表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/306

2-7 そして風は吹く

日本刀の柄の先端(?)の部分のことをかしらと言うそうです。

[]==[]=====>

↑ここ

クレロス【未確定情報】

近年、世界各国に置かれるようになったトラ教団の施設『教会』の職員を指す。

教会のリーダーである司教は教団への献金によって与えられる職であるためこれらには含まれない。

つまり、教団から派遣された教義に従う人間である。

キメラ兵士の技術を用いた肉体改造を施された戦闘部隊としての側面もあるとされる。

なお、クレロスとは『選ばれしもの』の意。


滝の国にある総合病院を出たママは待っていたハウンドと合流する。

「遅かったですね。」

「ん?まぁちょっと昔話をね♡」

2人は言葉少なに歩き出す。

明日には彼の任務終了の報告書が受領され、龍の国に戻ることになるだろう。

ハウンドはママに頼まれ、宿泊しているホテルに併設されたカフェテリアに入った。

「ゆっくり話しておきたいのよ」

「何ですか…?俺はもう…」

ハウンドはその後に続く言葉が出なかった。

これ以上、立場を偽ることはできない。

だが、父親と名乗り出ることもできない。

「あの子が望むのなら、私はあの子を連れて龍の国へ向かうわ。」

「そんな勝手な!」

ハウンドは反射的に反論する。

そんな彼の態度にママは冷静に返す。

「落ち着きなさい。どのみち、あの子の獣人の血が覚醒しつつあるのにそれを隠せるの?その話は貴方側に起因する以上、これ以上、他人のふりはできないのよ。」

ハウンドは目を伏せた。

彼自身、それは理解していた。

「貴方の背中を押したつもりはないわ。あの子には真実を知る権利があるし、それが受け入れられないほど子供でもない。そうでしょ?」

セッカの年齢はハウンドが軍の士官学校に入学した時と同じになっていた。

会えていない時間が長かったが、それでも娘は成長していたのは間違いない。

「ですが、俺が会えばより獣人の血が覚醒する可能性はないんですか?」

ハウンドは疑問を口にする。

「それはあんまり関係ないんじゃないかしら?私も獣人に詳しいわけじゃないけど、あの子の目は今回見えるようになったものじゃないわ。もっと前、盲学校に通い続けていたのなら、突発的に見えている時があったんじゃないかしら?」

ハウンドは考え込む。

そういった話は聞いていないし、仕草からもそれは感じられなかった。

「獣人の血の覚醒…というより、血が、体の不調をうまいこと調整した…と考えるのが自然かもね。」

「本来、もっと時間をかけて慣れるものが、感情の高ぶりで一気に目覚めたと?」

「素人が出した結論としてはそんな感じかしらね?少なくとも血が目覚めいている時、つまり貴方と同じ犬耳が出ている間は見えてると考えていいと思うわ。」

ママが話をまとめると、注文したコーヒーが2人のテーブルへ届けられた。

ママはその香りを楽しむようにカップを持ち上げる。

「いずれにせよ、私はもうしばらくここにいるわ。貴方の行き先は…貴方が決めるといいわ。ガキじゃあるまいし♡」

ママはそう笑ってコーヒーを飲む。

「俺は…」

ハウンドは結論を出せない。

龍の国へ戻ることがベストだと思えないが、この滝の国に居続けることもベストだと思えなかった。

「ゆっくり考えるといいわ♡」

ママの声に頷き答える。

そして、彼の頭に浮かぶ第三の道。

獣の国。

第三の大陸にして、獣人の国。

そこならば全ての答えを得られるかもしれない。

だが、運命の歯車は噛み合い、時代は加速していく。

彼に迷う時間など与えぬほどに。


天の国でのカインとハヤテの決闘は佳境を迎えていた。

剣聖の速度、パワーにハヤテは次第に押されていく。

ハヤテは片腕となったカイン相手であれば自分でも勝負になるのではないか。と思っていたが、それは誤算となった。

カインは片腕で十分に強い。

雑念のない殺気は一手一手、ハヤテを追い込んでいく。

ハヤテは大きく距離を取る。

「やるじゃねえかい…!」

「貴殿こそ剣王会のチンピラと思っていたが中々できる。おかげで隻腕での戦闘に慣れてきた。」

(段々と押された理由はそれかい…)

ハヤテは大きく深呼吸する。

「行くぜ。」

彼は両手に持った刀のかしらを合わせ、捻る。

すると二本の刀は双刀の一本となる。

「それが双刃か?」

カインの言葉にハヤテは笑顔で返す。

「応とも。これぞ双刃のハヤテの真髄...!その首、もらうぜええ!」

雄たけびと共に距離を詰める。

刀を合わせた武器ではあるがその動きは棒術に近い。

袈裟に薙ぐ一撃を半歩引いて躱すカイン。

ハヤテは攻撃の勢いを乗せたまま回転、更に距離を詰めるようにして追撃する。

カインは振り下ろされる刃を宝剣で弾き返すように受ける。

勢いを殺されたハヤテだが、止まることはない。

右足に力をため、飛ぶ。

今度は下から切り上げる。

カインはその流れに沿うように回転し、カウンターの横なぎを見舞わんとする。

だが、ハヤテは切り上げた刀を肩のあたりで止めると、そのまま踏み込んで突きを放つ。

タイミングは五分。

恐れて剣を引いた方が致命傷を負い、なにもしなくても致命傷を負う。

2人とも答えは考えるまでなかった。

名誉の突撃。

それが剣客としての答えだ。

ハヤテはそう考えた。

だが、カインの結論はその先にあった。

回転の着地、その足を使って、今度は弾丸のように突撃しながら体を縦に回転させる。

「なッ…!」

ハヤテは声を上げることしかできない。

全力の突きは他の動きへの派生を捨てた捨て身の一撃だった。

カインは回転で突きを回避すると、すれ違いざまに一撃を見舞う。

この戦いにおける最初の出血はハヤテだった。

右半身を切りつけられ、膝をつく。

カインは悠然と距離を詰め、剣を突きつける。

「終わりだ。」

「ならば斬るが良い!剣聖カインに斬られるのならば剣客として本望!」

カインは剣を納める。

「断る。貴殿の死体は誰が片付けるというのだ?」

見下ろしたまま告げるカイン。

ハヤテは最後の攻勢に出る。

双刀の切り上げ。

だが、カインはそれを受け流す。

完全に間合いを見切られていた。

ハヤテは最後の力を振り絞る。

回転の後、双刀を外し全力の突きを放つ。

それは、接合部であった頭でもう片方の頭を打ち出す最後の切り札だ。

「奥義、陽炎」

突きの直撃を確信したハヤテの耳にカインの言葉が届く。

それと同時に彼の体は両断され、地面に倒れ伏した。

放たれた突きの先にカインはいない。

ヤマギ一刀流奥義、陽炎。

相手の攻撃をシュクチによるバックステップで回避、その後、シュクチで攻撃後の隙を狙い切り伏せる。

カインの奥義は師であるカドゥの半神天羅のアレンジとも言える。

カウンターの一刀で全てを片付けてしまう彼の力の表れとも言えよう。

ハヤテの死体を見下ろしていたカインは彼が完全に事切れたことを確認すると、ドクの待つ店へ歩き出す。

護衛対象から離れてしまったが、あの女がいるのならば特段の心配事もない。とそう思いながら。


天の国での決着から少し遡る。

龍の国に現れた謎の少女は大剣を地面に突き刺す。

「貴様ァ!」

筆頭が後ろから切りかかる。

それに合わせるようにトータス、ゴンちゃんが突っ込む。

この場の全員が、この少女の異常性に恐怖していた。

「君たちの直感は正しい。しかし、挑むことも正解とは言えん。戦場とは難しいな。」

少女は筆頭が振り下ろす刀に対してステップインして、手首を捉えると、そのまま捻り、刀を手放させる。

そして、正面から突っ込んでくるトータスとゴンちゃんの前に筆頭を引っ張る。

トータスとゴンちゃんはそれを受けて左右に展開、挟み撃ちの形を作る。

両者の拳が少女に迫る。

「面白い…!」

少女は掴んでいた筆頭の手首を離すと、2人の拳を受け止める。

「何ィ?!」

「この…っ!」

怪力自慢である2人の拳を受け止め、涼しい顔をしている少女。

異様な光景は少女の強さを際立たせる。

「なかなか強い。だが、このレベルではなぁ!」

少女は2人を片手で投げる。

技術ではない。

2人をそれぞれ、ボールでも投げるかのように投げて見せた。

「如何ですか?我らの技術は?」

トータス達の背後から現れたのは第七天使ラキエだ。

「ふむ。テストは十分か。」

少女はそう言って肩を回す。

「誰だテメェら…そしてその技術はなんだ!」

「私は第七天使のラキエと申します。そしてこの技術はあなた方にはわかっているはずですよ?龍計画にGOサインを出した貴方は特に。」

「んだと…?」

龍計画。

手術によって人体を改造し、最強の兵士を生み出す研究。

ラキエの言う通り、当時、陸軍の長であったトータスはそれをよく知っている。

「貴様ァァァ!」

筆頭が刀を構え、少女へ突っ込んでいく。

「何故泣くのだ。戦場に出てきた以上、死は避けられん!」

少女は振り下ろされる刀を大剣で簡単に受け流すと肘を叩き込む。

少女の細腕は筆頭の鳩尾を的確に捉え、彼女の動きを止める。

少女は腕を取り、肩を極めるようにして組み伏せる。

「どうなのだ?ん?その涙はなんだ?戦場に出てきてそれで死なぬなどと、フィクションの読みすぎではないか?」

少女は、筆頭の頭を踏みつける。

「名乗っておこう。我が名はリト。三賢人のリトと言えば通りがいいか?」

「バカ言っちゃあいかんぜ。三賢人のリトは100歳近いジジイのはずだろうが。それがどうしてそんなガキの姿なんだよ。」

リトの言葉をトータスは返す。

三賢人は、その優れた知性を評された人物であるが、現在は死亡ないし、隠居しているはずである。

「簡単ですよ。肉体を作り、そこに人格を入れた。」

トータスの疑問にラキエが答える。

龍計画と目の前の少女。そして三賢人。

「冗談じゃねぇ…お前らパルを作り直したのか…?」

トータスは最悪の結論に辿り着く。

「えぇ。エルカの持ち帰った白の襲撃者の黒い血の一部、天使とディプタドの戦闘データ、三賢人とマイセン先生の知識、それらが導き出した…いわば第二世代天使です。」

パルが天龍事変において大量の出血を負ったのは2回。

砂の国郊外での対エルカ。

そして、天の国、王城地下での対カイン。

その際の血を回収、解析し、作成された新型の人工身体に三賢人の1人、リトの魂を付与インストールした存在。

それが、今、リトと名乗った少女の正体である。

「それではまたお会いしましょう。近いうちに。」

ラキエとリトは光の玉に包まれて消えた。

残された筆頭は、啜り泣きながら風と共に消える。

残されたトータスとオカマ達は状況を飲み込めずしばらく固まっていた。

「官僚長…これは…」

ゴンちゃんの呼びかけにトータスは立ち上がると、上着から通信機を取り出す。

白の部隊が使用していたインカムの改良型だ。

「俺だ。パルをさっさと呼び戻せ。あ?天の国?んなこと知るか。あぁ、おう。じゃあホエールとハウンドを向かわせろ。ハウンドからは連絡来てただろ。」

通信を終えたトータスはオカマ達に向き直る。

「時代の節目って感じですね…」

ゴンちゃんの言葉にトータスは笑って見せる。

「よくわかってんじゃねぇか。風向きが変わってきやがった。」

天の国と龍の国で起きたこの一件は単にはじまりにすぎなかった。

それは、大同盟と教団の全面戦争において。という側面もあれば、エルカ達、第三勢力においても、そうだった。


次回は水曜日。

活動報告更新してます。


Twitter→https://twitter.com/yukks_sousaku?s=21

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ