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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

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2-21 努力の人

プレート式ボディアーマー【顧客平均評価:4.1】

ヤタ重工の定番アイテムをご紹介する『いつもの傑作選!』

今回は港の国や天の国で採用されているプレート式ボディアーマーをご紹介!

特徴はなんといってもその利便性!

服の下に着用可能な薄型プレートを採用し、装備時のシルエットを崩さず、軽量!

魔力を使用しないため効果時間が半永久的!

さらに、プレートはワンタッチで着脱可能!

業務に応じて外したり、破損時の交換もスムーズです!

お求めはお近くのヤタ重工支店まで!


城内では大同盟の面々と教団幹部との戦闘が続いていた。

「なかなかできる!」

エルカはツスルのもつ技量に驚嘆する。

口だけのそれではない。

「うれしいこと言うてくれるやんけ。せやけどズルはあかんやろ。」

ツスルは文句を言いながら口元から垂れる血を拭う。

エルカの持つ転移魔法によってツスルの攻撃は全て空振りさせられ、一方的に反撃されていた。

「正式な天の国の王族ではない凡人が天使に触れられる道理はありませんよ?」

エルカはそう言って笑うと踏み込み、右の拳を放つ。

だが、その拳をツスルが掴む。

「つーかーまーえーたー!」

反撃の拳はエルカの頬を捕らえた。

会心の一発を貰ったエルカは大きく跳ね飛ばし、這いつくばらせる。

「ばかな…」

驚くエルカを今度はツスルが笑う。

「ワシゃなあ…お前が言う通りソラウの王族やない。せやからえらい努力したんや。勉強も筋トレも格闘技も魔法もなぁ。」

まだ立ち上がれないエルカとの距離をゆっくりと詰めながら続ける。

「ソラウのガキになった以上、親ん顔に泥ォ塗るわけにいかんからなぁ。そうやって努力してたらよぉ。神様がくれたんや。」

ツスルはエルカの胸倉を掴み、立ち上がらせると、右のフックを放つ。

転移魔法による空振りができず、再び拳を受けたエルカはその場に膝を付く。

何とか視線を相手に向けるが、それを塞ぐような蹴りがエルカを再び吹き飛ばす。

「ワシらみたいなんはどんだけ努力したって限界がある。逆立ちしたってワシはパルちゃんや剣聖には遠く及ばん。せやから神様がワシにもズルできるようにしてくれたんや。」

ツスルはそう言って両手を広げる。

「『絶対の域』。ワシはそう勝手に読んどる。ワシの手の届く範囲だけあらゆる魔法の効果を消し去る。消耗がそれなりに激しいからあんまり使わんけどな。この『域』に入ったもんは炎やろうが身体強化やろうが消え去る。お前のズルも魔法なら消え去る。パルちゃんの銃も弾が魔力やから消え去る。ワシの『域』なかでは努力が全てや。鍛えたもんの鍛えた結果だけが支配する。」

エルカは何とか立ち上がろうとするが、膝が笑う。

初めて経験するその現象と、目の前から迫る努力という名の狂気を纏った男に対し困惑と焦燥の笑みを浮かべるしかなかった。


ハウンドとグディは一転して距離を取り、様子を伺っていた。

「ちょっとやりにくいな…」

グディ呟くと、もう一歩、距離を開ける。

4体の猟犬を展開し、自身は素手で構えを作るハウンドに対してグディは閉所ゆえに眷属リアレスを展開できず、思うように戦闘を進められない。

「まあ俺もちょっとやりにくさはあるぜ。全力でやれば色々巻き込みかねんからな。」

ハウンドもまた、自身の切り札である獣人の血の覚醒とトレスフィエラを使うには、獣の国の重役もいる状況では使えなかった。

「あれ?マジか…貴方クラス相手なら勝てるはずなのに…」

グディの発言は間違っていない。

天使の実力に細かい差はあれど、絶対性能という意味では天使の力はハウンドを圧倒するレベルを与えられている。

だが、あくまでも実力の話である。

経験や戦法といった面ではその限りではない。

リエルのたどり着いた結論の実例ともいえる。

使い魔との連携に加え、混血の獣人としての覚醒は彼の戦力を大きく底上げしている。

天使グディの戦力は人体のスペックと再生能力、眷属リアレスによる集団戦の能力が戦力なのだが、強力な戦闘能力に変わりないが、眷属リアレスを封じられた今の彼とハウンドの戦力差は大きく開いている。

「あー…面倒だな。司教長!使っていいですか?」

「ならん。余たちの力となってもらわねばならん重役の方々だ。巻き込むことは許さん。」

眷属の使用を要求するグディをプルトが制する。

「よそ見か。随分と余裕だな。」

視線を外されたカインはプルトへ斬りかかるが、プルトは素早く、向き直り、剣で受け止める。

視線を切っていたはずなのに、視界に入っているような動きだ。

そして、プルトの目は真紅に染まりカインを捕らえる。

「お前の実力は十分理解している。余に通用しうるだけの力は持っている。故に警戒している。」

プルトは当初の落ち着いた態度を崩さない。

「そうか。」

カインは鍔迫り合いの状態から力尽くでプルトの剣を弾くと、半歩下がる。

「奥義、陽炎。」

カインの踏み込みにプルトは慌てて体勢を立て直す。

攻撃の衝撃に備える。

だが、プルトの腕に来るはずの衝撃は来ない。

高速のバックステップによる一撃目のない二の太刀は、プルトの防御をすり抜けるように突きを放つ。

「小癪なッ!」

カインの意図に気付いたプルトは咄嗟に、構えた剣を振り上げ、カウンターを狙う。

カインもプルトも止まらない。

被弾を覚悟した両者は交錯し、背中合わせになる。

カインの右肩から血が垂れ、そのまま地面に血だまりを作る。

だが、プルトの方がダメージは大きかった。

左腕は突きをまともに受け、二の腕から下が地面に転がった。

「プルト様ァ!」

エルカは声を上げると咄嗟に、彼の元へワープする。

「狼狽えるでない。この程度、剣聖カインと立ち合えばこうもなろう。」

プルトはそう言い腕を拾い上げると、入り口に目を向ける。

いつの間にか城の周りに展開された結界がなくなり、そして、この場に駆けてくる足音が大きくなっていた。

「ヴァン!リョーマ!貴様ら何をしておったかァ!」

ラーンは入ってきた2人の重役を怒鳴りつける。

リョーマは大同盟からくる要人の出迎え。

ヴァンは大同盟と獣の国との会談での補佐役を命じられていた。

「いや…そのぉ…おいは聞いちょった港に船がこなかったがか。」

「俺は会談は午後からって聞いててぇ…」

2人はそれぞれラーンと目を合わせず、言い訳をするが、

「黙らんかい!」

というラーンの一喝で苦笑いを浮かべ、黙る。

「結界を破られた以上、これ以上は無理か…引き上げるぞ。エルカ。」

プルトはそう言い放つと、プルト、エルカ、グディは光の玉に包まれ、消える。

エルカの転移魔法を用いた離脱には誰も対応できなかった。

唯一、これを止められるツスルも、『絶対の域』の範囲にエルカを捕らえきれず、取り逃がした。

「とりあえず…勝ちやな?」

ツスルは満足げに笑うと、場を包んでいた緊張感がわずかにゆるんだ。


カヨは咄嗟に跳ね起きる。

熟睡していたらしい。

見慣れぬ景色に彼女はこれまでのことを思い出す。

まず、怪腕のジルと共に、師である首領ドンカラスの仇討ちのため、龍の国へ赴いた。

そして、乱入してきた謎の少女リトにジルは殺害され、自身もリトに挑むが実力差を見せつけられ、逃げるように森に入った。

そして、龍の国の外にある森の中でイザードという男と出会ってから先を覚えていないことに気づいた。

「悪いな。起こすのも気が引けたもんだからよ。コーヒーとベーグルでよければ準備するぜ。」

「イザード殿…」

イーグル(イザード)はカヨの返事を待たずにベーグルを半分にカットしてトースターに放り込む。

穏やかで心地よい風が頬を撫でる。

「私は、どのぐらい眠っていたのだろうか…?」

「8時間ぐらいかな。今はもう昼前って感じだよ。」

イーグルは手際よく支度をしていくと、コーヒーの香りがカヨのところまで届いた。

イーグルは彼女の食事を用意しながら、どことなく、こんな日常を望んでいる自分がいることに気付いた。

それは、姫の護衛という大任から解放されたからだけではなく、彼女だからこそ。そう感じていた。

「本当に簡単で悪いが、食うといい。」

そう言って、サイドテーブルに焼きたてのベーグルとコーヒーの入ったカップを置く。

見たところ薬のたぐいは仕込まれていないようだ。

イーグルは自分の分のコーヒーも用意すると椅子に腰掛ける。

「砂糖とかミルクとかいるか?」

優しく問いかけるイーグルに、大丈夫だ。と答えながら、カヨは疑ったことを申し訳なく感じた。

「君さえよければだが、しばらくここにいたらいい。」

イーグルの言葉にカヨは驚く。

目覚めた以上、すぐさま龍の国から追い出されるものと思っていたからだ。

「少し長くなるが状況が変わってな。」

カヨの考えを察したようにイーグルは状況の説明を始める。

「龍の国を含む大同盟は花の国で教団との会合に応じることになった。おかげで国内はてんてこ舞いさ。この状況なら不法滞在である君に構ってられない。留置所で会合が済むまでいてもらうことになるが、それなら、ここにいた方が君もいいだろ?」

その状況ならば彼の話はわからないものでもない。

それを提案できるほどの立ち位置に彼もいるのだろう。

「しかし、迷惑だろう…私はただ、イーグルという軍人を殺したいだけだ。そしてそれはあなたの同僚に当たる…」

カヨは目を伏せた。

復讐の手順など考えていない。

「そこは…まあ気にしなくてもいいんじゃない?それに君みたいな子は人殺しなんてできないよ。」

「どういう意味だ?」

思わずイーグルを睨みつける。

剣王会の筆頭としての誇りが反射的にそうさせた。

一方で彼女自身、実戦経験は乏しく、仕事の際は首領を含む剣王会の人間がついていた。

ましてや人殺しの経験など持っているはずもなかった。

「簡単だ。殺すと言いながら俺を拷問することはしなかった。本当に復讐したいならその組織の人間を拷問してでも情報を得るべきだ。」

「私が甘いとでも?」

イーグルは、そうだ。と答えてコーヒーを飲み干す。

「俺は首領・カラスから君の面倒を見るように頼まれた。だから、こうして君を匿っている。だが、甘いのはお互い様…かもな。」

イーグルは立ち上がると、壁に掛けていた杖を手に取る。

自分を殺しに来た相手に恋してしまう。

そんな安い文学のような展開になってしまったことを自嘲する。

だが、そんな相手だからこそ、隠すことはしたくなかった。

「俺はイザード・ウルパム。龍の国陸軍攻撃隊長…コードネーム『荒鷲イーグル…」

「貴様かァァァ!」

カヨはベッドから飛び出しながら脇に置かれていた愛刀を手にする。

穏やかな風が一転して強風が吹き、鍔競り合う音が響いた。

彼自身、自分がイーグルであることを明かすことが得策でないことは理解していた。

一方で、自分を偽ったまま彼女を愛するほど器用でもなかった。

「何故だ!何故私を助けた!」

「だから俺も甘いんだよ!」

カヨに弾き飛ばされたイーグルは通りに投げ出される。

「ふざけるな!私が甘いからか!甘いからこそ殺すのも気が引けたとでもいうつもりかァァァ!!」

カヨは絶叫と共に膝立ちになったイーグルに刀を振り下ろす。

「氷塊よ!」

イーグルは氷魔法でそれを受けようとするが、出現した氷塊は簡単に両断される。

咄嗟に放った旧式の魔法では十分な強度を確保できない。

イーグルはそれを承知でわずかに生まれた隙で体勢を立て直す。

「しょうがねえだろ…惚れたんだから…」

彼の呟きは彼女には届かなかった。



次回は水曜日。

活動報告更新してます。


Twitter→https://twitter.com/yukks_sousaku?s=21

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