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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

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2-23 リョーマが行く…?

花の国【一般情報】

サンヨウ大陸に存在する国家。

港の国からさらに西側に存在しており、広い平原と温暖な気候から畜産や花の生産が盛ん。

内陸国のため、陸路でのアクセスになるが、観光地としても人気が高く、大書堂の調査では15年連続『結婚式を挙げたい国』の女性部門でトップを飾っている。

戦乱時には平和主義を唱え、戦時同盟を結ばなかったために国際的に孤立、一時はクーデター寸前まで行ったが、『花の騎士団』と呼ばれる国営治安組織がこれを収めている。

施政は代々王政を敷いており、現王はタック・エルマ。


トラ教団の急襲というアクシデントに見舞われた獣の国であったが、それを退けた。

今は、改めて大同盟と獣の国との会談が始まろうとしていた。

「どうやらお手を煩わせてしまったようだ。改めて紹介しよう。獣の国で内務の長をさせているセリンスロ・ヴァンとその補佐役のサイタニ・リョーマだ。」

ラーンはそう言って、戦闘の最後に乱入してきた2人の亜人を紹介する。

「セリンスロ…やと?!」

ツスルはヴァンの名前を聞くと思わずハウンドを見る。

ハウンドもまた、その名に驚き、言葉を失っていた。

「もしかしてセリンスロって名前、向こうの大陸だと悪名高かったりするの?」

ヴァンは恐る恐る口を挟む。

「あ…いえ、自分もその…セリンスロでして…」

ハウンドは申し訳なさそうに返す。

「だろうなぁ…獣人のセリンスロなんて他にいねぇしよ。」

同じ犬型の獣人ではあるが、顔がほぼ狼のそれに近いヴァンと人の顔に犬耳のついたハウンドでは外見的な差は大きい。

ヴァンは驚く面々に対し、説明を始める。

「獣の国の獣人は同じファミリーネームを別のものが持つことはない。つまり、ヴァンと君は遠縁の親戚同士ということになる。」

呆気に取られたままの大同盟組を他所にラーン王が補足する。

「セリンスロの一族は人狼の中で特に魔法の仕様に長けており、使い魔を使役するタイプだ。先ほどのハウンド殿の戦いぶりを見てもしやと思ったが、やはり血縁だったか。」

「この国に自分のルーツがあるのはわかっていました…ただ…その…え?…白狼のヴァンと言えば獣の国の最高戦力だと噂を聞いていたので…自分の血縁者がそんな偉大な方と知って…恐縮しています…?」

何か答えなくては。とハウンドはなんとか言葉を絞り出す。

「へぇ。有名なんだね。俺ってやつは。」

ヴァンは自身の知名度が予想以上に高く、嬉しそうに喉を鳴らす。

「さてヴァンよ。お前の家族の頼みだ。大同盟への協力、やってみるか?」

ラーン王はヴァンへ語りかける。

不干渉ではいられない。

その事実を目の当たりにしての心変わりと言える。

「それはつまり、国の代表者として大同盟に協力しろと?」

「待ってほしいがか!」

「待たんよ、リョーマ。大同盟への派遣は国を挙げてのこと、お前の興味を挟む余裕などない。」

ヴァンの問いに待ったをかけるリョーマだったが、ラーン王は一蹴する。

ヴァンの立ち位置は天の国におけるツスルのそれであり、戦闘能力もまた、獣の国の国内で1、2を争う実力者だ。

そんな彼であれば大同盟への協力者として十二分なものがある。

「話戻してええですか?獣の国は大同盟へ加入するいうことですか?単に教団の件に関して協力姿勢をとってもらえるいうことですか?」

ツスルの鋭い指摘にラーン王は顎に手を当て少し考えると口を開く。

「そこに関しては、あくまでも対教団における共闘体制と考えて頂きたい。いまだに差別は存在する。我らとしても其方としても亜人と純粋な人間のフラットな交流は時期尚早。教団が片付いた後、改めて段階的に進めていきたく思う。」

ラーン王の結論にヴァンを始めとする他の重役達も異論ない様子だ。

ラーン王はその沈黙を受けて続ける。

「大同盟への協力として必要に応じての軍艦及び軍人の受け入れ体制を整える。常駐してくれてもかまわん。加えて内務長のセリンスロ・ヴァンを獣の国の特使として大同盟に派遣。一時避難を含む難民の受け入れ態勢の準備。こんなところか。」

ラーン王の提案は非常にうまい落とし所だとツスルは感じた。

まず、軍艦と軍人の滞在許可。

これは獣の国が戦場になった場合だけでなく、今回のような襲撃への対応も兼ねており、獣の国も必ずしもデメリットのみを被るわけではない。

大同盟としても獣の国という土地を前線拠点に据えるという手札を得ることになるとともに、大同盟としての軍事演習や艦隊編成の場として使うことも可能だろう。

次いで、ヴァンの派遣。

言うまでもなく戦力としての協力もあるが、獣の国のNo.2の派遣となれば獣の国との協力における窓口としてこの上ない。

獣の国の空いた穴は決して小さくないが、絶対数の少ない軍隊から派遣するよりはいくばくかデメリットは小さい。

そう言う意味での妥協点としてヴァンの存在は十分なものであった。

最後に難民の受け入れ。

これは暗に逆の場合、つまり獣の国の住民が避難するような事態になれば大同盟で対応してほしいとの意図も含まれたものだ。

ツスルも無論、それを承知である。

この部分に関しては双方、持ちつ持たれつになるだろう。

ツスルはそれらを整理した上で返す。

「寛大な措置に大同盟を代表して感謝申し上げます。獣の国の難民については天の国が責任持って受け入れさして貰います。」

ラーン王は満足気に頷く。

仮に獣の国からの難民が発生した場合、大同盟として受け入れることはできるだろう。

しかし、実際にどこで受け入れるのか。となった場合、一刻を争う状況でたらい回しにされる可能性もあった。

だが、ツスルは『天の国が責任を持つ』と言った。

つまり、天の国が率先して難民の受け入れを行うと言う意味であり、更に言えば天の国にはそれだけのキャパシティを持っているとも言える。

そう言った意味を含んだ天の国の事務局長としての発言に満足したのだった。

「一個、いいですか?」

口を開いたのはヴァンだった。

「大同盟に俺が行くのはいいですけど単独なのは考え直してほしいですね。ちょうどここに気合の入ったやつもいるわけですし…?」

ヴァンの言葉にリョーマは嬉しそうに顔を上げる。

「大同盟としてはいかがか?2人も亜人を受け入れられるものなのか?」

「不可能やないですよ。基本的には天の国への賓客として扱わしてもらって、対教団がらみでは獣の国の代表及び政府の窓口としてやってもらいます。」

リョーマの目は段々と輝く。

「至れり尽くせり…だな。」

ヴァンは感心したようににやりと笑う。

ラーン王は一呼吸おいて声を張る。

「ならばこのラーンの名のもとに命ずる。セリンスロ・ヴァン!サイタニ・リョーマ!以上2名を大同盟への協力者として天の国へ派遣する。立会人は天の国事務局長!ソラウ・ツスル氏!異議のあるものは前に出よ!」

ラーンの言葉にヴァンをはじめとする獣の国の重役たちは膝まづいて意思表示する。

全会一致の異議なし。

鎖国体制を敷き、独自の文化を形成してきた獣の国が公的に代表者を派遣するという歴史的瞬間に立ち会うこととなったハウンドは、感慨深いものを感じていた。


風の国の中枢区域、通称『凪通り』。

議会制を敷く風の国における行政の事務所が集中しており、仕立てのいいスーツを着た老若男女が今日もせわしなく仕事をこなしている。

議会制の国にありがちな光景ではあるが、事実は大きく異なる。

各機関はトラ教団の傀儡同然となっており、トップをはじめ局長クラスだけでなく、室長や課長といったレベルの職員さえ、教団のために働く存在となっている。

逆に言えば、この凪通りで出世するには教団への強力が必然となっているのだ。

風の国は元来、軍事力を背景に強硬的な外交を行ってきたが、活動家組織『レギオン』そしてその後継であるトラ教団の本拠地となってしまったのが運の尽きだった。

高官は常に自身のスキャンダルの告発に怯え、レギオン解散後もそのスキャンダルと広大な人脈は遺産となって彼らを縛り続け、更に深く中枢へ。毒のように風の国という肉体を汚染していった。

そんな背景を持つこの国をカヨは訪れていた。

イーグルの言葉にわずかに心揺らいだ彼女だったが、それを振り切って龍の国から脱走。

第二世代天使リトから受けた傷はすでに癒えていたが、同行していた怪腕のジルを失った責任から自身の本拠地である剣王会に帰ることはできず、龍の国に残ることもせず、クライアントともいえるトラ教団の本拠地を当面のねぐらに選んだ。

凪通りの奥の行き止まり、そこから裏通りへ入り、進んでいくと顔を出す古城。

聞くところによると100年ほど前に存在した風の国の前身、烈王朝の遺物だという。

栄華を極めた1つの文明ではあったのだろうが、現在はパブリック・エネミーと言われるトラ教団の本拠地として整備、運用されている。

古城に入ると、教団の案内役が彼女の元に駆け寄り、来客用の個室に案内された。

(私は…どうすればいいのだろうか。)

故郷である刃の国から逃げた。

受け入れてくれるだろう人のいた龍の国からも逃げて来た。

自分はどこへ向かうのだろうか。そう考えると、道の見えない暗闇に立っているような感覚を覚える。

師であり恩人でもある首領ドンカラス。

彼を天の国で殺害したイーグル。

そのイーグルへの復讐。

それが第一の目標と考えていた。

だが、その成就は今の自分にはできない。


『俺は、お前に惚れた!裸を見たとか、首領ドンに言われたからとかそんなんじゃねぇ!お前の寝顔を愛おしく思っちまった!コーヒーを淹れながらいつまでもそうしたいと思っちまった!俺のやったことが許されるわきゃねぇ!恨んでくれていい!』


イーグルの言葉を思い出す。

今思えばなんと不器用な言葉だろうか。

なんと不器用でストレートな思いの吐露。

だが、その言葉に。

態度に。

自分が揺らいでいる。

いや、傾いている。

そういう風に感じていた。

首領ドンは許すだろう。

元より、こうなることを予見していたのではないかとさえ思える。

彼の言葉を思い出すだけで頬がゆるむ。

以前なら軟弱な考えだと切って捨てていた。

だが、今は違う。

なにかが自分の中で変わった。

そんな彼女の思考に水を刺すように部屋のドアがノックされた。


次回は水曜日。

活動報告更新してます。


Twitter→https://twitter.com/yukks_sousaku?s=21

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