無礼講
肉の焼けた良いにおいがする。陽気な笑い声と歌声、そして熱気。僕の一番嫌いなものだ。
僕は下級貴族の執事の家庭に生まれた。幼いころから主人に仕えるため、私塾に通い儀礼と兵学を習った。
生徒たちもみな真面目で礼儀正しく、無礼講というものとは縁がなかった。
都では、まず主人が祝辞を述べ乾杯し、皿に少しばかりの料理が配られ、みな一口ほどそれを食べてそこから前菜が配られる。といったような感じが普通だった。
前線は違う。いきなり、よくわからないおじさん(こちらでは豪傑というらしい)が大声ではしゃぎまわる。
そして上官が苦笑いしつつ嫌味を言って宴会が始まる。という感じだ。話にならない。
しかしこれで宴会は20回目くらいだ。この前線基地は今日も平和だ。
「くはははは。しけた顔をするな坊ちゃん」
ベテラン兵のバイツが話しかけてきた。僕はこれでも幕僚ですよ。と答える。
「くせぇこと言うな坊ちゃん。もう少し隊に馴染んだらどうだ。何かあった時では遅いぞ」
ありがたいが正直いらないお世話な気もする。ここは真面目に答えよう。
「何かなんてありませんよ。われらが城寧軍の大将は名将リュケ・トウゲンですから」
名将リュケ・トウゲン。数々の勝利に彩られた救国の英雄である。
「へっつまんねえ。リュケがなんだ。あいつが来てから本当につまらん」




