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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン1 Trigger of Catastrophe

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1-48 龍虎相討つ

血液【一般情報】

人体のみならず、動物の体内を流れる液体。

体の運営に欠かせないものであり、体内を循環する中で魔力と栄養素を運ぶ、細菌を倒す、傷口を塞ぐといった働きをする。

それ故、一度に多くの血液を失うことは生命活動に多大な被害を与え、場合によっては死に至ることになる。


パルは膝から力が抜けるのを感じたのが最後だった。

彼女の意識は失われ、体は己の血で濡れた床に前のめりに倒れた。

ヤマギ一刀流、捌式はちしき隔円斬かくえんざん

倒れた状態から放つ反撃の剣。

本来、力の入りにくい姿勢ではあるが、半神を碗部に集中、掌から押し出すようにすることで十分な威力で放つことができる。

剣を手放すという欠点を持つが、シュクチで接近し、追撃することで欠点を奇襲性と相手の防御に合わせたニノ太刀を放つという柔軟性に転換している。

カインとパルの歴然とした差、それは勝利への執念に他ならない。

それは時として経験を覆しうる要素となる。

勝利への絶対条件と言っていい。

カインは壁に体を擦り付けるように立ち上がる。

途中、膝から力が抜け、バランスを崩すが立ち上がることができた。

己のみちを行く。

一殺多生。

今、レイアを殺す。

それによって天の国の国民は救われる。

壁に体を擦りながら一歩ずつ進んでいく。

扉の前までもう少しというところで剣を拾うためにしゃがむ。

「…まて……」

蚊の鳴くようなその声に気付き身構える。

「待ってくれ…頼みが…あんだよ……」

パルは顔を上げることしかできなかった。

カインは静かに、

「言ってみろ。」

と答えた。

反撃もできないほどの相手であること、上では教団の兵達がハウンド達を抑えている。

それならば少し話を聞くぐらいの余裕はあるとカインは考えた。

「お前…姫を、殺すのか…?」

「そうだ。」

カインの言葉を聞いて、パルは体を起こす。

力を入れると血が吹き出すが、それでも座るまで動いた。

「なら…オレの首でそれを勘弁してくれ…」

パルはカインの肩に手を乗せる。

だが、カインは首を振り否定する。

しばしの沈黙。

反応のないカインを見て、パルは自分の声が小さすぎて届いていなかったのだと気づくと、腕を首に回し、引きつける。

そして、カインにもたれるようにして耳元で言い直す。

「教団は…私との衝突を避けようとしている…なら、私の首は姫のそれと価値は同じはず…」

カインの頭に疑問が生まれる。

「なぜだ…なぜそこまでする?まだ、救われる可能性もある。なのになぜ、姫のために死のうとする。」

カインは先ほどまでの戦いでパルの底にあるものが生存だと見抜いた。

しかし、今、彼女は自分の命を差し出すことで他人を救おうとしている。

カインの疑問にパルは笑う。

声は聞こえなかったが、笑ったような気がした。

「あの人は…これからの時代に必要なんだ…女王あのひとと同じ思いを目に秘めている…だか…ら…」

パルはまだ言葉を繋ごうとしていたが、意識を再び失う。

「パルゥ!」

トータスが慌てて駆け寄る。

その声に驚いたのか接見の間の扉が開く。

外の声は中へ届かないようになっているが、先ほどの爆発で扉が変形したために防音性が失われたのだ。

「どうしたんですか?!」

「見ない方がいい!」

ソラの警告も虚しく、レイアが驚きの声と共に顔を出す。

彼女の視界にあるのは自分を守るために戦ってくれた1人の人間の姿だった。

「なんで…」

トータスと共に地下へ戻ったツスルは状況を察すると、カインの胸ぐらを掴み立ち上がらせる。

「剣聖ぇ!おのれ何やったんかわかっとんのかぁ!」

「やめてください!義兄にいさん!!」

ツスルの叫び。

ソラが間に入ろうとするが、それよりも早くツスルは拳を固め、カインを殴りつける。

トータスはツスルを羽交締めにして引き離す。

「離さんかい!お前!身内を殺されてんねんぞ!」

「馬鹿野郎!こいつはドラゴン(パル)だぞ!最強の兵士だ!俺とお前が突っ込んでも勝てねぇような存在だぞ!そいつが簡単にくたばる訳ねぇだろ!」

「やめてください!」

その一言で水を打ったように静かになる。

トータスとツスルの口論に割って入ったのはレイアだ。

彼女は目に涙を溜め、僅かに震える声を強気な態度でかき消しながら指示を出す。

「まだ助かるのかもしれないのなら断罪よりもそれを優先なさい!」

レイアは倒れたカインへ目をやる。

それは怒りではない。

冷静さを秘めた目だ。

「あなたがやったことは追って対応します。剣聖カイン。」

パルの脈を測っていたツスルは微かに指に触れるそれに歓喜の声を上げる。

「脈はまだある!カメぇ!ワシは病院の手配をする、お前は…」

「待ってもらおうか!」

ツスルはトータスにパルの搬出を指示するつもりだったが、ドクがそれを止めた。

なんや。とツスルは呟く。

横入りされたからというよりはドクの連れてきた恐ろしく非現実的な出立の大男に驚いたのだ。

「無礼は承知!パルちゃんを救うならここは私達に任せてもらう!」

女性ものの服を着た恐ろしく屈強な人物オカマは地面に棺のような機械を置いた。


ほぼ同時刻、地上に上がっていたノーチラスに一台の軍用車が近づく。

「来たね。」

レイモンドは待ちわびたそれの到着を出迎える。

「お久ね♡色男♡」

「僕は船に残る。乗るのはハウンドだ。もうすぐ出てくるよ。」

レイモンドは運転席に座る彼に通信で伝えたことを改めて伝える。

気絶から起きたハウンドがカレンから連絡を受け船から出てくる。

と同時に言葉を失う。

「やだやだ♡ちょっと貴方、可愛すぎよ♡」

彼はハウンドを見ると両手を頭に乗せ動物の耳に見立てて笑う。

運転手は奇妙ながら屈強な男が厚化粧をしている。


龍の国側でも動きがあった。

港小島で待機していた船団が動き出したのだ。

「だ…大丈夫なんでしょうか…」

不安そうな声を出すドルフィンの頭をオルカは、心配ない。と言わんばかりにポンポンと叩く。

船が進みだすと共に炸裂音が響く。

ドルフィンが挑発したときに散布した機雷が炸裂したのだ。

港小島の灯台にいたサーペントはすぐさま、船の動きを止めさせる。

想定外ではあるが、さすがに混乱するほどではない。

サーペントは使い魔を呼び出すと、港から龍の国に向けて体を伸ばさせる。

その間に、使い魔であるヘビの尾のあたりにディプタドが集まってくる。

ヘビの頭が、龍の国の海岸へ届くと共に、ヘビはふくらみ、橋のようになる。

その上をディプタドが進んで行くことで上陸させるのだ。

ディプタドの軍勢が一糸乱れぬ行軍で上陸していく。

軍勢が龍の国に押し入る。

「さぁ!気合い入れろよ…!」

オルカ、ホエール、ドルフィン、バイソンの4人が迎撃のために外に出る。

眼前に迫る軍勢。

だが、横から撃ち込まれた砲弾が、ディプタドの隊列を崩す。

「間に合ったようね♡」

屈強な男たちを乗せた3台のトラックがオルカたちの前に止まる。

「なんて絵面の連中だい…」

荷台からゾロゾロと降りてくる男たちの化粧姿を見たオルカは辟易する。

「んもう♡そんなこと言っちゃヤよ♡」

「どこの国の特殊部隊だ?所属を名乗れ。」

バイソンの言葉を聞き、男たちは、名乗りを上げる。

「国境も♡」

「国籍も♡」

「性別も♡」

「超曖昧♡」

「イカれオカマのサーベルタイガー♡義によって♡」

「スケち♡させてもらうわよ~♡」

バイソンはめまいを覚える。

港の国で聞いた『サーベルタイガー』。

脱走兵の集団だと聞いていたが、よもやこんなにも濃ゆい連中だとは夢にも思わなかったからだ。

オルカとホエールは彼らを気に入ったのか腹を抱え、笑っている。


天の国、王城の地下、サーベルタイガーのママは持ち込んだ棺にパルを納める。

ツスルはその棺がなんなのかに気づく。

「フレイル陛下の遺体の保存に使った冷凍装置やないか!確かにそれなら長時間持つかも知れへんけど…どこへ運ぶんや?」

「守護の森だ。フレイル女王の遺体はシマヅくんに頼んで病院の霊安室に移してもらった。」

ツスルとソラは目を見開き驚く。

「ドクトル・シュナイダー、あなたは伝承を信じるのですか?」

「伝承?ワシが信じるのはこの子だ。」

ドクは冷凍装置を操作しながら答える。

操作が終わり、ママは棺を担ぎ上げる。

「3時間が勝負だ。」

ドクはそう伝えると、足早に来た道を歩み出す。

「待って!」

レイアの声が2人を止めた。

「私も行きます!」

その言葉を聞いたドクは静かに頷いた。


ソラとレイアのサシでの会合直前、レイモンドは港小島への奇襲を提案した。

その一連の打ち合わせの後、パルからの指示でサーベルタイガーへ連絡を取っていた。

それに2つ返事で答えてくれたのは幸運と言える。

状況を把握した彼らは、パルの指示通り3つの分隊へすぐさま再編。

1つは龍の国への増援。

2つ目は天の国に残った戦力ハウンドの輸送。

3つ目は龍の国での戦闘を考慮してパルに輸血を行うための輸送。

これによりトラを食らう虎が龍と共に戦場を荒らすこととなった。


次回は水曜日

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