表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Over Drive...  作者: KeiTa
Story 2 豹を降らす帝王編
19/33

016;聖騎士の依頼。

更新が遅れてしまいました^^

これからは気長にゆっくりというくかもですw


では、第二章もまだ序盤!

今回は少し長めですw





「こいつは、派手にやらかしやがったな。クソッたれめ」


 商店街ともいえる大路地の裏に店を構える「鍛冶場ガルマ」で、初老の鍛冶屋、ガルマが、アスロに向かっていった。その手には、真っ二つに折れた黒刀の刀身が添えられている。

 

「武器破壊を喰らっちまったんだよ」


「ダセェへまをしやがる。赤髪、直すのにはちいと時間がかかる」


「お前らしくない。そんな難しい注文じゃないだろう」


「先約がいるんだよクソ坊主。おめぇはちったあ敬語ってもんを覚えやがれ」


 アスロは明らかに不機嫌な顔をして、フィオナのほうを向いてそっと囁いた。


「腕は確かなんだが、愛想ってもんが……」


「アスロがそれ言う?」


 笑いながらフィオナは言った。ガルマの言うとおり、この間までフィオナに使っていた敬語は何とも微妙な感じだった。ガルマは黒刀を端に立てかけられていたケースに入れ、保管した。


「どれくらいかかるんだ?」


「2,3時間あればおわらぁ。その辺うろついてろ」


 聞こえるようにアスロは舌打ちすると、ガルマにこれまでの経緯を説明しだした。おそらく、暇つぶしのためだろう。彼は聞いているのか聞いていないのか、何やら見事な鋼の剣を研いでいる。

 轟音を発てるこの店からは、古くから幾万もの武具を研ぎ、精錬してきたすごみは感じ取れる。アスロも腕には確かな信頼を置いており、わざわざレマーレまで「鍛冶場ガルマ」に足を運ぶものも少なくない。

 

「ちょっと盗賊団とやりあってさ。そこに武器破壊の名手がいてな。最初から気づいていれば、警戒して刀を振るわなかったのに」


「武器破壊は正確には物理攻撃じゃねぇンだよ。あれは金属自体に音波振動を与えて耐久力を鈍らせる技だ。相当な技術がいるからそう使い手はいねぇがな」


 武器破壊は、特殊な系統の魔法に分類される。

 術者は、武器と武器(防具も可)がぶつかり合う瞬間、音波振動を引き起こす魔法を発動し、武器を経由して増幅させ、相手の武器に浸透させる。浸透した音波の衝撃波は、武器の比較的弱い個所を重点的に攻撃し、破壊する。

 ガルマが今言ったように、武器破壊は使い手の技量に左右される。発動する際は武器破壊を狙って発動することしかできず、偶発的発生は起こりえない。武器が衝突する際に音波を送り込むタイミングを見極めるのが非常に難しく。仮にうまく音波振動を送り込めたとしても、必ずしも破壊が成功するわけではない。


「おめぇに運がなかったのもあるな。ハァッハ!!」


 爺臭いおかしな笑い声をするガルマにアスロは苛立ちを覚えた。

 だが、ガルマは声を低くし、アスロにのみ聞こえる声で言った。


「……武器が壊れても乗り切ったってこたぁ、おめぇ、アレを使ったな? ……連発はしねぇほうがいい。身を滅ぼすことになるぞ」


 アスロは無言で頷いた。


 ガルマの言ったアレ……とは、


真紅の形態(ブラッドフォーム)


 あらゆる「陽」(良心)の感情を一時的に焼き殺し、命を炎に変換する魔法。

 そのため、炎の色は血の色をしており、長時間使用すると死に近づいていく。

 あらゆるものを破壊する力を秘めているが、その反面、清き心を取り払っているため残虐性がまし、自分が勝利することよりも、相手を殺すことのほうが重要という考え方に陥ってしまう。



「あれ、誰かきたよ?」


 フィオナが外に目をやった。

 一同が見た先には、一人の長身の女性が立っていた。

 アスロよりも少し高いくらいか。茶色の混ざった黒く長い髪をポニーテールにくくり、すらっとした印象を与える。服は蒼い軍服のようなものを着ていて、整った顔立ちをしているが、左手に握った太刀がそれを打ち消しているようだ。一言で言えば、美人剣士といった感じか。

 アスロとガルマも思わず見入っている。


「ちょ、ちょっと…!何見とれてんのよ…!!」


 アスロにフィオナがささやき、足に蹴りを放つ。鋭い痛みにアスロは我に返り、そして気づいた。

 ……女性の胸に、十字架に獅子を象ったバッジが付けられているのを。


 十字架に獅子は、聖騎士(パラディン)という役職を表している。

 聖騎士は、騎士の最高の役職で、国家間を自由に横断でき、あらゆる任務において独自の判断を下すことを許可された実力者が手にする称号でもある。

 大国にそれぞれ五人だけいて、各々がとてつもない実力を持つ。


「はじめまして。今朝方連絡をしたエアリスと申します。剣を持ってまいりました」


 丁寧な言葉使いで、美人聖騎士エアリスは言った。ガルマのもとへ近づき、左手に握った太刀を見せる。手入れの行き届いていそうな、艶やかな藍色の鞘が特徴的だった。


「おお! あんたが今朝電話してきた人か。……わりいな、赤髪坊主。この御嬢さんが先約だ」


「すいません。早急に剣を磨いてもらわないといけ………!?」


 エアリスはコクリとうなずき、アスロとフィオナに会釈した。そして、ゆっくりとアスロに歩み寄る。アスロを上から下までじいっと見て、言った。美人に見つめられ、アスロは思わずたじろぐ。頬が紅潮し、それを見たフィオナがまた小突いた。


「もしかして、アスロ・ディンク……?」


「ああ。そうだが。……あんたこの大陸の聖騎士だろう。悪いが、この国の力となる覚えはない」


 アスロは大陸が戦力としてOVER-DRIVEを欲していることを知っているので、言われる前に釘を刺しておく。木の椅子に腰かけていたアスロは立ち上がり、眼前のエアリスを見た。


「そんな気はないよ。私はただ、かの有名な《灼熱の化身》に出会えたことに感激しているだけだ」


 そうは思えないが……。


 アスロは心の中でそっと呟いた。

 薄い笑みしか浮かべていなかったエアリスを少し疑っていたアスロだったが、彼女が真剣な顔になったのを見て、態度を変えた。


「貴方の力を見込んで頼みたい。その力、少しばかり貸してはくれないか……?」


 突然の頼みに、二人は困惑を覚えた。


「それって、どういう?」


「私の弟子が、捕まっているのだ。正確には、出られなくなっている。助け出したいんだが、私だけの力では到底助け出せそうにない」


「いまいち意味が分からない。大体場所はどこなんだ?王宮ってわけじゃないだろう」


 エアリスはスゥッと息を整え、重大な地名を言った。このあたり一帯で伝えられる、とある地名。幻ともいわれ、恐怖の場所とも噂されるいわば秘境。


「場所か………『冷土(ツンドラ)』だよ」


「……………」


「お願いだ! 私に……力を…貸してく…れ」


 エアリスは頬に一筋のしずくを流し、震えた声で言った。

 アスロとフィオナは、言葉が出てこなかった。
















 

お気に入り登録をお願いしたいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ