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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

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2-27 血脈

ダグラム・プルト【個人情報】

天の国近郊の農村ジユウの村に住む農夫。

学生時代は親友のジェイン共にナンパの成功率向上のために心理学を専攻する。

港の国出身のブリア・エメラルダを娶り、1人娘となるアイーシャを設ける。

季節に応じ野菜を栽培し、主に天の国に卸していた。

だが、農作物の価格が低迷していく原因は政治にあると感じ、政治組織『レギオン』の会員となる。

ジユウの村焼き討ち事件の際に妻子とともに死亡した。


龍の国、王城では、女王のレイアと補佐役とも言えるトータスが、相談役のレイモンド、陸軍総括のパルと対峙するように座っている。

「重要な話、聞かせてもらおう。」

話題を振ったのはトータスだ。

彼もまた、パルと父親の関係について知っている人物の1人だ。

「まず、姫は『レギオンの遺産』についてどうお考えですか?」

パルの問いかけにレイアは少し考えてから返す。

「複雑な利権の塊。という印象ですね。あれに関しては誰も彼も無関係とは言い切れない。私を含め。」

政治家の汚職をまとめた『レギオンの遺産』。

その毒牙は就任して1年ほどかつ、先月14歳になったばかりのレイアさえ逃れられない。

レイア本人ではなく、彼女の血筋。

龍の国の国王を歴任してきたドラゴの家系がそれに該当するだろうが、内容によってはレイアの立場を揺るがしかねない。

「つまり、姫はあれを廃棄したいと?」

パルの言葉はある意味で当たっていたが、レイアの考えは少し異なっていた。

「おおよそはそうなります。しかし、私はあれを破壊したり、廃棄してそれで解決するとも思っていません。バックアップ。或いは別系統での管理。つまり、教団のもつ『遺産』が『遺産』の全てだと思っていません。そういった意味では廃棄や破棄はあまり意味のないものと考えます。」

レイアの言葉は正鵠を射ている。

遺産が1つとは限らない。

あくまでも判明している遺産の持ち主がトラ教団の長、パーシヴァル・プルトでしかないということだ。

「それは僕も同意します。ただ、今回の話はパーシヴァル・プルトの持つ遺産についてなんです。」

レイモンドの補足にトータスが口を挟む。

「なんでだ?プルトの持つ遺産に特別な意味があるような言い方だな?」

レイモンドは思わず、舌打ちしてしまう。

一番、聞かれたくない部分。

できれば伏せておきたい事実を突くような問いだったからだ。

それも、よりによってその事実を知るトータスから出たのにイラついてしまった。

「そうカリカリすんな。えーっと…?トータスの話だが、要はパーシヴァル・プルトをどうするつもりかってことなんですよ。」

パルの言葉に、この場で唯一、プルトとパルの関係を知らないレイアは小首をかしげる。

トータスは、しまった。というように苦笑いする。

「プルトですか?正直そこまで考えてはいません。遺産が複数存在するかもしれない現状、そこの情報が欲しいという意味では確保が無難な気もします。ただ、私としては…」

そこまで言って、レイアは押し黙る。

彼女からすればトラ教団は母を暗殺した存在。

立場上、私的な復讐を控える意味で抑え込んでいた言葉をここでも抑えた。

パルもそれは承知している。

「貴女にとってプルトは何ですか?復讐の相手…ではなさそうですね…」

「なんというか。確保してほしいって話なんで姫が確保するように考えているならオレは文句ないと言えばないんですよね…」

レイアとパルは遠慮しあう。

普段なら口を挟み事実を暴露するであろうレイモンドが黙っている。

それはこの2人が決めるべき結論に口を挟みたくないという意思表示だ。

その一方でお互いが腹を明かさねば進むものではない。

「お互い、腹を割らにゃいかんでしょうぜ。」

トータスもそこは一致していたようで、2人に意見を促す。

「姫…オレのルビリア・パルって名前が本名じゃないってのは知ってますよね。」

口を開いたのはパルだった。

戦災孤児であった彼女は龍の国での改造を経て『ドラゴン』のコードネームを与えられた。

そして、『白の部隊』という先王ドラゴ・フレイル直属の部隊となる際に『ルビリア・パル』という名を名乗るようになった。

『ルビリア』は彼女を妹と認め、面倒を見たルビリア・アリアンアから。

『パル』はフレイルがパルの銀髪から真珠パールを連想したことにそれぞれ由来する。

そこまではレイアも知っていた。

だが、パルの本名というのはレイア自身、初めての話題だった。

パルは続ける。

「オレも最近まで忘れてましたが、オレの本名は『ダグラム・アイーシャ』といいます。天の国の出身で、住んでた村がなくなって孤児になったって訳です。そし、問題はオレの父親なんです…」

そこまで言ってパルは言い淀む。

言葉を選ばざるを得ない。

個人的な意思ではある。

問題は進言する相手が、父への復讐心を持つレイアであるということだった。

「パル…ダグラムという名前。私も聞き覚えがあります。貴女の過去もおおよそ予想がつきました。教えてください。私は貴女の言葉で聞きたい。」

うつむいていたパルは顔を上げる。

目の前に見えるレイアの瞳は悲痛さや同情を感じさせるものではない。

覚悟を決めた力強い目をしていた。

「多分、姫の予想通りです。オレの父親は『ダグラム・プルト』。どういう訳か、今、『パーシヴァル・プルト』としてトラ教団のトップに座り、フレイル陛下を殺した…」

「血が罪を持つことはありません。それに、貴女にとって、どういう立ち位置であれ父親が殺されるような結末…最前線に立つ貴女が殺すような結末を望まないのは私も同じです。」

パルは呆れられるのかと思っていた。

或いは聞かなかったことにされるのかもしれない。と。

だが、レイアは彼女の思う以上に慈悲深く、やさしさを持っていた。

レイアは笑顔を見せる。

それは誰が見ても作られたものではない。

年相応の嬉し気なものだ。

「私、ハウンドに言いましたよね。『親子が揃っているのに会わないなんてひどい』って。それは貴女も同じこと。それに、私では家族の代わりにはなれない。それは多分、皆、思っていたでしょう。そんな貴女の家族がいるのなら、私としては殺すなんて結末はいやですよ。」

パルの頬に涙が伝った。

レイアの言葉が、それほどまでに彼女の心を震えさせたのだった。

レイモンドとの話で残ったしこりの正体は、レイアだった。

その彼女からの許しこそ、パルが本当に求めていたものだった。

パルは深く頭を下げる。

「本当にありがとうございます…オレのわがままを聞いてくれて。」

彼女の言葉にレイアは頷くだけだったが、それ以上は必要なかった。


王城でレイアへの進言を終え、オフィスに戻ったパルの元へハウンドがやってきた。

「トータスから呼び出されたんだが…イタズラか?」

「昇進したんだ。上司に対する言葉遣いってもんをわきまえろよ?」

その報告を聞いたハウンドの表情は、彼女が昨日、昇進の通知を受けたときと同じ驚愕と呆気にとられたそれだ。

「冗談でも何でもねえぞ。お前に渡すもんがある。」

そう言ってパルは引き出しから封筒を取り出す。

トータスから引き継がれたそれは、ハウンドへの減給通知だ。

ハウンドは呆気にとられたまま、封筒を受け取り、その内容を確認する。

血の気が引いていき、目が飛び出るほどに驚く彼の姿は滑稽に映る。

「滝の国で5人殺ったよな?一応、外交問題にはなってないけど、龍の国として処罰しねえ訳に行かねえからな。6か月の減給。金は貸さんぜ?」

「パ…そ…総括?」

震える彼の声に、イタズラっぽく、うん?と返す。

「6か月も給料半分にされたら生きていけねえんだけど…?」

その真剣かつ、恐怖に満ちた言葉にまた、イタズラっぽく、だから?と返す。

「金かして?」

「やだ♡」

ハウンド渾身の頼みを即答で切って落とし、話題を変える。

「そういやセッカちゃんとはどうなった?」

「あ?あぁ。あの後、ちゃんと父親だって名乗ったよ。あれも受け入れてくれた。ようやくスタートラインって感じだ。」

パルは満足げに頷く。

「そいつは良かったよ。お互い一歩前進ってわけだ。」

「お互い?」

聞き返されたパルは笑ってごまかす。

今、普通の親子となったばかりの彼に父が敵のトップだというパルの真実を明かすのは後味が悪い。

そう思ってはいたが、進展したという意味では間違いなく、それがパルにしては珍しい失言となった。

「亜人の血の件はどうなった?獣の国に行ったんだろ?大変だったみたいだし、余裕なかったか?」

「いや、俺としては解決したと思ってる。獣の国で俺の家系の人にあってな。その人の話しじゃ、俺やセッカに起こった獣人の特徴発現は混血の亜人じゃよくあることらしい。」

ハウンドは天龍事変における天の国でのクーデター阻止の際に、自身に流れるわずかな獣人の血を覚醒させ、その力を引き出した。

そして、その反動として平時でも獣人の特徴である犬耳が常に出ていた。

彼の娘のセッカもまた、偶発的に獣の血を覚醒させたのか、彼同様に犬耳が発現している。

「要は、俺たち親子に流れる獣人の血が覚醒しているだけなんだと。戻ることはないし、更に獣人の姿に近づくわけでもないらしい。セッカも身の危険を感じて本能的に覚醒させたんだとよ。」

「そうか…ただ、偏見はあんだろ。オレにできることがありゃ遠慮なく言ってくれ。力になるぜ。」

パルの言葉にハウンドは嬉しそうに頷く。

彼からしてみれば、急に亜人になったようなものだ。

それは、これまで隠していたようにも見える。

それでも、パルをはじめとする彼の知人たちは変わらず接してくれたし、差別に対しても理解を示してくれたことが嬉しかった。

「なら、金貸してくれよ。」

パルは呆れたように笑うと、引き出しから文庫本ほどの厚さの封筒を取り出す。

「ま、治療費ってことで。返さんでいいぞ。」

投げ渡された封筒を開けたハウンドは中の札束を見て目を見開く。

「まて!いくらなんでもこんな額…」

「いいんだよ。金は無駄に持ってんだ。まあ遅い出産祝いか何かと思え。」

「にしても多すぎんだろ!お前…」

ハウンドはそこまで反論して黙る。

パルの目からは心からの祝福を感じたからだ。

「話は以上だ。オレ達は明日には出航だ。留守番頼むぜ?」

ハウンドは敬礼で答えると、踵を返し、部屋をでる。

「お前はそれでいい。普通の親子になれるんだ。だからお前はそれでいい。それを守るために戦えばいい。」

彼の背中に届かなった彼女の言葉は自分に向けたものでもあった。

自分はそういう訳にはいかない。

普通の親子にはなれない。

だから自分は違う。

だからこそ、自分は自分の思う『家族みうち』を守るために戦う。


龍の国一向が花の国への出航するまで、あと15時間。


次回は水曜日。

活動報告更新してます。


Twitter→https://twitter.com/yukks_sousaku?s=21

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