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Over Drive...  作者: KeiTa
Story 2 豹を降らす帝王編
17/33

014;再確認


まだまだ第二章も序盤です!

これからにご期待ください!!

アイツとは誰なのか……?


 木々が揺らめき心地よい風の吹く森林都市ザフォニアを出てアスロたちが次に目指すのは、北部に広大な領土を構える五大国の一つ「ガラルシア共和国」。

 北部の国の端に位置する地に、武器精製で有名な都市がある。いわば鍛冶の都。魔法が発達しているこの世にも、物を造りだす魔法は今のところ存在しない。都には国中から腕に覚えのある鍛冶職人が集まリ、客を他の職人にとられないよう競い合っているので、自然と上質の武器防具ができる。ということは客も国中から集まりかなりにぎわっている。その鍛冶の都の名はレマーレ

 アスロたちはここを目指し北上している真っ最中であった。




 ザフォニア北部に聳える北峰とやらにあるトンネルを抜けると、真新しい駅があった。俺たちは俺の愛刀を直すため電動で動く列車に乗る。

 ガラルシア共和国の都市レマーレには、俺の黒刀を鍛え上げた《ガルマ》という老職人がいる。今回は折れたので新品に買い替えようと思ったが、俺はあの刀の炎の流れ具合が丁度よかったので無理を言って直すことにした。なら直すのならどうせなら刀を打った刀匠に直してもらうのが一番だとなり今に至る。


「2番ホーム、まもなく列車がまいります」


 構内アナウンスで北部へと向かう列車がやって来るのを知らされる。五大国はそれぞれ強い連携を持ち、簡単に列車で行き来ができるようになっている。


「ひ……フィオナ、列車が来るぞ」


 つい癖で《姫》と呼びそうになる。まぁ、敬語とやらには慣れてはいなかったので楽と言えば楽だが、少々抵抗がある。


「今、姫って言いそうになったでしょ?」


 先ほどまで近くの服屋で衣装チェンジしたフィオナに言われた。じろりと睨まれ、思わず顔が引きつる。俺は気を取り直すように列車のほうへ手招きし言った。


「ほら、早く並ばないと席がなくなるぞ」


 二番ホームに列車が停車する。《北の大国行》と書かれたこの列車は、直行列車のようだ。ちらほら見えていたホームに立っていた人たちが乗り込むのに合わせて、俺とフィオナも乗車する。

 幸い、まだコンパ―メントにも空きはあり、俺たちは難なく席を確保することができた。


「全然大丈夫じゃん」


「すみま…………早く乗るに越したことはないだろ。いいじゃんか」


 思わず敬語が出そうになり謝ってしまうところだった。俺の脳から敬語というものを消し去らねばならないかもしれない。列車が発車する直前に、俺たちは座った。勿論コンパーメントには俺たちしかいない。

 向かいに座るフィオナは、これまで着ていた比較的動きやすそうな薄いピンクのドレスに茶のコートを羽織っていた服装から、ザフォニアの洋服店で買い揃えた“街にいても馴染むような服”に着替えている。

 もっとも、俺たち二人は肩から膝まで覆うおそろいのローブを身に纏っているので意味はないだろう。


「ねぇねぇ、鍛冶の都ってどんなところなの?」


「あぁ、街中に噴水やら池やらたくさんあるんだ。水の都とも呼ばれているな。市街は商人で溢れかえっているぞ。さっきまでいた街とは比べ物にならないくらいにな」


「たとえば、アストラルと同じくらい?」


「……………」


 急に出てきた大都市の名に、俺の中で何かが反応する。ふと、今まで思っていたことが俺の口からこぼれた。ずっと言おうと思っていた素朴な疑問。


「………姫は、フィオナは後悔してないのか。………俺が連れ去ったばかりに、国を捨てることになったって事を」


 少しばかり怖かった。

 もしここでフィオナが後悔してるなんて言ったら、俺はどうなってしまうだろう。見当もつかない。いわば、俺のしたことは《身勝手》だ。勝手に連れ去った。自らの使命や宿命をフィオナに半ば押し付けるような形で。

 だが、そんな俺の思いとは裏腹に、そっと彼女は言った。


「後悔なんか、後悔なんかしてないよ。だって私は城から出たかったもん。

 アスロは私を助け出してくれたんだよ。だから、《連れ去った》じゃないよ。……それに今の旅も楽しいしね」


 その言葉に、俺はホッと胸をなでおろした。言葉にできない安心感が体を通過していく。ただ、この時純粋に、フィオナは命に代えても護りたい。と思えた。それは今まで思っていたのよりも確実で、実体の見えるものだった。


「私もこの旅で何か見つけたいな」


 俺には《ある物体》を破壊する使命がある。世界各地で名前が変わるその物体は、無色透明という未知の魔法に守られていて、認識することができないと言われている。

 だが、フィオナの眼をもってすれば、認識することが出来るかも知れないと俺は調べ上げた。そして、物体を破壊できる力OVER-DRIVE.

 ―――――――絶対に見つけ出し、破壊してやる! アイツ(・・・)のためにも!!


 「きっと見つけられるさ」


 それは趣味なのか、夢なのか。今の俺たちにはわからない。だがそれはきっとかけがえのないほど尊いモノのような気がする。それを見つけれたとき、すべてが終わっているだろう。


 今はまだわからないけど。


 列車は北の大国へ向かって北上していく。


 出発した国の首都に現れた男のことなど、この時は考えてもいなかった。




It is already pressing close at hand.








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