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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン1 Trigger of Catastrophe

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1-51 進んでいくということ

ルビリア・パル【個人情報】

龍の国の先王ドラゴ・フレイルの私設兵団とも言える『白の部隊』所属の兵士。

龍の国テロ事件では手違いにより指名手配となるが、女王最後の命令であった『トラ教団撃滅へ全力を尽くされたし』という命令書の通り、仕事を全うした。

結果として港の国、天の国の混乱終結に尽力、トラ教団の存在を公表するに至った。

快活な姿と龍の国の姫を守る騎士としてのアイドル性から少しずつ人気を獲得していっている。


龍の国テロ事件から半年後、復興の進む龍の国では天、龍、港のナンバー2であるツスル、トータス、ママが揃っていた。

「聞けば風の国のキメラ部隊長らしいやんけ?」

「そんな話は竿と一緒に捨てたわよ。」

「そんなことできるのか?」

「できるわけないじゃなーい♡オカマジョークよ♡」

談笑の背後では多数のゴーレムが家屋の修復を行っている。

ゴーレムだけでなく、化粧の濃い大男達や作業着姿の銀髪の女性もいる。

「せやけど脱走兵がよう復帰できたな?復帰というか再雇用か?」

「全てはレイア姫の尽力よ。」


今から3ヶ月前、復興作業の傍ら、レイアはトータスらと共に港の国を訪れていた。

港の国にもレイアが龍の国の姫であり、王位継承者であることを支持してもらうためだ。

それに加えて、港の国での一連の騒動の扱いについても論点となる。

港の国国王、ピア・ヤーポートは自国の軍のトップが件の教団幹部であったこともあり、あっさりと支持を表明し、大同盟への加入も約束した。

さらに、港の国におけるレイモンド救助も業務上仕方のないことだったとして龍の国へ賠償を求めない覚書おぼえがきにサインした。

教団に入り込まれたということへの贖罪もあったが、元々ヤーポート王自身、外交に奥手で、言ってしまえば臆病な性分であったため、幼いながらも毅然とした態度で話を進めるレイアと脇を固める屈強な肉体を持つトータス、稀代の天才詐欺師であるレイモンドと対峙し、完全に心が折れていたこともある。

調子に乗ったレイモンドは、空席となった海軍の長の席含め、サーベルタイガーから登用することを勧め、翌月にはママがその長になっただけでなく、多くの人員がサーベルタイガーから海軍所属となった。

サーベルタイガーの方も変わらず営業を続けており、脱走兵だけでなく、男であることが嫌になった者たちや借金、社会から逃げる者たちの駆け込み寺的な立ち位置となり龍の国へ支店を出すほどの繁盛となっている。

また、龍の国の復興に過剰とも言える援助を行ったのは港の国だけではない。

麦の国、滝の国もまた食糧を含めた支援を行っていた。

理由は単純に龍の国の戦力にある。

女王施設部隊として開放されたパルは今回の騒動で表に出ることとなり、半ば戦場の都市伝説と化していた龍の国のドラゴンの存在はそれだけで各国を震え上がらせた。

加えて、死亡していたとされたホエールの軍部長復帰、隠遁気味であったトータスが官僚長として外交に参加、行方不明だった大魔堂の天才イーグルの帰還はすでに最強であった龍の国の軍事力を手の届かない位置に押し上げた。

それだけにとどまらず、レイモンド・サイカーをトラ教団への工作を評価する形で強引に恩赦とし、相談役コンサルタントに抜擢するなど龍の国の人材面は過去に類を見ないレベルになり、壊滅状態の国であっても睨まれたくない一心で各国は支援を行った。


トータスは、港の国での会合を思い出し笑う。

「ありゃ本当に気の毒だったぜ。完全に孫の我儘に追い込まれるおじいちゃんだ。」

「調子に乗りすぎなんちゃうか?今じゃ麦やら滝やらの大同盟所属の国から物資が届きすぎて追いついとらんらしいやないか。」

「そうだよ。サボってねぇで手伝えよクソガメ。」

会話に割って入ってきたのはパルだ。

長髪を後ろでまとめ、頬には土汚れが付いている。

「んもう♡可愛い顔が台無しよ♡」

ママは持っていたハンカチで彼女の土汚れを拭いてやる。

「そういうわけだ。人手が足りんからお前らも手伝え。」

トータスの言葉に対して、ママは素直に応じたが、ツスルは不服らしい。

「アホ言え老害。ワシは帰るで。仕事溜まっとんのや。」

「仕事が溜まってんのはテメェが無能だからじゃねぇのか?ん?ソラ王が気の毒だぜ。」

反抗するツスルをトータスは煽る。

「ほう?どうやら頭の弱いカメには人間様に敵わんいうことを教えてやらんといかんようやのう?」

「なんだ?無能には俺がカメに見えんのか?眼科より小学校に行った方が良さそうだな?ケンジと一緒に登校するか?ん?」

ヒートアップしていく2人を横目にパルとママは作業に向かう。

パルは戦場以外で流す汗に平和を感じていた。


復興の進む龍の国から北東に車で5時間ほどの場所。

大同盟への不参加を表明している風の国ではトラ教団の会合が行われていた。

「リエルとラキエは不参加…ですか。勝手なことを。」

エルカは不満げに呟く。

「いつも勝手ですねぇ。そんなことだから失敗したんでしょ?」

サーペントは挑発する。

「君もまたお粗末な指揮をしたと聞いているが?」

マイセンが煽り返す。

それをきっかけに皆それぞれに口を開く。

あるものは煽り、あるものは嘲笑している。

皆、龍の国テロ以降の一連の作戦の失敗に苛立っていた。

参加者は生き残った天使であるエルカ、グディ、ウエル。

サーペント、マイセン、シュリーら、教団の外から協力していたものも参加していた。

そして、奥に座る男が口を開く。

「よい。余の計画において天使たちの動くステージは終わったのだ。これより教団は大同盟の描いたシナリオである、大同盟対教団という構図にそのまま乗る。皆のもの、力を集めるのだ。剣王会だけでなく同盟非加入国の軍人、政治関係者、地方貴族、傭兵団…その他多くを当たれ。力で大同盟を下し、教団による平等な世界を生み出すのだ!」

会合は奥にいた1人の男の声で終結した。

これまで黙して語らず、全てを天使やサーペントに一任してきた男。

トラ教団教祖にしてトップ、司教長パーシヴァル・プルトが動き出したことを意味していた。

会合の後、シュリーは迷っていた。

龍の国転覆に関した張本人の1人ではあるが、失敗した責を問われるのでないかと怯えていた。

実際には龍の国における作戦は成功していた。

ただ、フレイル、そしてドラゴの家計に名を連ねるレイアの存在が全てを狂わせた。

それは龍の国の中枢に近かった彼が察知すべきことでもあった。

シュリーはフードを被った教団の従者から肩を叩かれる。

「ん?すまない。考え事をしていた。すぐに…」

そう言って出て行こうとしたが従者は意味ありげに笑うとメモを渡す。

目を落とすと、風の国の外れにある廃坑の名が書いてある。

「お前はリエル…?!」

従者は消えていた。

風の国にはいくつかの炭鉱が存在する。

その中にはすでに廃坑となったものも含まれており、教団の武器庫として活用されている。

シュリーが呼び出されたのはまさに武器庫となっている廃坑だ。

薄暗い洞窟を進んでいくと、リエルとラキエが彼を迎える。

ラキエは笑顔を見せる。

「きてくれると思っていましたよ。シュリー・コンヌス。」

シュリーは不気味さを感じながら素直に疑問をぶつける。

「なんのようだ。会合すっぽ抜かしてまでやることか?」

ラキエは、えぇ。と頷く。

「私とリエルは教団からの離反を考えています。」

その言葉に背筋が凍る。

「貴方も行くとこないでしょう?協力しませんか?」

ラキエには協力することがわかっているようだった。

事実、教団内の立場は危うく、おめおめと龍の国に戻ることもできない彼には断ることができない。

「何を…するつもりだ…?」

それでも聞かずにはいられなかった。

自分が怯えていることがわかる情けない声だった。

「教団の理念の達成です。」

教団の理念。

それは天、港、龍の大国に偏ったパワーバランスの是正とコントロール。

故に教団の襲撃はこの3か国を標的とし、シュリーもまた、龍の国崩壊後に王政から議会制への移行とその後の支配を命ぜられていた。

ラキエは続ける。

「いいですか?教団の動きはわかっています。この流れに乗って大同盟と正面衝突。そのための戦力確保を命令されたでしょ?でもそれは…」

「教団の理念から大きく…いや、真逆の方向性だ。」

シュリーは口を挟む。

「その通り。暗躍によって世界を一つにしてまとめる。だが、これからの教団はそれとは真逆、表立って対立姿勢を示し、戦乱の世へと進める。冗談じゃない。そこにおける天使の役割は?貴方のような政治屋の役割は?答えは簡単、使い潰されておしまい…天使はもはや勧誘役の道化ピエロ!貴方はただの投資家スポンサー!その果てにあるのは教団の崩壊ですよ。」

ラキエの言葉は正しい。

少なくともシュリーはそう感じた。

現状、最強の戦力を有する龍の国と剣聖カインを有する天の国、サーベルタイガーの登用によって力をつけた港の国が大同盟にある以上、大同盟が結束してしまえば教団の戦力差は歴然である。

また、ソラウ・ソラが教団の存在を表にしたことで悪の教団対正義の大同盟という構図が多くの人の頭に入っている。

それにより、大同盟非加入ながらも支援を表明する国が出るのは想像に容易い。

「ならばどうする?戦乱の世において裏でコソコソと暗躍することはできん。我々はどうあっても教団側なのだぞ。」

シュリーは落ち着きを取り戻していた。

それは、教団からの離反という突飛な考え方があながち間違いではないのではないか。という結論に変わりつつあったからだ。

「簡単です。世界を大同盟に委ねる。」

シュリーは半ばわかりきっていた答えに静かに頷く。

世界を大同盟という一括りにし、パワーを比べる相手をなくす。

教団は大同盟から離れようとする勢力の抹殺となる。

だがそれはある意味で教団の理念とは異なる。

教団の理念、その本懐は過剰なパワーを持つ3カ国に打撃を与え、パワーを落とし、コントロールすことにある。

しかし、ラキエの意見はその逆で、すべての国をまとめてしまうというものだ。

それによって大同盟は過剰とも言えるパワーを持つことになるが、それをぶつける相手がいない。

そして反乱の兆候があれば教団が粛清する。

世界を裏から支配するという目的はある意味で達成され、パワーバランスの是正は強引ながらも達成されることになる。

悪戯に戦争を起こさんとする今の教団よりは本来の姿に近いと言えた。

「ダークヒーローか…国を捨てた男にはおあつらえ向きの仕事だ。」

「話が長くなって申し訳ない。リエルが寝てしまった。」

苦笑いするラキエとシュリーは握手を交わす。

ここに第三の勢力が生まれることになった。


龍の国テロ事件を発端とする一連の騒動の終点である天の国の騒動から1年が経とうとしていた龍歴299年、龍の国では新女王、ドラゴ・レイアの即位式典が行われた。

世界は緩やかに、着実に来るべき大同盟とトラ教団の全面戦争に向け、進んでいた。

大同盟非加盟国を中心に教団の拠点である『教会』と呼ばれる施設が設置され、各地で天使を含む教団と各国軍隊との小規模戦闘が行われていた。

小規模戦闘により危機感を抱いた砂の国などは大同盟への加入を表明。

非加入となったのは、教団の本拠地とも言われる風の国と隣国にして関わりの深い刃の国、戦乱そのものを止めるべきとした花の国、花と同じく非武装化を求めた船の国そして、サンヨウ、サンキョウ大陸での揉め事に巻き込まれたくないと中立姿勢をとったヘイワ大陸に存在する獣の国となった。

ヤタ重工を有する鉄の国は特殊であり、大同盟への協力を約束する一方、顧客を差別しないという企業理念から風、刃の国と引き続き取引を行っている。

戦力差は大同盟有利と思われているが、各地で散発的に発生していた自警団や、山賊の引き起こした暴力事件は極端に数を減らしている。

そういった非正規の戦力を教団が囲っているとの見方が強く、それらを含めると戦力差はほぼなくなると言われている。

次の引き金は崩壊ではなく戦乱を引き起こす。

そう誰もが考えながら静かな狂騒の時を過ごしていた。

対立構図が動き出したのは3ヶ月後。

龍の追う鉄の行方が導く答えが過去との決着を望むようにそれは始まることとなった。


Visitor From  the  Past.

そして来客は過去より来たる



シーズン1完結です。

シーズン2は7月1日(土)の0時公開です。

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