、ちょうど体の左後ろに移動すると、またその場で回転。
遠心力と加速時のスピードを乗せ、今度はオーヴェンの左肩を狙う。
しかし、やはりそれも失敗。すぐさま防がれる。
それでもレオは動きを止めず、今度はオーヴェンの正面に跳び、回転攻撃。
この一連の動きを何回も繰り返した。
「何度も何度も同じ事を…貴様はサーカスのサルか?」
自分の周りで回転攻撃の流れを繰り返すレオに、痺れを切らしたオーヴェンが挑発する。
だがレオは無視し、ただただ攻撃を続けた。
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「さっきからレオずっとあの攻撃ばっかりしてるよね…?」
カナが不思議そうに呟く。
こちらは王座の前で観戦している、負け組だ。
「…確かにずっと続けているけれど、それも全部防がれている……」
リリィにもレオの意図が読めないようだ。
その時…
「…すぐに分かるさ、あいつの事だ何か策でもあるんだろうな」
「「えっ⁉︎」」
2人が振り向くと、向こうからアレスティンがフラフラとこちらにやって来る。
「アレス‼︎もう身体は大丈夫なの⁉︎」
「…そんなわけないじゃない…休んでなきゃダメ……」
「いや、身体はもう大丈夫。城の救急班は優秀だね。あっという間に良くなったよ」
「本当に大丈夫?」
「…顔色が少し悪い……」
「大丈夫だって!それよりもほら!そろそろレオが仕掛けるよ」
「「え?」」
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もう何十回目になるかわからない回転攻撃を続けていたレオは、ついにその一連の動きに変化を加えた。
動きの中でオーヴェンの後ろまで来ると、今までの動きには無かった、背中への攻撃を追加した。
これには流石のオーヴェンも反応出来なかったようで、無様に斬りつけられた。
「ぅぐぁっ…‼︎」
呻き声を上げ、後ろを振り向くオーヴェン。
その時すでにレオは次の行動に移っていた。
双剣を交差させると共に叫んだ。
「【炎舞剣技 弍の章 火花 光】」
双剣を擦り切り、閃光を放つ。
そして、その場で大きくジャンプし、オーヴェンの後方に着地。
そのまま背中へと攻撃した。
だが、二振りの剣から伝わってきた手応えは、肉を裂くようなものではなく、ただただ硬い何かにぶつかったというものだった。
聞こえるはずのない、金属同士の衝撃音が鼓膜を揺るがす。
「そんなっ…嘘だろ⁉︎」
オーヴェンが丁度、刀を背中に納めるようにして双剣の攻撃を受けていた。
レオには信じがたい光景だった。
【火花 光】をまともにくらって視力が失われないハズがない。
いくら加護の力を使っていないとはいえ、ほんの数瞬は何も見えないはずなのである。
「そんな狡い手を使うとは、見損なったぞ。レオ・エスティーア」
「お、お前何で視力を失ってないんだ⁉︎何故俺の攻撃を受けることが出来た⁉︎」
「簡単な話だ。お前が技を使う寸前目を閉じただけの事。その後お前が背後から迫って来ているのを気配で察知したから、相応の対処をしただけだ」
レオには今の台詞はあのたった一瞬で技を見切った様な口振りに思えた。
「でも、それにしたってこの技をお前に使ったのはさっきが初めてだ!そんな初見の技にどうしてこうも容易く対処出来た⁉︎」
「はぁ…俺はこの決勝戦、お前が必ず勝ち上がって来ると踏んでいた。だから先ほどの2回戦を少しばかり観戦していただけだ。その時お前がこの技を使うのが見えた」
「観戦していた…って、お前はアレスとの試合があったじゃないか!」
「あんなやつの攻撃を流しながらお前の試合を見るくらい造作もない」
「な…んだ…と…⁉︎」
驚愕の表情を浮かべつつも、レオの体の内には何かがふつふつと沸き起こってきていた。
自分の技が通用しなかったことはショックではあったが、今はもう違う感情が血のように巡っていた。
「てめぇ…あんなやつの攻撃だと…⁉︎」
忘れかけていた感情がとめどなく湧き上がってくる。
「コノヤローー!!!!」
レオは猛攻撃を開始した。
物凄い速度で繰り出される双剣を、オーヴェンは物ともせず捌いて行く。
「必死だな。何のためにそこまでするのか。やつにそこまでする価値があるのか。
やつが国主を名乗っていること事態が不思議でならんな。あんな糞みたいな攻撃しか出来ないやつがな…」
その時、レオの中で何かがプツンと……切れた。
急に攻撃を辞め、距離を取り両腕をだらんと下げる。
レオの殺気がどんどんと増している。
その圧倒的な殺意が離れているオーヴェンの所までビリビリと伝わってくる。
「やっと本気になったか…」
オーヴェンがポツリと呟く。
レオはゆっくりと双剣を頭へと持って行く。
そして…
「【炎舞剣技 壱の章 火花 加速】」
柄で両のこめかみを殴った。
本来なら今のレオでは【火花 加速】は一日に1回が限度。
まだ体が未熟なので、2回以上使うとどのような悪影響が身体に及ぼすのか、未だ分かっていない。
だが、今のレオの脳内にそんな考えは一切無い。
頭を埋め尽くしていくのは純粋な、憎悪。
まるで自分の中の自分じゃない何かが目覚めたような感じであった。
顔を上げ、オーヴェンを睨みつける。
その瞳には増幅していく殺意が込められている。
「ぶっ倒す…」
「何?」
「お前を血祭りに上げてやる…」
「ほう…。面白い。出来るものならやってみろ」
「言われなくとも‼︎」
瞬時にオーヴェンの眼前まで移動し、右手の剣で突きを入れる。
一直線に、心臓へ。
オーヴェンはそれをギリギリで上に弾いた。
しかし左の剣はもう大上段に振りかぶられていた。
「オラァァァァ!!」
弾かれた右の剣も添え、オーヴェンの頭めがけて一気に振り下ろした。
危険を察知したのか、オーヴェンは即座に後方にバックジャンプした。
空振りした双剣が武台へと叩きつけられた。
大轟音が鳴り響き、地面が大破する。
一目で途轍もない威力であることが分かる。
まともにくらっていれば、いくらオーヴェンといえど真っ二つだっただろう。
そして、既にレオはその場から消えていた。
「後ろか!」
なんといつの間にかオーヴェンの背後で攻撃モーションに入っていたのである。
右の剣を武台に突き刺すとそれを軸に回し蹴りを放つ。
オーヴェンの首へ。
「ガハッ…‼︎」
軽く10メートルは吹っ飛ばされ、空中で喀血する。
武台を滑りながらも立ち上がった時、もうレオは目の前に来ていた。
右の剣から左眼へと突きが放たれていた。
ギリギリで頭を後ろに逸らして避けるオーヴェン。
しかし、今度はその突きをそのまま下に降ろしてきた。
オーヴェンは右ステップで辛うじて避ける。
もう攻撃がいつものレオではなかった。
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「あいつ、怒りで我を忘れてる!このままじゃオーヴェンの奴を殺しかねない!」
焦るアレスティン。
「そのせいでさっきから狙いが全て急所なの⁉︎」
動揺するカナ。
「…レオ……」
静かに見守るリリィ。
「試合中にあいつら以外が武台に上がってはいけないし。レオをどうやって止めろって言うんだよ!くそッ!」
「ここからでも出来ることはあるだろう」
ゴルメンタートだった。
「どういうことだい⁉︎」
「どういうことも何も、別にあそこに割って入って行かなくとも彼奴を止めることはお前には出来るはずだ」
「そんなこと言われても、どうしろと言うんだよ⁉︎僕にはここからレオを見てることしか…」
「頭を働かせろアレスティン!彼奴が何故怒り狂っているのか推測してみろ。そうすれば自ずとお前に出来ることは見えて来るはずだ」
「推測…」
(そうだ、レオは何故あんなに怒っているんだ?オーヴェンに何らかの挑発を受けたからか?ならいったいどんな?まさか…僕のことでか⁉︎それなら気にすることないのに。ではどうすればレオの暴走を止められる?ここから動かず僕の無事を教えてやればいい。でもどうやって……⁉︎そうか‼︎)
その時、アレスティンの中で全てが繋がった。
「これならレオを止められる…」
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レオは距離をとったオーヴェンに向けて、右手の剣を投げた。
一直線に心臓へ飛んで来る剣を前にオーヴェンは笑っていた。
「馬鹿め!自ら武器を捨てるとは…」
だが、その先にいるはずのレオはどこにもいなかった。
背後に微かな気配。
目を向けると、背後にレオが迫って来ていた。
もう一本の剣を構え、オーヴェンの心臓を見据えて。
「何⁉︎」
このままでは前からの投剣と後ろからのレオに挟み撃ちにされてしまう。
かといってどちらか一方に対処していてはもう片方にやられてしまう。
俗に言う絶体絶命であった。
だが、オーヴェンは臆しなかった。
前方に視線を戻すと、冷静にその場を分析する。
(どちらかと言うと前からの方が早いな。ならば…)
もう投剣は目前に迫っていた。
あと30センチ。
あと10センチ。
(ここだ!)
オーヴェンは身体を右回転に捻り、ギリギリで投剣を避ける。
そしてその場から逃げるようにバックジャンプで離れた。
投剣の進む先にはレオがいる。
このままでは自滅してしまう。
しかし、レオもこれで終わりではなかった。
身体を急停止させると目の前にまで来ていた投剣とほぼ同じ速度で右手を柄に添える。
そして、少し右に移動し剣が自分の身体の横を過ぎて行く瞬間、身体を左に回転させ剣の軌道を変えた。
Uターンした剣はそのままレオの右手を離れ、またオーヴェンの心臓へと直進を始める。
「そんな馬鹿な⁉︎」
オーヴェンは今の現象が信じられなかった。
剣の速度はかなりあった。
そんな空中の剣を掴むだけでもあり得ないのに、そこからさらに回転で軌道まで変えてみせたのだ。
驚かずにはいられなかった。
それでも危機を脱していないことに変わりはない。
前からの剣に意識を向けた時、またしてもレオはいなかった。
「また後ろか⁉︎」
背後に視線を向けると、自身の推測は正しかった。ただ。
「俺の親友をバカにしたこと、死んで詫びろ」
先程よりもかなり自分の至近距離にいたことを除いては。
今度こそ終わりではないかに思えた。
しかし、オーヴェンにはまたもや勝てる自信があった。
後ろを向き、レオに対峙する。
背後から感じる凶器の気配が背中ギリギリまで接近して来た時、動いた。
空へ。
その場で瞬間的に大ジャンプすると、オーヴェンは空へ逃げた。
今度は本当に勝ったとそう確信した。
しかし。
レオは迫って来た剣を左の剣で打ち上げた。
垂直に。
真っ直ぐに。
またもやオーヴェンはあり得ない現象を目の当たりにすることになった。
自分に接近して来た剣を何とか黒刀で薙ぎ払うと、武台に着地した。
「お前、神か?」
「人間だ」
驚愕の表情を浮かべているオーヴェンに、その言葉は信じられそうになかった。
さっきまでのはまさに神業。
人間に出来るようなものではない。
その時。
「レオ!僕はここにいるよ!この通り無事だ!そんなやつの挑発に乗るんじゃない!怒りに振り回されるなーーー!!」
アレスティンが叫んでいた。
カナやゴルメンタートのいる所から。
「アレス…無事だったのか」
無事だったアレスティンを見て、レオは涙を流していた。
「その隙が命取りになるのが分からないのか?」
オーヴェンが黒刀を振りかざしていた。
「親友にああ言われたんだ。しっかりしなくちゃな、俺」
それを双剣で受けるレオ。
「命取りだって?あんたは始めから俺の命取りに来てたじゃないか」
「さぁな」
【火花 加速】の効果はまだ続いている。
勝負を決めるなら今であった。
左の剣と右の剣、二本の剣で同時にオーヴェンの両の胴を狙う。
「【左右壁】」
二本の剣の攻撃はほぼ同時に防がれた。
「その速度、お前やリリィだけが体現出来ると思うなよ」
「やるじゃんか。でもこれはどーよ⁉︎」
防がれた剣を持ち直すと、ニヤリと笑った。
「【四方剣撃】!」
双剣が消えた、と思った時にはもう四つの方向つまり両肩両脚へと攻撃されていた。
明らかに剣が四本に増えていた。
そう錯覚させるほどの速さだった。
「ぐぁっ!」
悲鳴を上げたオーヴェンは立て膝をついていた。
激痛が両肩両脚に走る。
だが、苦痛に顔を歪めていたのはオーヴェンだけではなかった。
「あー痛ぇ!ちきしょう!この技腕に無茶苦茶負担来るの忘れてた…」
などと言っていたそばから、黒刀が首に迫って来ていた。
「まだ剣を持つくらいは出来るぞ。油断したな」
オーヴェンはもうかなりスタミナ切れらしく、かなりふらついていた。
「俺だって剣くらい振れらぁ!」
痛む両腕を叱咤し、迫る黒刀を上下から挟み込むように叩きつける。
(頼む!成功してくれ!)
「【武器強奪】」
黒刀が、オーヴェンの手を離れ空に飛んだ。
クルクルと、踊るように回転しながら。
「終わりだ、オーヴェン」
首に双剣を突きつけるレオ。
「優勝はレオ・エスティーア様に決定です!これにて最強武神祭全試合終了です!」
初老の男の宣言が響くと、会場は歓喜に満ち、拍手喝采が沸き起こった。
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
「レオーーー!」
「よくやったな!」
「…おめでとう……」
「なかなかの試合だった」
カナやリリィ、ゴルメンタートやアレスティンが次々に武台へやって来てレオを褒め称えた。
「お前ら…」
レオもフラフラとそちらに向かう。
1番に迎えてくれたのはアレスティンだった。
「アレス、無事だったんだな…」
「あぁ、やったな優勝」
「ありがとよ」
2人は固く抱き合った。
「あーもーアレスだけズルいーーー!カナもー!」
今度はアレスティンをひっぺがしたカナが抱きついてきた。
「レオ、優勝おめでとう!」
「ありがとな、カナ」
「んっ♡」
頬にキスされていた。
「え…⁉︎」
「優勝したご褒美♡」
唐突すぎて、レオはただただ赤くなるだけだった。
その時背後から殺気が放たれていたのだが、この時12歳だったレオは浮かれて気がつかなかった。
それが現在の事件の火種であったということに…
アレスティン…
それくらい推測しなくても分かるだろ…
って感じのツッコミは無しの方向でお願いしますw