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Over Drive...  作者: KeiTa
Story 2 豹を降らす帝王編
16/33

013;冷気の支配


この国の首都は国の玄関口となっています。






 突如街中に鳴り響くサイレンを耳にして、ルーウェンの指が震えた。老剣士は無言でコクンと頷き、彼を送り出した。

―――想定していたより……早い!!

 ラウンジを勢いよく飛び出し大通りへと出た。

 当然ながら通りは銀の光輝く甲冑に身を包んだ騎士たちが市民を避難させていた。


「敵の数は?」


 ルーウェンは手近な騎士に駆け寄り尋ねた。


「隊長、それが…一人で」


「一人!?」


「門兵が氷付けにされたことから、……ジェラルド・シンフォニアかと」


 彼は驚くほど冷静に、無線機を手に取り、全ての騎士に行き渡るようにボタンを押すと口元に当てた。


「アストラル全騎士に告ぐ。敵は強大な魔導士一人だ。君たちは市民を避難させた後、直ちに王宮へ戻るべし。隊長が迎え撃つ。以上!」


 無線機をしまわず、投げ出したルーウェンは、大門の方へと駆け出していく。その背中は、決意に満ちた戦場へと向かう兵士と同じであった。


「隊長!」

 

 行く先々で、逆方向を目指す騎士たちとすれ違う。彼らは騎士に似合わない悲しげな表情を浮かべた声を掛けた。しかしそんな彼らに目もくれず、彼の瞳は大門の方角から離れなかった。

 

 ―――俺が奴を捕らえる。奴を、OVER-DRIVEを……!!


 地を蹴る音だけが、静かな満月の夜に響いていた。やがて進んでいくと、家屋の数は減っていき、平野が広がっている。これも警備の一環、壁の内側には平野があり、視界を広げている。

 ルーウェンは平野まで辿り着くと、前方に男を捉えた。ゆっくりと歩いて近づく。


「見つけたぞ、ジェラルド・シンフォニアだな」


 深い蒼色の髪の男は、友好的な表情をしながら、茶色のグローブを着けた左手で頭を軽く掻いた。


「やあ、その身形からして隊長かな? ………待ってたよ」


 男から感じられるのは、冷たく鋭い殺気。しかし、それと相反するような柔らかい表情をしていた。

 ルーウェンは大気の流れを読む。ジェラルドの使う魔法は言わば《絶対零度》の氷の魔法。射程距離内に入れば氷付けにされてしまう。


「直接対峙するのは初めてだな、豹帝よ」


「オレが何故来たか、わかるかい?」

 ルーウェンは数秒間をおいて、


「さぁ。皆目検討もつかない」


 静かに、ジェラルドは歩みを進める。ジリジリと、間合いを積めていく。口元を緩めると、言った。


「この国の姫を差し出せ。それ以外用はない」


「姫を………だと…!?」


 ルーウェンの眉間に皺が寄り、動揺がはしる。《姫》という単語が、彼の耳奥を引っ掻いた。握りこぶしに、力がこもる。そんな彼の葛藤を、ジェラルドは見下すように見ていた。


「………君の精神の葛藤に興味はないんだ。早く答えてくれ」


 ルーウェンは腰に帯びた太刀を引き抜き、構えた。同時に、左腰から短刀も抜いた。


「悪いが答えることはできない。………それより自分の心配をしたらどうだ?」


 押し殺したような声が、夜の街に漏れた。


「……クククッ、心配? 面白い。……面白すぎる。そんなもの、するだけ無駄だ」


 周囲の温度が、僅かに下がる。ジェラルドが右手を真横につき出すと、パキリパキリと音を発て、凍り付いていく。大きな刃のように象られると、彼はそれを変形させ腕に刃を装備するように氷を操った。

 腕に纏われる鋭い豹刃。それは斧のようにも、槌のようにも、剣のようにもとれる。


「さぁ! 君のその剣技がどこまで届くか、見せてくれよ」

 そう彼が呟いた瞬間、ルーウェンは駆け出していた。

 大きく上段に振りかぶった右手の太刀は、間合いを大きく詰めながらジェラルドの左肩に向かって振り下ろされる。

 ガラスの割れるような音が鳴り響くと、ルーウェンの敏速の右太刀はジェラルドの右腕で凪ぎ払われていた。涼しい風がルーウェンに吹くと、そんな和みは与えないと言わんばかりに氷弾がルーウェンを襲う。それも1m級のバカでかい氷弾がジェラルドから放たれたのだ。

 ルーウェンはこれを紙一重でかわすが、次々と放たれる氷弾は息つく暇も与えず。

 彼は直撃し大地に転がっていく。


「……君の剣技は届かない。そして君が読む大気は………もうオレの支配下だ」


 凍てつく冷気が、ルーウェンを包み込んでいく。彼の《大気の読》は、空気の流れを感じ取り、相手の行動を先読みする魔法。しかし、ジェラルドが放つ冷気に包み込まれたこのフィールドはもう、彼の支配下となっており、感じ取ることなどできない。


 ―――魔法は封じられたか。


 ゆっくりと立ち上がる。自らに付いた氷を振り払いながら。


「………俺は国防騎士隊長。如何なる状況下であろうと、たとえ魔法が使えなかろうと、国を護るのが指名だ」


 ルーウェンは短刀を地に落とし、右手に握っていた太刀を両手で握り、中段に構えた。


「この刃、届かせてみせる」


 月は妖しく輝いている。





 Does his edge arrive?


 





ボリューム感のなさは、単に書くスピードが遅いためです。

すみません!!


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