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【7】 【女学生 スティ】


【7】

【女学生 スティ】


「好きだ。俺と付き合え」


 放課後の校舎裏、スティはとある男子から告白を受けていた。

 本来ならばドキドキするような青春の一ページなのだろうが、今回に限っては違っていた。少なくともスティにとってはだが。


 告白してきた男子はルックスが良く、クラスカーストのみならず学年カーストでも上位の学生だった。しかし良いのはルックスだけであり、いわゆるチャラ男と呼ばれる部類の男子だった。

 その男子に言い寄られた女子は数知れず、また捨てられた女子もその数と同じくらいいた。その男子は良いと思った女子を自分の物にするためならあらゆることをして、そして飽きたら捨てるのだった。


「……申し訳ありませんが、ご遠慮させていただきます」

「はあ⁉」

「あなたのうわさはよく存じていますので。飽きたら捨てられるような、都合の良い女にはなりたくありませんから」


 背を向けて立ち去るスティに、男子はおい待てよ!と怒鳴るが、スティは止まることはなかった。もう話すことなどないし、スティには急用が出来たのだ。あんな人間なんかに構っている暇はなかった。


「……クソがッ! 覚えてやがれ!」


 スティのことを睨み付ける男子。スティが自分の物にならないのなら、いままで断ってきた数少ない女と同じ目に遭わせるだけだった。

 ――翌日。スティが学園に登校したとき、スティのクラスに大勢の学生が押し寄せていた。スティのクラスメイトだけでなく、他のクラスの学生もいた。


 彼らの視線は一つの場所に注がれていた。それは教室の後部であり、各学生に割り当てられた小さなロッカーが並んでいる。そのなかの一つ、スティのロッカーの前にいるモノをみんなは見ていた。

 そのモノは魔法具のロープでグルグルに縛られた、昨日の放課後の男子だった。口にも猿ぐつわとしてのロープが巻かれ、昨日の放課後からいままでずっとそうしていたからだろう、男子の下半身は汚れていて異臭を放っていた。


「んー⁉ んー⁉」


 声にならない叫び声を漏らしている男子の近くには、魔法具の水晶が転がっていた。その水晶は空中に一つの四角いウィンドウを浮かび上がらせており、彼がスティのロッカーに近付いていく光景を映し出していた。


『クソがッ、あの女、絶対に後悔させてやる! あの女のロッカーの中身を屋上からぶちまけて、それと弱味になるようなものがあったら脅迫してやる!』


 加えて男子は聞くに堪えない罵詈雑言や、うら若き少年少女が聞いたら吐き気を催して卒倒しそうな規制用語を言いながら、スティのロッカーを開けようとしていた。そしてスティのロッカーに触れた瞬間に、目にも止まらぬスピードで現れたロープによって、いまの状態へとなっていたのだ。

 水晶はそれらの光景を延々と繰り返し映し続けていた。


 ――その後。その男子はいつの間にか学園から姿を消していた。どこか遠くの異国の学園に転校したとか、あるいは家の自室に引き籠もって惨めな余生を過ごしているとか、もしくはどこか人知れない場所で自殺死体として見つかったとか……様々な噂が流れたが、スティにはもうどうでもよいことだった。


「でも、良かったね、スティ。なにかされる前に誰かがああしてくれて。あの人、色んな人から恨み買ってたから、誰がやったのかは分からないみたいだけど」

「ロッカーは別の場所のものに代えてもらったけどね。清掃の人が綺麗にしたとはいえ、あそこのを使いたい気分じゃなかったから」

「それはクラスのみんながそうだったけどね。スティだけじゃなくて、結局みんな代えてもらったし」

「ある意味、呪いかもね。今後、あそこのロッカーを使う人はいなくなりそう」


 スティの言葉は予言となった。以降、そのロッカーを使う者は誰一人としていなく、いつしかロッカーも撤去されて、その教室は他の教室よりも広く感じられるようになっていた。


「でも、いったい誰がああしたのかな?」

「……さあね」


 スティにはもう興味がないことだった。




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