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第45話 三回戦、試合前

 三回戦当日。


 東鶴間高校野球部の一同は、すでに大会会場に到着していた。

 朝の空気は澄んでいるが、胸の奥には落ち着かない熱がある。


 そんな彼らの視界の先に、ひとつの集団が現れた。


 東林高校野球部。


 昨年ベスト8の強豪校――

 その名に違わぬ、整った足取りと、余裕のある表情。


 彼らは、東鶴間野球部の存在をほとんど意識することもなく、

 淡々と会場へ入っていった。


「……すごいな」


 誰かが、思わず呟く。


 無理もなかった。

 片や全国を狙う強豪、片や万年一回戦負けの弱小校。

 この試合は、誰の目にも“結果が見えている”ように映っていた。


 やがて、東鶴間野球部もベンチへと入る。


 その空気を切り裂くように、監督の九条咲が口を開いた。


「ついに、この日が来たな」


 静かな声だったが、不思議とよく通った。


「相手は、私たちを弱小校だと思っている。

 ――勝機は、そこにある」


 選手たちの視線が、自然と監督に集まる。


「天宮、高橋。

 この試合は、お前たちのバッテリーが鍵だ」


 高橋雪夜と天宮真十郎が、同時に小さく頷いた。


「守りで流れを作る。

 あとは、お前たちの打線がどれだけ点を取れるかだ」


 九条は、ゆっくりと一人ひとりの顔を見渡す。


「ここまでやってきた練習の日々は、嘘をつかない。

 自分たちの野球を、相手に見せてこい」


 一瞬の静寂のあと、ベンチの空気が変わった。


 恐怖ではない。

 逃げ腰でもない。


 ――やってやろう。


 そんな無言の意志が、選手たちの胸に宿っていく。


 強豪と弱小。


 その差は、確かに存在する。


 それでも。


 この一戦に限って言えば、

 同じグラウンドに立つ以上、条件は等しい。


 そして今――

 三回戦の幕が、静かに上がろうとしていた。

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