2-41 ルビリア・パルという誤算
ゴーレムTYPE-A-14【平均評価4.2】
ヤタ重工宣伝部です!
今回ご紹介するのは陸戦型ゴーレムTYPE-Aシリーズ最新作、14(ワンフォー)です!
これまでオプションとしてご案内してきた自立行動型AIシステムを製品パッケージに内蔵し、煩雑な接続とシステムの整備が不要になります!
また、農作業、家事、警備の人気行動パターンを収録しており、納品後すぐに稼働させることが可能です!
勿論、軍事用オプションも多数ご用意しております!
龍閃の2番『惑龍閃』。
それは指定範囲に無数の魔力光線を雨のように浴びせるものだ。
真っ直ぐ放つことも可能で、散弾銃のように大量の光線が一斉に放たれる。
その光線が目的もなく、彷徨うように飛んでいく様から名付けられた。
また、あらかじめターゲットを設定しておけばそこへ攻撃を行うこともできる。
それは単一の目標に全てをぶつけることもできれば、設定した複数の目標だけを選別して破壊することもできる。
今の彼女には大地の龍の力で地面に接している存在を知覚できる。
当然、彼女にとってこの惑龍閃を使用するとなれば、地上にいる標的を事前の準備なく、破壊することが可能になる。
刃の国の戦車群を前に、惑龍閃の魔法陣を殴りつけたパル。
そこから勢いよく発射された光線は上空へと伸びていく。
『賭けるか?』
そして、雨のように光線が一気に降り注いだ。
「なら、オレは0だ。」
『強気だな。じゃあこっちは3だ。』
この賭けはいくつ生き残るか予想するものだ。
過去、同じような状況で同様の賭けをしていた。
勝敗は五分五分。
戦場での賭け事にカインは軽蔑の視線を送る。
光線の威力はパルの使用していたショットガンのそれをはるかに上回る威力を発揮する。
降りしきるそれは一撃で上部装甲に防御されている魔力炉を貫く。
カインは目を見張る。
一人の人間がここまでの力を持つのか。
そして、彼女がこれまでこれを使っていなかった理由も理解できた。
火力が高すぎる。
周囲の地形の破壊、効果確認までに時間がかかるレベルの土煙。
賭けに興じる余裕もわからなくない。
せわしなく動き回るはずの戦場でこれだけの暇ができることが異常なのだ。
「引き分けだな。」
土煙の中から放たれた弓を片足を引いてかわしながらパルはつぶやく。
「馬鹿が釣れたぜ。おい。」
パルは笑いながら矢を放った本人を指さす。
「再開の挨拶にしては最悪だな『ドラゴン』…」
エルシィは苦々しい顔で答える。
「無人兵器は御覧の通り全滅だ!だが、制圧部隊とお前たちを合流させるわけにはいかん…!」
エルシィは目に力強い光を放つ。
「なめられたものだ。2人相手に単独で足止めとは。それだけの力があるとも思えん。」
カインの言葉をパルは鼻で笑う。
「そうさ。『こいつは』アホだ。だが、こいつの上にいるあの野郎が問題なんだよ。」
「幸運など非論理的だ。」
「神が論文書かないならそうかもな。ただ、この状況をお前は論理で説明できんのか?」
パルの言葉に答えるように5人の人影が薄くなった土煙から姿を表す。
時はわずかにさかのぼる。
増援として駆け付けたグディの消滅。
そしてパルと龍閃の2番という誤算。
綱渡りのような作戦をなんとか通し、ようやく掴んだはずの蜘蛛の糸。
それを喰い破ったのはあやとりのように複雑な蜘蛛の糸で縛り付けたはずの龍だった。
誤算というにはあまりに残酷で、現実というにはあまりに突飛だった。
「義によって…なんて柄じゃないですけど、このままあんたを死なすわけにはいかんでしょ。」
指令室である議場でしかめっ面をしていたジェスはその声に振り返る。
「いいのかい?筆頭ちゃんを守るように首領に言われていたはずだぁ。」
編み笠を目深にかぶった男は笑う。
「それはそうです!でも、ぼくらはもう見殺しにはしたくないんです!」
その言葉に後ろからぞろぞろと編み笠と特徴的な服装をした男たちが入ってくる。
「カラス、キリス、クリスもだ。首領だけではない。これ以上の犠牲は剣王会の威信にかかわる。」
「筆頭ちゃんはなんて?」
剣王会を束ねるカヨ。
ここにそろった5人の剣王会の戦士に対し、ジェスは彼女の意思を確認する。
「筆頭はここに来れないことを悔いていました。あの人はパーシヴァル・プルトの近くで今後の準備を進めています。ここに来たのはあくまでも剣王会の意思です。」
ジェスは視線を外す。
この負け戦に彼らの力が加わっても勝利することはできない。
しかし、少しでも今後に繋がるのなら。
それが筆頭である彼女の助けになるならば。
そうした思いでここに来ている。
「我が屍は礎に。魂は心に。か…君たちには頭が上がらないよお。」
ジェスはつい一年ほど前まで剣王会を率いていた首領の言葉を思い出し、つぶやく。
その言葉に、5人の戦士も笑う。
「悪いけど、我々に付き合ってもらうねえ…ただ、逃げていいからねえ。」
ジェスの言葉に頷き答えると彼らは戦場へ向かった。
そして時は戻る。
「風の国剣王会の名のもとに。」
5人はそういって傘を脱ぐ。
「風羅のガイ。」
「毒撃のダンっ!」
「居合のザイチ…」
「幻想のドラです!」
「鉈のヤナギよ♡」
パルは思わず舌打ちする。
まだ、制圧部隊の脅威となる戦車やゴーレムうち、温存されていたものがまだ残っている。
できれば当初の予定通り制圧部隊と合流したい。
このままでは制圧部隊への損害は大きくなるだけでなく、今回の作戦で消費されるであろう刃の国の戦力がトラ教団に合流してしまう。
それがどれほどの脅威になるかはわからない。
だが、元々、敵の総戦力が見えていないだけにこれ以上の戦力増加は避けたい。
「剣聖よお、なんかまじないがあるなら、10クレジットやるからだしていいぜ。」
「お前こそ、先ほどのような魔法があるのならやってみるがいい。」
見たりは横目で視線と言葉を交わす。
この状況を突破できるような何か。
1対1なら余裕だろう。
ただ、この人数差で時間稼ぎされれば突破は容易ではない。
クソ。パルはつぶやき、懐からアギトを引き抜く。
カインも小さく息を吐き、剣を構える。
「ちょっと待てよ。アタシらも混ぜろや。お姉さんはリンチなんて許さんぜ?」
声の主はオルカだ。
「トータス!現着した。久々の戦場、楽しませてもらう!」
サーベルタイガーのママは通信機に吠える。
「先輩!助太刀します!」
バイソンが、勢いよくパルの前に飛び出した。
「幸運ってのはあいつだけじゃないらしい。」
パルは口角をあげる。
カインも同意するように頷く。
一堂に会する5人と5人。
全員が敗北など考えていない自信に満ちた顔だ。
狂気すら感じさせるほどに。
それぞれ、目の前の相手を見定めると、散開する。
残ったガイとパル。
パルは煙草に火をつける。
「貧乏くじだな?お前。」
「そうだな。実力を教団の連中に見せられんという意味では最悪の相手だ。」
ガイは鼻で笑うようにして返す。
「そいつは大変だな。」
パルは煙を吐きながら肩をすくめる。
そして、視線をガイから外したまま火のついたタバコを投げる。
虚を突かれるガイ。
パルは懐からアギトを引き抜き照準を合わせ、引き金を引こうとした段階で違和感に気づく。
煙草が口元に戻っている。
「ゆっくり吸えよ。煙草だってタダじゃない。」
挑発に乗ってしまったパルはちぎれそうなほど吸い口を噛む。
「上等だおい!てめえ楽には殺さねえぞ!おい!」
「チンピラかよ?よくないなあ、保護者の方へ連絡すべきだな。」
ガイはさらに煽る。
ついに、パルの煙草は噛みちぎれた。
機関銃のように乱射された弾丸はガイには届かない。
まるで守護霊のように彼の周りを周回する弾丸。
パルが呆気にとられていると、弾丸は彼女目掛けてかえってくる。
「んだと…!」
パルは身をかがめて回避する。
後方から土煙が彼女を隠す。
ガイは目を閉じると、反転する。
「風はごまかせないぜ?」
刀を抜き、パルの蹴りを防ぐ。
だが、パルは刀を蹴って宙返りしながらナイフを投げつける。
「無駄なことを。」
ガイの周りに立ち込める風がナイフを受け止め、彼の周りを周回しようとする。
「馬鹿の一つ覚えなんだよ。てめえの曲芸は。」
パルの目が怪しく光ると、ガイの周りを周回していたナイフが一斉に爆発する。
爆発に巻き込まれたガイは、出血の激しい左腕を抑える。
「あーあー…痛そーだなぁ?煙草みてえな軽いもんならすぐ返せたが、弾丸の勢いをいっぺん殺さねえと返せねえ。それはつまり、お前の曲芸は実戦で使えるレベルにねえってことだ。」
パルは煽り返す。
ガイは忌々しくにらみ返すしかない。
パルの推測は的を射ている。
手品同然の技、かつて自分を下した老年の剣客にもそういわれたことを思い出す。
「ヤマギの人間以外にこれほどの使い手がいたとはな…」
ガイはふらつく足で何とか立ち上がる。
「ヤマギだあ?わりいがあんな骨董集団よりオレのほうが強ええからな?」
実力差を悟ったガイは最後の攻撃に出る。
風がだんだんとガイを包み、形を成す。
巨大な剣を思わせるそれはだんだんと巨大になる。
「いくぜ…超螺旋剣!」
ガイの手から放たれた風の固まりをパルは回避しない。
煙草に火をつけ、右手を突き出す。
「龍閃の7番縮退龍砲。」
パルの背中から再び片翼が出現すると同時に小指ほどのサイズの龍が放たれる。
小型の龍と風の大剣がぶつかる。
ガイは咄嗟に身を守った。
だが、彼の予想したような衝撃はこない。
恐る恐る顔を上げると、そこには小さな龍がいるだけだった。
吸収したのか。
ガイは現実を理解できなかった。
超螺旋剣は限界まで圧縮した風の魔力を相手にぶつけ、炸裂させる技だ。
それをあの小さな使い魔が吸収して見せたという事実は到底、信じられるものではなかった。
龍とガイの目が合うと、慌てた様子で龍は空へ飛び上がり爆発した。
吸収した力を解放したのだろう。
無論。ガイに魔力は残っていない。
刀を握ることもできない。
パルはそんな彼を見逃すほど甘くなかった。
「さて、お前は楽には殺さんと言った。どうすっかねえ?」
パルはアギトを引き抜くとガイの膝を打つ。
膝からこみ上げてくるような激痛に思わず声が出る。
パルは膝に開けた穴を踏みつけ、炸裂ナイフを両肩に突き刺す。
よく見ると両端はワイヤーで繋がれている。
「おっと、気をつけろよ?ワイヤーに一定以上の負荷がかかると爆発するぜ?」
ガイの体は凍りついたように動けなくなった。
彼女の言葉通り、ナイフが爆発すれば死は避けられない。
そして、彼女は今、自分の傷口を踏みつけている。
「ま!大人しくしとけって話だ。ただ痛ぶるのは趣味じゃねえ。」
そう言ってパルは背を向ける。
予想外ではあった。
しかし、恥辱に耐えられるはずもない。
舐めるな。
我が屍は礎に。
我が魂は心に。
ガイは心でそう唱えると、起き上がり、片足でなんとかパルに飛びかかる。
死なば諸共。
だが、パルは意外にも彼を抱きしめた。
耳元で甘美とも言える囁き声がする。
「馬鹿だなぁ…お前は。あの距離で爆発に巻き込まれかねないようなこと、オレがすると思うか?」
ガイが彼女の意図に気づく。
楽には殺さない。
肩に刺さったナイフはより深く食い込み、腕を殺した。
右膝は夥しい量の出血。
残った左膝も笑うばかりだ。
耳に嫌な破裂音のようなものが響く。
パルと目が合う。
閃光が走っている。
身体強化魔法だ。
ガイが全てを理解した瞬間、その答え合わせと言わんばかりに背骨と肋骨が悲鳴を上げる。
「は…離せ!離せぇぇ!」
ガイの絞り出すような悲鳴は彼女には届かない。
「楽には殺さねえ。」
枯れ枝の束を踏みつけたような嫌な音が体の奥から響く。
「じゃあなあ。貧乏くじ。」
最後に響いた音をガイが聞くことはなかった。
次回は水曜日。
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