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【12】 【女騎士 ラヴィ】


【12】

【女騎士 ラヴィ】


「くっ……私の負けだ。殺せ」


 女騎士のラヴィは全身ボロボロで片膝をつけていた。目の前には無傷に近い魔王が玉座に座って、肘掛けに肘をつきながら不気味に笑んでいる。


「クックックッ。ラヴィとか言ったな。殺すなど生温い。魔王であるこの俺に刃を向けた罪、死よりも恐ろしい罰であがなってもらう」

「く……何をするつもりだ⁉」

「お前には、一生、俺の奴隷となってもらう。クックックッ。殺してくれと泣いて叫ぶような地獄を見せてやる」

「……っ⁉」

「まあ死なせんがな。ハーハッハッハッ!」


 その日からラヴィの奴隷としての人生が始まった。



 朝。


「おいラヴィ! メシはまだか⁉ この俺に空腹のまま過ごせというのか⁉」

「くっ。これでいいんだろこれで!」

「おいしょっぱいぞ! 塩をかけすぎだ! ちゃんとレシピ通りに作ったんだろうな⁉」

「文句を言うなら自分で作れ!」

「奴隷の分際で俺に指図するな!」


 昼。


「おいラヴィ! いつまで洗濯しているんだ! 掃除はどうした!? もう昼だぞ!」

「くっ。お前の配下が多すぎるんだ! 洗濯だけで手一杯で、掃除まで出来るか! 城も広すぎる!」

「『お前』じゃない、魔王様と呼べ! とにかく午後には掃除を終わらせろ! それとこれはお前の餌だ、俺が手ずから作ってやったんだ、ありがたく食え!」

「なっ……これは……⁉ これほどの食材、どこから手に入れたんだ⁉」

「ハーハッハッハッ。俺は魔王だぞ! 領民から上納品を巻き上げるのは当たり前だろう!」

「……っ⁉」

「奴隷には死ぬ権利すらないのだ。さっさと食って仕事に戻れ!」

「く……っ……美味い……っ」


 夜。


「おいラヴィ! いま何時だと思ってる⁉ いつまで起きていやがるんだ⁉」

「くっ。お前が押し付けた掃除が終わらないんだ! 仕方ないだろ!」

「魔王様だ! 明日も早いんだ! さっさと明かりを消して、奴隷は奴隷らしく暑さに苦しみながら寝やがれ!」

「く……っ……ふかふかで温かい……っ」

「今日の仕事が終わらなかった罰は、後日処してやるからな!」

「うわぁっ⁉ まだいたのか⁉」



 一年後。

 おぎゃあおぎゃあ。


「よくやった。ラヴィ。これで魔族の未来も明るい」

「……最初から、これが目的だったのか?」

「さあな。何のことだ? 俺は、俺に負けた生意気な奴を奴隷にしただけに過ぎない」

「…………」

「お前は、一生、俺の奴隷なんだ。解放されたいなら、俺が死ぬかお前が死ぬことを願うんだな。まぁ許さないが」

「…………素直じゃない奴め」

「何か言ったか?」

「極悪非道のクソ魔王だと罵ったんだ」

「ハーハッハッハッ! 俺は魔王だぞ! 何をいまさら!」


 ――とあるところに、魔王と、魔王に敗北し奴隷にされた女騎士がいた。

 ――これは、その人生の物語の一ページ。




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