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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

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2-19 リョーマ駆ける!

馬人種【一般情報】

ケンタウロスとも呼ばれる亜人の一種。

上半身は人であり、腰のあたりから馬の体となる。

4足と2本の腕を持ち、脚力や肺活量に秀でる。

他の亜人同様、長寿である一方で繁殖力が低く、個体数はさほど多くない。


一夜明けて、イーグルは眠ったままのカヨを連れ、龍の国国内の自宅へ戻ってきていた。

彼女が何者でどういった目的でここに来たのかは理解している。

だが、どうしても彼女をそのまま風の国へ戻すことも龍の国で処罰することもできなかった。

その行動が首領ドンの遺言に従うというものではなく、自分の感情に基づくものだと気づきつつも、それを無視していた。


獣の国もまた、朝を迎え、朝日が眩しい。

そしてそこを疾走する一つの影。

蹄鉄を鳴らしかけてゆくそれは、馬人種特有の音を響かせる。

「ケニーどん!ケニーどんはおりますかぁ?!」

馬人種の男は古びた酒場の戸を叩く。

「リョーマ!どうしたの?」

後ろからニックが声をかける。

水汲みの帰りのようだ。

「おぉ!ニック!おまんも異国の方にうたがか?」

興奮した様子のリョーマに気圧されながらニックは何度も頷いた。

「えろうツイとるのぅ!ケニーどんは寝ておるんか?あん人こそ異国の方と酒を酌み交わしたらしいやないか!」

捲し立てるように話す彼の頭をケニーは叩いた。

「朝からうるさいわい!」

誰がみても怒った様子のケニーだがリョーマはお構いなしにケニーの肩を掴む。

「異国ん人はなんぞ話された?大陸は?教団いうもんについても話したがか?」

続けざまに放たれる質問にうんざりした様子のケニーはリョーマの手を振り解く。

「えぇい!酒飲んだだけじゃ!」

「い、異国の方はどこに参られた?」

ハウンドたちの行き先を問うリョーマにケニーはゆっくりと思い出す。

酒の席での話だっただけに微妙に混在しているからだ。

「あいつらは…そうだ!王のところへ行った!ラーン王のところだ!」

「ラーン王じゃな!船を出してもらわねばな!まっことかたじけのう!」

リョーマは早口で礼を告げると港に抜けて再び駆けだす。

嵐のように去っていく彼を見送る2人。

鎖国体制を敷く獣の国で他国への興味が尽きない変わり者。

その好奇心は多くの人間に影響を与え、彼自身も影響を受けていくこととなる。


獣の国の中心部ともいえるアス島へ降り立ったツスル一行は先方の用意した車列に乗り込み、移動を開始する。

目的地は国王ライカ・ラーンの住まう王城。

そこで会談を持つことになっている。

車列は何事もなく王城へ到着し、彼らはそのまま待機場所となる会議室へ通された。

「一応、話はワシがする。2人はとりあえず立ちうてくれたらええ。」

ツスルはハウンドとカインにそう告げると一枚の書状を見せる。

内容は天の国国王、龍の国女王、港の国国王の連名による獣の国への協力を求める内容だ。

「これが受け入れられればワシらの仕事は終わり。無理ならせめて無関係を維持してもらう。口約束程度になるかもしれんけどな。」

現状維持の口約束。

ハウンドは個人的にそれで収まるのではないかと考えていた。

昨晩、ケニーとの会話で彼らの認識はある程度把握できた。

この国の住民は教団と大同盟の戦争は対岸の火事としか見ていない。

そんな彼らに協力を要請するのははっきり言えば『都合がよすぎる』。

ただ、それでも大同盟特使の一員として、それを口や態度に出すわけには行かない。

待機している間、誰も言葉を発することはなかった。

その後、一同は案内され、玉座の間へ通される。

「よくぞ参られた。大陸の方々よ。」

座しているにも関わらず見上げるほどに巨大な牛人ギュウキ種、それがライカ・ラーンだった。

特使たちはそのサイズ感に圧倒されるが、ただ一人ツスルは物怖じすることなく、彼の前に進み、膝まづく。

「本日は貴重な時間をいただき、ありがとうございます。」

彼からすれば交渉ごとの相手など問題ではないのだろう。

それだけの数をこなしているとも言える。

「前置きは良い。貴公らの求めは理解しているつもりだ。」

ツスルはその言葉を聞き、先ほどの書状をラーンに渡す。

「これは天の国国王ソラウ・ソラ、龍の国女王ドラゴ・レイア、港の国国王ピア・ヤーポートの連名による大同盟への協力要請になります。我々、大同盟としてはこちらの書状に御同意いただきたい。」

ラーンは書状を一瞥すると口を開く。

「わざわざ御足労いただいて申し訳ないのだが、こちらの回答は変わらない。異国同士の争いに首を突っ込むつもりはない。」

「陛下はこの状況を理解しきれておられない。国家間の闘争ではなく、国家対組織です。」

ツスルは反論するが、ラーンの態度は変わらない。

「なにが違うのだろうか?向こうの大陸で起きていることにこちらが介入する事は事を複雑化させるだけだと思うが?」

「いえ、組織が動いている。ということはすでにこの国にもその手のものが入り込んでいる可能性が十二分にあるということです。」

ツスルの一言に獣の国側の立会人はざわつく。

この国特有の反応だ。とハウンドは思った。

他の国であればその可能性は十二分に考えられることだが、鎖国体制という潔癖は教団の人間が入り込んでいるという可能性を隠してしまうのだ。

「言いがかりはよしていただきたい。その根拠も証拠もないのだろう。」

ケニーとの会話でもあった事だが、今回の交渉において最もネックになる部分だ。

教団の手が獣の国にも入っている可能性がある。

だから大同盟と協力して教団の殲滅を行おう。

それが大同盟側の言い分だ。

しかし、それを裏付けるものがない。

ましてや鎖国体制下のこの国でそれは致命的とも言える。

「こちらとしても教団の行動は目に余るものと理解している。だからこそ、今後も不干渉とし、大同盟への協力はしない。これをご理解いただきたい。」

ラーンの言葉はこの会談の決着を意味していた。

「ならば教団への協力をお願いしたい。ラーン王?」

決着のはずだった会談に何者かが乱入してくる。

一同の視線の先には1人の男。

刺々しい鎧に身を包み、腰には両刃の剣を携えた男。

黒い髪に宝石を思わせるエメラルドの眼は神々しさやあでやかさを感じさせる。

「貴公は?」

警戒心を孕んだラーンの言葉に男は微笑む。

その笑顔は全てを受け入れ、許す様な慈悲深さと、底知れぬ不気味さを兼ね備える。

そしてハウンドはなぜか既視感を覚えた。

「余の名はパーシヴァル・プルト。件の教団で司教長、つまり長をやっているものだ。」

ハウンドは背筋が凍り、恐怖を感じた。

ここで死ぬのだろうという直感と共に。


リョーマはアス島へ向かう船を出している港へ来ていた。

「だから!会合が終わるまでは船は出せねえって!」

「それはわかっちゅう!じゃけんこうやって頼んどるが!」

リョーマは船頭と押し問答を繰り返していた。

アス島への移動は警備の関係から会合の間は禁止されている。

それも2日前から。

そんな状況なだけに船は出せないのだった。

「リョーマ!こっちじゃあ!」

リョーマは声を掛けられ、振り返る。

鳥人種バードマンの船頭が手を振っている。

リョーマは彼の船に飛び乗る。

「恩に切りもす!」

「気にすんな!城の様子がおかしい!飛ばすぞ!」

船頭の言葉を聞き、改めて城の方へ目をやると、雄大に聳え立つ見慣れたそれは毒々しい色の結界に包まれていた。


「なにをした…?」

城の異変に真っ先に気付いたのはカインだった。

静まり返った場内でハウンドは周りを見回すと窓から見える外の景色が結界に包まれていることに気付いた。

「少しばかり露払い…人払いと言えばいいか。結界を張らせてもらった。」

プルトは静かに、自宅の装飾を説明するように答える。

「要求はなんだ。かような事をして握手しようなどと言うわけではあるまいな。」

ラーンの言葉には確かな怒りが込められている。

「ラーン王、お初にお目にかかる。大同盟との共闘をしないのならば、我々とも敵対しない。それでよいか?」

プルトの質問の意図を皆が掴みかねる。

「そういう意味だが…?なにが言いたい?」

ラーンは警戒心を強める。

全員の視線と殺気がプルトに注がれる。

プルトは目を閉じ笑みをたたえていたが、目を開く。

「ならば力尽くで余達に協力してもらう…!」

彼の背後から2人の天使、エルカとグディが現れ、獣の国の関係者へ銃を向ける。

「順番守る気はないんか?」

ツスルはプルトを睨みつける。

「今、貴殿らと遊んでいる時間はない。手を出さぬなら道を開けてもらおうか。」

カインとハウンドはツスルを守るように飛び出し、構える。

「生憎と小生に話し合いは退屈でな…遊んでもらえるかな。教団の長…!」

カインは悠然と切っ先をプルトに向ける。

「君は退いてもええで?」

ツスルから声を掛けられたハウンドは首を振る。

「冗談ですよね。剣聖には及びませんけど俺だって龍の国の猟犬です。護衛として仕事はしますよ。」

「待たれよ。」

高まる緊張感の中、ラーンが声を張る。

「この問題は獣の国と大同盟、獣の国と教団の問題である!貴君らがこの場で争う必要はないはずだ!」

ツスルは呆れたように振り返り、ラーンを見上げる。

「ホンマになんもわかっとらんな。ええか?獣の国云々の前に、教団と大同盟の問題なんや。これはな。」

その言葉が火ぶたを切った。

カインは素早く接近し、天使エルカの銃を両断する。

「なにっ!」

その速度に咄嗟に視線を外したグディの銃をハウンドが蹴りとばす。

「余が相手をしてくれよう!」

左手側に突っ込んできたカインに対してプルトは腰の剣で切りかかる。

つば競り合いになる二人。

カインは直感的にこの男の実力はこれまでの相手とは比較にならない。そう感じた。

いや、一度だけ出会った。

彼が唯一、限界まで追い込まれた龍の血を持つ人間おんな。それに近い実力を持っているように感じた。

「おや?おやおや?デスクワーク担当の貴方が相手をしてくれるんですか?」

エルカは歩み寄ってくるツスルを見てあざ笑う。

「運動は好きなんよな。こう見えて。」

ツスルも笑い返し、ジャケットとネクタイを捨てる。

「では私の相手は貴方ですね。猟犬!」

グディは大きく笑う。

ハウンドは帽子を取る。

カインとプルトのつば競り合いに目を奪われていたはずの面々は小さく声を上げた。

ハウンドは頭頂部の犬耳をわざとらしく動かすと笑って見せた。

「猟犬…舐めんじゃねぇ…!」

次回は水曜日。

活動報告更新してます。


Twitter→https://twitter.com/yukks_sousaku?s=21

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