2-6 風の国剣王会の名の下に
レストラン『ボニト』【評価★★★★☆】
大書堂観光課特班員がお送りするコラム『世界味巡り』!
今回ご紹介するのは天の国中層にあるレストラン『ボニト』です!
高級感のある店内では落ち着いた雰囲気の生演奏が食事の時間を彩ります!
お肉料理もさることながらオススメは魚料理!
大同盟の関税緩和によりリーズナブルにそして新鮮な港の国産のお魚を天の国事務局長御用達のシェフが調理してくれます!
天の国に訪れたら是非、美味しい魚料理を楽しんでみては?
カインは左腕で宝剣を構える。
「名を聞いていなかったな。異国の方。」
向かい合う男は構えた2本の刀を鞘に収めると傘を脱ぎ顔を見せる。
「ィよくぞ聞いたァ!我こそは風の国剣王会が筆頭補佐ァ!双刃のハヤテたァ俺の…」
大袈裟な身振り手振りを交えた名乗り文句を最後まで聞くつもりのなかったカインは、シュクチで距離を詰め、横薙ぎに払う。
ハヤテはその奇襲に驚くこともなく、右の刀を引き抜く。
その目には身体強化魔法の閃光が宿っている。
「双刃のハヤテたァ!俺のことよォ!剣聖カインンンンン!!!」
鼓膜を突き破らんとするほどの名乗りにカインは距離を取る。
「案外ィ!小狡いことしてくれんじゃねェかァ!」
ハヤテは左の刀も抜く。
双刃の名に偽りのない二刀流のようだ。
「失礼した。小生は貴兄を少し侮っていたようだ。」
カインは改めて宝剣を構える。
「我が名はカイン。天を支えるもの。」
カインの名乗りにハヤテは口角を大きく上げ、歯を見せて微笑む。
次の瞬間、2人は高速で命を取り合う剣戟の世界へと消え、辺りには衝撃と甲高い金属のぶつかり合う音が響いた。
「すまない。龍の国のイーグル殿は何処か?」
龍の国に作られた『オカマ農場』に1人の女性が足を踏み入れた。
ゴンちゃんは汗を拭い、彼女の前に立つ。
「イーグルちゃんは不在よ。喧嘩の相手なら私達がやるけど?」
ゴンちゃんはそう言って彼女の腰に刺された刀を指差す。
「喧嘩などと…私はただイーグル殿に会いたいだけですよ。」
女性は首振って否定する。
「お嬢ちゃん。イーグルに会いてぇなら条件がある。」
彼女の背後からトータスが声をかける。
シャツを脱ぎ、両の拳を覆う鉄甲をしている。
「助かります、鉄拳のトータス殿。して条件とは?」
彼女は刀に手をかけ、答えのわかりきった問いをトータスに返す。
「俺を倒してみろ。」
彼は嬉しそうに大きく笑顔を見せる。
臨戦態勢の2人の間に何者かが割って入る。
剣王会の正装とも言える黒い笠とマント姿の男は、刀を抜き声を張る。
「筆頭!この喧嘩ァ!この怪腕のジルが請け負いますゥ!」
筆頭と呼ばれた女性は殺気を消すと、
「よろしい!ジルよ、先生の仇を引き摺り出すのだ!」
そう鼓舞して腕を組み、仁王立ちする。
いつの間にか畑にいたオカマたちは手を止め、ジルとトータスを囲む。
声援は五分。
賭けの倍率もまた、両者1.5倍がオカマたちの流儀であった。
「ゴングはいらんな?」
トータスが両の拳を合わせながら問う。
「無論!」
ジルはそう答えると力を込める。
彼の腕はトータスのそれよりもはるかに太くなる。
「ちょっと…きもいな…お前さん…」
右腕だけ取ってつけたように肥大化したジルにトータスは気圧されていた。
「はっはァ!ゆくぞぉ!」
ジルの素早い踏み込みから振り下ろされる刀。
それはひどく乱雑だが、非常に効果的な刀の使い方にも見える。
トータスの目に光が迸り、左の鉄甲で受け止めるが、あっさりと砕かれる。
「ぬはははは!腕をもらうぞ!鉄拳!」
ジルは勢いのままにトータスの腕を叩き切ろうとするが、刃は骨に届くどころか肉を少し切っただけで止まってしまう。
「よく騒ぐ肉だるまだなぁ。ま、こいつの強度チェックにゃぁちょうどいいか。」
トータスの右こぶしがジルの腹筋へ食い込む。
鍛え上げられた肉の鎧の奥に守られた内臓を狙ったそれは間違いなくジルの臓腑へ強烈な衝撃を送り込んだ。
トータスがゆっくりと拳を抜くと鉄甲についた血が糸を引く。
悶絶するジルを見下ろすトータス。
「終わりか?」
トータスは腕に食い込んだ刀を抜くと後方へ投げ捨てる。
「ぅん…まだだぁ!」
ジルは跳ねるように飛び上がると、トータスの顔面に頭突きを見舞う。
虚を突いた一撃であったが、それがトータスに火をつけた。
「ぃい根性だぁ!」
頭突きを返すトータス。
更に返すジル。
頭突き。
頭突き。
頭突き。
頭突き。
頭突き。
一撃ごとに周りを囲むオカマたちは歓声を上げる。
ヒートアップしていく畑のリング。
飛び散る両者の血が畑を潤す。
先に折れたのはジルの方だった。
頭突きを返せず、中腰になる。
だが、トータスにもダメージがあり、息を切らしている。
決着が近いと皆が感じていた。
「…!ジルっ!」
筆頭が何かに気づき声を上げた。
しかし遅かった。
ジルの胸から大きな剣が突き出ている。
「怪腕と聞いておったが、存外、脆いもんだな。」
10歳ほどの少女が身の丈よりも巨大な剣を引き抜くとジルは声を上げることなく倒れた。
次回は土曜日
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