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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

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2-1 幕間の談話

天龍事変【一般情報】

龍歴298年に地下組織『トラ教団』が起こした龍の国、港の国、天の国へのテロ行為の総称。

当時の龍の国女王ドラゴ・フレイルを含む多くの人間が被害をこうむることとなった。

また、一連の事件以前から活動を行ってきていたトラ教団に対し、天の国を中心とした大同盟が結成する要因にもなった。

騒動終結後、主に天の国の鎮圧に協力した人物には恩赦ないし復職が認められており、指名手配であった白の部隊の2名、レイモンド・サイカーは龍の国に従事させることで事実上の執行猶予となった(レイモンドは所持していた財産の没収も行われた)。

加えて、死亡したとされていた元龍の国軍部長、行方不明の元大魔堂長は復帰することとなる。

彼らは龍の国の配下である一方、大同盟が求める際はそちらを優先することで他国の了承を得ている。


レイアの即位式典から1週間、お祭りムードは鎮まり、場内の片付けも完了していた。

龍の国の復興のペースは目覚ましく、すでに天の国などで保護されていた国民の大半が戻ってきており、城下町はかつての喧騒を取り戻しつつあった。

これには復興速度だけでなく、大同盟間の渡航が容易かつ安価になったことも大きい。

加えて龍の国へビジネスチャンスを求めて訪れるものも非常に多く、ヤタ重工は足早に支店を復旧させた。

それだけでなくシンゴを中心とした龍の国を担当する部署を立ち上げ、復興拠点としてかつてよりさらに大きな支店を構えている。

「熱心だな。たまには休んだらどうだ?」

龍の国王城にある資料室の一角、トータスは紅茶を机に置いてやる。

相手は資料の山を退ける。

「うーん。どうしても気になることがあってね。」

レイモンドは顔を出し、紅茶を啜る。

彼はコンサルタントとしての仕事の傍ら、自身の復讐の準備もしていた。

麦の国で惨殺された彼の妻子。

誰の指示で誰が行ったのか。

レイモンドはその全てに復讐するつもりでいる。

これまで教団というアバウトな容疑者像しかなかったが少しずつ見えてきたものもあった。

まず、教団内での財産管理は天使や外部の幹部ではなく司教長と呼ばれるトップの裁量で行われていたこと。

そして、現場でパルとハウンドが遭遇した第7天使ラキエは恐らく犯人ではないこと。

ラキエが犯人であれば汚れるはずの手がパルとハウンドによれば綺麗だったこと。

レイモンドが妻子の亡骸を発見したのは殺害から数時間経った後であり、それまでラキエが待機したとは考えにくく、実行犯が殺害し、煽るためもしくは、パル達とレイモンドの合流を嫌ってラキエが来た。とするのが今の仮説だ。

だが、今、彼の関心は自身のそれではない。

「見てよこれ。」

そう言ってレイモンドはトータスに一枚の資料を渡す。

教団による小規模テロの活動を記録したもののようだ。

「これが?」

「気になるのは砂の国と藁の国だよ。」

トータスはレイモンドの言う通り資料に目を落とす。

「砂の国の国内で起きた自爆テロ、そして藁の国で起きた車両連続爆破。両方とも教団の声明が出てるから間違いなく教団によるものだ。」

「これはよく覚えてるぜ。2つともこの一件が大同盟加入の契機になったんだからな。」

「そこだよ。」

トータスは自分の言葉を思い返し、目を見開く。

「気づいたね。教団のテロで大同盟の加盟国が増えた。今、教団の指揮系統はサーペントのそれじゃない。彼は裏でコソコソやるのが好きな陰気な奴だ。そんな奴は表立って強者と対立するような大胆な手を打てない。そして教団は戦力の拡充を目指している。」

「その大同盟が戦力を取り逃がした?」

砂の国、藁の国共に軍事国家である龍の国や風の国と比較してしまえば戦力は僅かと言えるが、それでも自国の軍隊を持つと共に財政面も安定している。

教団がこの二国を掌握できればプラスになるのは間違いない。

「そう。おそらく今、教団を指揮している人間の思惑じゃない。そしてサーペントもそれがわからないほど愚かでもない…と思ってる。」

「何が起ころうとしてる?」

「わからない。ただ教団は一枚岩じゃないし、それが僕らの味方とも言えない。」

レイモンドはそう言ってカップを返す。

「最後に聞かせろ。お前の思う今の教団のトップの人物像を。」

カップを受け取りながらの問いかけはどちらかといえば好奇心によるものだ。

会ったことのないサーペントの性格をトータスの理解以上に言い当てた感性を試したくなったのだ。

レイモンドは手を顎に当て考えた後、

「一言で言えば神…」

と呟き、続ける。

「自分のことを崇拝…いや、周りから愛されるタイプでタチの悪いことに能力がある。あれが目指しているのはサーペントと対極で、象徴として降臨したい人。多分だけどね。」

そうか。と呟いたトータスは部屋を出ようとする。

その背中に、

「賭けるかい?」

と言うレイモンドの声が声をかける。

トータスは振り返る。

「冗談じゃねぇよ。財産没収したのに、賭場で俺以上の貯金作った癖によ。」

2人の笑い声が響く。

主な被害者は被害額順にハウンド、ニニギ、ホエール、オルカ、パル、サーベルタイガー龍の国支店のオカマ、シンゴだ。

トータスも被害者ではあるが、参加が遅れたために被害が少なく済んだ。

「だってみんな弱いんだもん。」

あっさりと言うレイモンドを殴りたかったトータスはなんとか堪える。

手に持っていたカップは粉々になってしまったが。


パルは龍の国、陸軍庁舎の横にある花壇で土をいじっていた。

トータスの回収した球根だけでなく、麦や花の国といった作物の名産国から贈られた物資の中にあった種もここで育てている。

白の部隊は事実上、解散状態にある。

元々、フレイルの私設兵団としての面が強く、彼女が死去したこと、大同盟としての仕事の都合上、所属は龍の国の軍隊の方が都合が良いこと、パルのような大型戦力の投入がしばらくなかったことなどが重なったためだ。

ハウンドは大同盟レイアの命で無期限の滝の国調査任務を与えられている。

白の部隊が龍の国崩壊後に港の国で戦闘を行ったことの責任を取らせるため。と噂されるが実態としては彼の娘のことを知ったレイアの、

「親子が揃っているのに会わないなんてひどいです。」

の一言をハウンドが返せなかったためだ。

実際、彼は今、平和な時間を娘であるセッカと過ごしている。

ドクもまた天の国のシマヅに請われ死亡時画像診断(Ai)の発展に協力している。

「暇そうじゃないか。」

パルの隣にオルカがしゃがむ。

オルカもまた実家で花の栽培を手伝っていたこともあってか手慣れた様子で雑草を抜いていく。

「暇も暇さ。陸軍機動部隊隊長なんて大層な名札もらったって部隊はオレ1人なんだからよ。」

龍の国の軍隊は復帰者もいれば離脱者もいたことで大きく再編された。

トップにホエール、その下にオルカ率いる海軍とイーグル率いる陸軍となっている。

と言ってもドルフィンが引き続き監獄島へ出向となったためオルカと彼女の船の乗組員しか海軍はいない。

また、陸軍も同様でイーグルの下に機動部隊と魔法部隊が作られたが機動部隊はパル1人、魔法部隊も小隊規模であり隊長のハウンドと3名がいるだけのものだ。

これはテロ事件の折に爆発に巻き込まれたものや行き場を失って傭兵や山賊になったものが大半だからだ。

加えてサーペント直下はそのまま教団に合流していることも大きい。

一方で、王城警護はトータスを頂点にサカラなど十数名が名を連ねており、数としてもテロ事件前と大差ない。

「軍属が暇ってぇのは平和の証拠だよ。お嬢ちゃん方?」

2人の背後からホエールが声をかける。

「ガキでも今の世界は安定してねぇってわかんだろ。クソジジイ。」

パルは土のついた中指を立てる。

「ハウンドがいなくて寂しんだろ?」

「「は?」」

ホエールの言葉に姉妹揃って同じ反応をする。

オルカは静かに怒る。

「おねぇちゃん許しません。アタシより弱え奴に任せられるかい!」

「いやお前は自分の心配しなさいよ。」

「あぁん?!うるせえんだよクソジジイ!テメェがいなくなったせいで仕事増えて…」

ホエールの返しに対するオルカの切実な言葉。

「バカやってんねぇ…揃いも揃ってよ。」

気の抜けた雰囲気にトータスが割っている。

「パルちゃん、お前にお仕事だ。」

そう言ってトータスは封筒を渡す。

パルがそれを開けると中に一枚の紙が入っていた。

『ノーチラス号の回収を実行されたし』

レイア名義の命令書だ。

ノーチラスは砂の国でレイアを迎えた後、天の国へ向かい、そのままになっていた。

ノーチラスで天の国に向かった面々はタイミングこそ違えど陸路で帰国していた。

回収がここまで遅れたのはノーチラスを整備できる6番ドックの復旧に時間がかかっていたからだ。

「カレンの指示でやってた復旧作業がようやく終わりそうでな。ノーチラスを拾って戻ってくるだけだ。」

トータスが補足する。

他のドックがすぐさま稼働状態にできる程度の損壊だった一方で、6番ドックは龍の国を乗っ取る前提で動いていた教団が知らなかったこともあり、巻き込まれる形でかなりの破壊をされていた。

「了解。車の鍵くれよ。」

パルの言葉に答える代わりにトータスが鍵を投げ渡す。

パルは鍵をポケットにしまうと陸軍の庁舎へ向け歩き出した。



次回は水曜日

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