うちの娘たち
うちの娘たち
コネコちゃんがバリカンで肉球周りの毛を剃られている時、ネコちゃんは、
「解せぬ。」
という顔で遠くから見ている。
「あれはなんだ?
私はやられたことなど一度もない。あやつは何の罰を受けておるのだ…?」
とじっと見ている…。
コネコちゃんがうちに来たばかりの頃、ゲージ生活をしていた。
ごはんを食べる時だけ、ゲージの外であげていた。
コネコちゃんは分食するタイプらしく、ゆっくりわけわけして食べていた。
ひとしきり食べた後、ごはんの器ごとゲージに戻すと、やはり遠くから、
「解せぬ。」
という表情で、ネコちゃんはコネコちゃんを見ていた。
「なぜ、あやつはブタ箱にぶちこまれておるのだ…。」
とでも言わんばかりに、見ていた。
匂い交換やら顔見せやら儀式を済ませて、とにかく段階を踏み、コネコちゃんはゲージから解放された…が!!
コネコちゃんは、乱暴者だった。
ネコちゃんのごはん皿を踏みつけ、ネコちゃんの水を飲み、ネコちゃんのごはんを奪った。
コネコちゃんがそのような無礼を働く度に、ネコちゃんは根気強く叱っている。
猫パンチというより、『上から下へと叩きつけるようなパンチ』を何度もコネコちゃんへかます方法を主にとっている。
「やられたらやり返す。倍返しだ。」
を、体現したかのようだ。
ふと見たら、ネコちゃんが、なぜかコネコちゃんのゲージに入っている時があった。
ごはんの1粒でも落ちてやしないかと、めちゃくちゃ探していたようだ。
ー取られた分は、必ず取り返す…。
『復讐のドッコ』並みの執念深さを感じた。
コネコちゃんは、すごくおおらかだ。
「エケチェンでちゅ〜!
何にもわかりまちぇ〜ん!」
という天真爛漫な子だ。
うちに来た初日からヘソ天でグーグー寝るような、ガチで肝の座った子である。
現在も、エケチェンゆえに無謀にも先輩猫であるネコちゃんに飛びかかっていっては、一瞬で儚く散っている。
勝負は始まる前から分かっている。
7歳のネコちゃんが猛烈上下パンチを、4ヶ月齢のコネコちゃんにぶちかまして終わる。
パンチが来る前、何なら飛びかかった零点一秒後に、もうコネコちゃんはお腹を見せて降参ポーズに入っている。
「あっ、パイセン! いたんでちゅか? しゅみまちぇ〜ん!えへへ!」
ときゅるんきゅるんである。
最近、とうとうそのパイセンのベッドまで横取りし出した。
コネコちゃん用のベッドもちゃんと買ってあるのに、なぜか、パイセンベッドで寝る。
今日、たまたま目撃してしまったのだが…
ホットカーペットであったまったネコちゃんは、ネムネムしたくて、自分の猫ベッドに向かった…。
ベッドでコネコちゃんはヘソ天ポーズを取っていた。きゅるん! とクネクネし出した。
いかにも、
「パイセン、使いまちゅ?
今、わたちが使ってるんでちゅけども〜??」
という風であった。
うちのネコちゃんは優しい。
「……フンッッッ!」
と鼻を鳴らした後、またホットカーペットへ戻っていった…。
双方、程よい距離感で慣れてきている。
コネコちゃんの無礼さはものすごいが、人間によるネコちゃんへのアフターケアと、何よりネコちゃん自身の性格の穏やかさで、バランスが取れている感じだ。
もともと、うちのネコちゃんは、この世に猫は自分しかおらぬと思っているふしがあった。
幼い時から気高く気品に溢れ、優雅だった。
「甘噛みなど知らぬ。」
とばかりに、常に本気で噛んできた。
何でも一発で覚え、めちゃくちゃ賢く、しかも運動神経も良かった。
ありえない高さ跳ぶ。壁を二段ジャンプで垂直に駆け上がったこともある。
跳んで着地に失敗したことは無い。
コネコちゃんは…
たぶん、すっごい運動神経が悪い。
ジャンプ→翻る→腰から落ちる、を素でやる。
骨折が怖いので、ジャンプさせられないレベルである。
性格はガチでめちゃくちゃ天真爛漫きゅるんきゅるん女子。
同じ猫なのにこうも違うのかと毎日驚いているが、最もびっくりしているのは、コネコちゃんが夫を大好きなことである。
私の夫は、ネコちゃんに嫌われているのに、コネコちゃんには本当に好かれている。
ネコちゃんを育てた7年間で、子猫から好かれる術を彼は身につけていたらしい。
夫の帰りは、私、ネコちゃん、コネコちゃんの3人で玄関に座って待っている。
夫がごはんを食べている間、コネコちゃんはず〜っと夫のそばにいる。
お風呂から上がるまでウトウトしながらも待ってる。
夫が寝る時になって、お布団に来る。
夫に触られるのもだっこもだ〜い好き。
でも、その夫いわく、
「コネコちゃんがこの家のなかで一番好きなのは、ネコだと思う。
だって、ずっと追いかけてるもん。」
ーんんん、確かに…!
コネコちゃんは、ネコちゃんを愛している。
何でもネコちゃんの真似をしようとするし、ネコちゃんのそばにいたがる。
物理的に追い回してるんじゃなくて、『恋してる追いかけ感』がある。
コネコちゃんは、メタメタの同衾女子だ。
私と寝たがる…が、ネコちゃんも同衾女子のため、私は今、2匹と寝ている。
左にネコちゃん、右にコネコちゃん。
ダブルベッドで本当に良かった。
毎晩Happyである。
猫が2匹になったら、どうなるんだろうと心配したこともあったが、幸せが倍になっただけであった。
猫同士の相性が悪いと血みどろの戦いだと聞いたことがあり、ビビっていた。
でも、うちの場合は、テーブルの上でコネコちゃんがのびのび寝てる時、真下のホットカーペットではネコちゃんがのびのび寝ている。
とりあえず、コネコちゃんがうちに来てから今日までで、同じ空間で、2匹がリラックス出来る仲になった。
血みどろは避けられたと思いたい。
めっちゃ面白いことが最後にある。
コネコちゃんは分食タイプなので、1時間後くらいにまた残したごはんを持って行ってあげる。
すると、コネコちゃんの真横にネコちゃんが来て、
「解せぬ。」
という顔をすることである。
私「いや、これはコネコちゃんが朝ごはん残したやつだからね? ネコちゃんは、全部一気に食べちゃったでしょ?」
ネ『解せぬ。』
私「(笑)」
永遠に理解してもらえそうにないが、本当に、何度もたくさんごはんあげてるわけじゃないんだよ〜(笑)
コネコちゃんは、あっという間に1.5キロになった。
2匹とも、怪我も病気もなく、すくすく成長している。
本当に、本当に、毎日幸せだ。