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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

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61/306

2-3 私と猟犬(オオカミ)さん

RISEライズ【一般情報】

『市民で市民を守る』を表題に掲げる反体制組織ネットワーク。

デモ行進を行うのではなく自警団として活動している。

刃の国で発生したものだが、各国で発生した自警団と吸収、合併を繰り返しておりかなり複雑な組織構造となっている。

近年、N-PAAの普及や軍縮を受け勢力を伸ばしているが、内部派閥同士の抗争や、警備費と称して金銭を巻き上げる、依存度の高い違法薬物の売買、法外な高レート賭博の主催及び賭場への強引な勧誘などが問題視されている。

また、一部では殺害や脅迫といった闇仕事を請け負っている。


家を出たハウンドは街への道すがら花屋による。

以前にパルときた時と同じ店だ。

「ケンちゃん!アザレアだね!」

店に着くないなや店主は花束を作り始める。

ハウンドは笑顔で頷き、それを待っていた。

(白い花っていっぱいあるのか。)

ハウンドの感性ではどれも白い花にしか見えない。

犬耳が生えて以降、嗅覚も鋭くなった彼には花屋の匂いがむず痒く感じられた。

その嗅覚が嗅ぎ慣れた匂いを拾う。

血の匂いだ。

それもかなりの量の。

緊張感が五感をさらに上の領域へ引き上げる。

悲鳴と罵声。

そしてその悲鳴は彼の知る人物のものだった。

風を追い抜くような速度で消えるハウンド。

怒りを纏った風は白い報復シャクヤクの花を揺らし、わずかに散らすのだった。


ハウンドが現場に駆けつけた際には大きく変形した商店の壁と血溜まりがあった。

どうやら車が起こした事故のようだが車は見当たらない。

「ケンさん!」

聞き覚えのある声に振り返ると、彼もよく行くカフェのウェイトレスが駆け寄ってくる。

「多分娘さんだよね!目の見えないあの子!連れて行かれたみたい!」

その言葉に応えることなく、彼の体から飛び出した4体の猟犬つかいまは四方に飛びかけ出してゆく。

激昂しているのは間違いないが、その一方で血の匂いが彼の兵士としての本能を叩き起こし、冷静さを取り戻させた。

出血は複数人分、そしてそこに自分に近い匂い、つまりセッカの血が含まれいてる可能性は低い。

「何があった?」

ハウンドはできるだけ落ち着いた声でウェイトレスに聞く。

「半グレ達があの子達に絡んで…それで嫌がってたみたいだけど急に大きな音がしたんです!それで連中、あの子達を車に押し込んで…」

助かった。とハウンドは遮るように告げると走り出した。

ツララが潜伏場所を見つけ出したのだ。

壁を蹴って人混みを抜ける。

前を横切ろうとする車のドアノブを足場代わりにして飛び越える。

身体強化と獣人としての本能が噛み合ったその動きは、走る。という人間的なそれより犬や猫のようなそれだ。

街灯を飛びついで行き、街の外れにある廃墟にたどり着く。

近くには変形し、血のついたバンが止められている。

ハウンドは入り口の扉に背中を預け、猟犬達が揃っていることを確認すると、扉を蹴破った。

一斉に視線が彼に集まる。

5人。

そしてセッカともう1人女の子がいる。

学校に迎えに行った際に見たことのある子だ。

そして、こともあろうに5人の男達はんにんのうち1人はズボンを下ろし、セッカと行為ことに及ぼうとしていた。

「なんだテメ…」

「UUUUUAAAAAAAAAAHHHHHHHHHH‼︎」

ズボンを慌てて上げる男の言葉はハウンドの咆哮に遮られる。

完全に『キレて』いた。

「獣人?!」

「クロガネェ!」

驚く1人はハウンドの雄叫びで合流したクロガネの刃で両断される。

それと同時に四方を囲んでいた3体も廃墟に突入する。

あるものは焼かれ。

あるものは貫かれ。

あるものは叩き落とされた。

そして最後の1人は足を氷で地面と繋がれている。

「なんなんだよ!テメェはなんたんだよ!」

男は震える声でハウンドに唾を浴びせる。

ハウンドは無言で拳を固める。

「頼むっ!待ってくれよ!俺たちはちょっと教育を…」

言い訳は聞かない。そう応えるように右拳が顔面を捉える。

鼻は変形し血が垂れる。

左の拳が弧を描くように頬に当たる。

首が吹き飛ぶような威力のそれはフックというおさだまりの技術ではなく、殴りつけるだけの暴力だ。

意識を寸断されたのか事切れたのか膝を着こうとする男の胸ぐらを掴み引き上げ、その勢いに合わせるように頭突き。

相手の凹んだ額に右肘を打ち下ろす。

文句のない殴殺。

息一つ乱さず、眉ひとつ動かすことなく5人を始末したハウンドは娘に駆け寄る。

もう1人は気絶しているらしい。

セッカの目がハウンドの頬についた返り血を捉える。

「ひ…人殺し…」

「ち…違う!」

セッカの怯えた瞳にハウンドは言い訳をしようとする。

だが、何が違うのだろうか。

彼は今、怒りに任せ、私怨の殺しをしたというのに。

セッカは声に聞き覚えがあったようで目を大きく見開く。

「シュナイダー…さん…?」

それだけ呟くとショックで気絶してしまう。

ハウンドもまた娘に拒絶されたことは衝撃であり、その場にへたり込む。

「全く…何があったのよ♡」

ママが後ろから滝の国の軍隊を連れて入ってくる。

謎の爆発音と少女2人の拉致、そして街中を自由に疾走する男の通報を受けてやってきたのだ。

ママは本来、このような現場に出てくる立場ではないが、疾走する男がハウンドではないかと思い慌てて合流したのだった。

惨殺された死体と少女、そしてへたり込む獣人という異様な光景に立ちすくむ兵士たち。

ママは遠目に違和感を感じ、セッカへ近づく。

「ハウンド…最悪のシナリオかもしれんぞ。」

ぶつぶつと独り言を吐いているハウンドは答えなかった。

セッカの長い髪の隙間から、ハウンドと同じ犬耳が飛び出ていた。


軍の取り調べの結果、事件の全容は明らかとなった。

まず、セッカと友人は学校を出て帰路についていた。

そこへバンが現れて、2人をナンパ。拒否しようとしたが友人が車に無理やり乗せられそうになった。

その時、セッカはいきなり腕を掴んでいた男を引き摺り出した。

爆発はその時に起こったと見られ、引き摺り出された男はグチャグチャになったという。

一方で残りの男達はそれに驚く一方でセッカが気絶したのをいいことに彼女達を車に乗せ倉庫へ向かった。

死なれたことが公になれば面倒ごとになるという薄情な理由ではあったが、結果として突入したハウンドが残りも惨殺している。

身元がはっきりしたものはおらず、おそらくは反社会的組織、RISEライズの人間ではないかと見られている。

滝の国における調査任務についていたハウンドの独断での処理と身元不明の死体をわざわざ特定する必要もないだろうというママの判断そんたくでことなきを得た。


次回は水曜日

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