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Over Drive...  作者: KeiTa
Story 1 灼熱の飛竜編
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009;消失の剣舞



ギブロアは、盗賊になる前は案外秀才だったりします。







「おいおい、そんな陰気な面するなよ?楽しくいこーぜ」


 アスロは翼を広げた状態でギブロアを直視していた。壁一面黒一色の趣味の悪い鉄の部屋は、薪が燃える音しか鳴っていない。ギブロアはゆっくりと立ち上がると、腰に差している短刀を抜いた。不気味なオーラが目に見えるかのように周囲に広がる。そして彼はアスロとの間合いを詰めていく。

 短刀というよりも忍者刀と言ったほうがよい長さのその刀身は、大人の指先から肘くらいである。その刀にはリーチは求めない。攻撃のスピードを高めるために、限界まで風の抵抗を受け流す造りでできているようだ。


「妖刀バグラム……それがこの短刀の名だ」


 妖刀とは、その名の通り、妖しい邪気を放っている刀のことであり、「バグラム」もその一つである。この刀には、この刀を使い、かつて最弱とされていた騎士が、自らを罵っていたほかの騎士への恨みを込め王を殺した。という伝説がある。その詳細はもう少し長いが、その最弱の騎士の悲しき怨念が、使い手の闇魔法を強化する力を宿している。

 

「そんなに戦いたいならやってやるぞ。俺も疼いているんだ」


 わずかにほほ笑むと、ギブロアは妖刀を左手に持ち駆け出していく。黒い床の上を白い服のものが走る光景は目に痛い。アスロは閃光を見るような現象を受けると、右に高速移動する。その移動する体制でギブロアが来るであろう位置に黒刀を振る。火花が走り、灼熱の剣閃が放たれた。

 この時、アスロにはそれなりの手ごたえはあった。おそらくかわすだろう予想はしていたが、かわした場所を追撃し、確実にヒットさせると読んでいた。しかし、黒刀を振るったアスロが見た先には、黒い床しかなかった。

 先ほどまで駆け出していたギブロアは消え去り、何もない。


「ったく。甘めぇんだよ」


 そう声が聞こえた瞬間、振るった直後の体勢のアスロの背に、重い蹴りが放たれた。不意打ちではないが直撃なのでダメージはそれなりに喰らってしまう。それに追い打ちをかけるように、刀を水平に振りかぶると、その状態のまま一閃。

 アスロは超人的反応で灼熱の翼を動かし、ギブロアの放った闇の一閃にぶつけた。激しい音が交錯し、両者僅かに下がる。アスロは何とか防いだと思ったが、


「こ、これは……」


 今までどんな攻撃も受け流してきていた灼熱の翼の右翼に、横に斬撃の痕がくっきりと残されている。傷口からはバチッ、バチッと、黒い稲妻が噴き出していた。右翼だけぐったりと下がっているこの状態はバランスが悪い。まだ一度しか斬りあっていないのにもかかわらず、形勢はアスロが不利になった。


「この刀は斬るものを拒絶し、引き裂く。当たったら死ぬぜ?」


 傷を受けたアスロを見て、ギブロアの笑みは増大していく。勝負を楽しむような表情は、整った顔立ちに不気味にもあっていた。刀の剣先を向け、攻撃を予告する。


「すべてかわせばいいんだろ……?もう当てさせはしない」


 ギブロアの余裕に対抗するようにアスロも言った。これは強がりなのか、それとも勝算があるのか。アスロはまだ黒き雷が迸っている右翼を強引に広げ、炎を強めた。部屋全体に熱風が吹き付ける。


「上等だ!死合いと行こうやァ!!」


 今度はギブロアが先手を取り、突きあげを放とうと突撃する。まだ彼の魔法をつかめていないアスロは、刀から目を離さないよう慎重になりながら、翼で炎の刃の波を放つ。これは、炎魔法の定番中の定番、刃の如き熱風で相手を切り裂く《ファイヤーストーム》である。

 ギブロアはこれを無駄のない動きで的確にかわしていき、通常左利きならば左からのほうが攻めやすいのだが、あえて彼は右から攻めていった。刀を右側の首の後ろへと持っていき、振り下ろす態勢に入る。


「十七の剣技とやらを見せてみろ!!!」


刹那、言葉を言ったギブロアがアスロの視界から消え、彼が瞬きをする瞬間に再び現れた。ギリギリの間合いにつめやられたアスロは何とか反応し黒刀で受け止め、今度は薙ぎ払う。黒刀に邪気の怨念を感じつつも、チャンスを逃さず追撃を放つ。


「望み通り見せてやるよ。死にたいらしいな」


 斜めに構えながらアスロは黒刀に炎をまとっていく。今度は通常の橙に赤が混ざった色である。右足で強く地面を蹴り、翼の風力も合わせ舞い上がったアスロは、刀を振りかぶり静かに唱えた。


「火炎刀:烈火」


 今までで最大の大きさの灼熱をその刀に纏わせ、十メートル近くまで大きくなっている。刀を地面と平行にしているので、振り下ろし時に天井を切り裂くほどである。業火は刃の形を象っており、辺りも薄い炎の渦に包まれていた。その熱気と燃える音に圧倒され、ギブロアにも緊張が走る。このリーチでは、いかに早くともかわせない。ましてやアスロの構えは上段。剣道で言えば最長のリーチで最速の太刀である。そしてこの攻撃力。妖刀といえども防ぎようもない。


「おおおおおおお!!!!!」


 アスロは、全力を込め、巨大な灼熱と化した刃を振り下ろした。天井を切り裂いていく音、渦巻く焔の音、地響きの音などが交錯していく。超速で天井を切り裂き、ギブロアへと一直線に振り下ろされていく。アスロは、うろたえているギブロアの表情は目にしたが、直撃する直前、かすかに笑ったことを見逃していた。


──────策にはまったな……O()V()E()R()-D()R()I()V()E()!!










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