国王の暗殺
剣と魔法のファンタジー小説です。
今回はまぁ、始まりの事件って感じですね。
とても暗い部屋に男はいた。
窓からの月明かりが男を薄暗く照らす。
髪を肩下で揃えた、黒髪の男である。口元や顎にも、かなりのヒゲを蓄えている。表情はずっと難しい顔をしたままだ。
玉座にどっかりと座り、男はある人物が到着したという報告を待ち続ける。
その時…
「国王様、オーヴェン・ディアスティーロスト様がお見えになりました。お通ししてもよろしいでしょうか?」
と扉の向こうから、国王が待ち望んでいた報告が寄せられた。
「ああ、通してくれ。」
とだけ返事をし、国王は男が入ってくるのを待つ。
ここはメセトライト帝国の中心部、王都にそびえ立つ、エルンライト城。その城の内部にある応接間に、メセトライト帝国の国王、フェンリル・エスティーアはいた。
なんでも闇の国の国主のオーヴェン・ディアスティーロストが3日後に急遽話がしたいと書状を送ってきたので、その3日後である今日、こうして会見の場を用意したわけである。
「国王様、オーヴェンです。部屋に入室してもよろしいですか?」
「ああ、入れ。」
そうこうしているうちに、オーヴェンが来たようだ。
オーヴェンは応接間に入ると、長テーブルを挟んで国王の真向かいの椅子に座った。
「この度は急遽この場をお作りすることを頼んでしまい、申し訳ございませんでした。」
オーヴェンが深々と頭を下げる。
「いや、それくらいは別にいいのだが…」
と国王は言うと、更に眉間にシワを寄せつつ心配そうに聞いた。
「お前が話をしたいだなんて珍しいではないか。緊急のようだが、何かあったのか…?」
「ええ、実は…」
言いながら、オーヴェンは椅子から立ち上がるとおもむろに手のひらを上に右腕を前に突き出した。
すると、右腕全体から闇のオーラが立ち込め、手のひらの上の空間に暗黒の渦を作り上げた。その中から禍々しい黒剣を取り出す。
全てが闇色に染まっているその剣は、見ているだけでどこか心が闇に飲み込まれそうになる。
「あなたに死んでもらおうと思いましてね。」
「何⁉︎」
フェンリル国王はこの時になってやっとオーヴェンを警戒した。だがしかし、それはもはや遅過ぎた。
国王は剣どころか武器らしいものさえ持っていない。応接間であるため、部屋にももちろん武器など置いていない。戦闘になったら結果は分かりきったものだった。
「やめろ‼︎何故だ‼︎何故私を殺そうとする⁉︎」
死の危機に直面した国王は、今更ながらに怯え出す。城の衛兵達を呼んでもいいのだか、衛兵が来る前に目の前の男は自分をあの黒剣、【ダーク・リストランサー】で突き殺すだろう。それだけは避けたい。その一心で国王はオーヴェンに問うた。
「何故、と仰いますか。それは……この俺がキサマを殺し、【ホーリー・エンハンス】を手に入れ、創造神となるためだぁ!!」
途中から急に口調を変えたところを見るに、すぐにでも自分を殺すつもりなのだろう。
もはやこの男に国王への尊厳はないのだ。
だが、重要なところはそこだけではなかった。
「創造神だと⁉︎あれはこの世界を作られた神のみの力。封印されし力だぞ!その力を操れるのは神のみだ!第一、聖なる恩恵の力を闇の力と混ぜるなど絶対にならんことだ!この世界を滅ぼす気か!お前などでは絶対に制御出来ん‼︎」
必死で説得を試みるが、今のオーヴェンにその言葉は最早無意味であった。
「この世界を滅ぼす?そんなつもりは毛頭ねえよ。ある目的の為に俺は、クリエイトの力を手に入れるんだよ!」
「その目的というのは…?」
「そんなもんこれから冥土に行くやつに教えると思うか?」
という言葉と同時にオーヴェンの姿が掻き消えた。
オーヴェンは一瞬で長テーブルを越え、国王の左胸へと、その黒剣を突き刺した。
「ガハッ…‼︎」
左胸から溢れ出る返り血を浴びながら、オーヴェンはニヤつきながら最後の言葉を投げかけた。
「あばよ国王。あの世でもどの世でも行って来い!」
「私を…殺したところで…お前の…思うようには…いかんだろう…必ずや…お前の目的を…あの子達が…」
最後の抵抗と言わんばかりの言葉にオーヴェンは苛立った。
「うるさい…黙れ!」
そして、突き刺していた黒剣をそのまま左に振り切った。国王の胴体は、心臓より右側の部分で申し訳程度に繋ぎとめつつ、ほぼ水平に切り裂かれた状態になった。
もちろん国王は息絶えている…
▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
「終わったぜ。」
黒剣を暗黒の渦にしまうと、オーヴェンは暗がりにそう呟いた。
「そうね。まぁまぁ上出来かしら?」
その呟きに返事が返って来たと同時に、オーヴェンの背後に闇のオーラが漂う。
「まぁまぁかよ…」
「ふふっ…」
余裕を含む笑い声と共に、オーラは段々と形を整えていき、その姿を1人の美女へと変えた。とても美しい女性で、妖艶な雰囲気を漂わせているため、見ているだけで心がその女性に取り込まれそうになる。
だか、オーヴェンは惑わされない。
「行くぞ、ペルセロナ。一旦闇の国に戻って防衛体制を整える。」
「あら?私に指図だなんて20年は早いんじゃない?」
「いいから行くぞ!」
2人は窓から飛び降り、その姿を消した。
国王の遺体が発見されたのは次の日の朝であった…
初投稿です。
誹謗中傷などはお控えいただきたい。
感想や、アドバイス等お願いします。