1-44 獣の戦(いくさ)
獣人【一般情報(一部個人情報)】
龍戦争から存在していたとされる種族。
現代ではヘイワ大陸を中心に生活している。
一方で少数ながらも他の2大陸にも生活しており、混血の存在も確認されている。
非常に高い魔力、戦闘能力を有しており、キメラ兵士にまつわる技術の原典でもある。
獣人というのは総称であり、鳥人、人狼、竜人などがいるとされる。
龍の国の軍人、セリンスロ・ケンは遠い祖先が人狼である。
人狼としての力を引き出したハウンドは、ファエルへととびかかる。
その動きは獣のそれであり、もはや、人間らしさなどない。
ファエルはハイキックでハウンドを迎撃しようとするが蹴り足に激痛を感じ後退する。
(食いちぎられた…!?私が…?)
皮肉な話ではあるが、事実、ハウンドの口には彼女の足が咥えられている。
ハウンドは頭を振ってそれを投げ返す。
「遊びたいわけ?思考まで子犬になっ?!」
ファエルは余裕を見せるつもりだった。
言葉を遮る腹部への一撃に2メートルほど吹き飛ばされる。
ハウンドは投げ返した足で彼女の視線を誘導しただけだった。
咳き込みながら起き上がろうとするファエルだったが、ハウンドの前足に頭を掴まれる。
メキメキと頭蓋の悲鳴が聞こえる。
「GYYYYYYAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
ハウンドは雄たけびを上げながらファエルの頭を思い切り叩きつけた。
何度も。
ファエルの意識があったのは最初の3回までだった。
後は顔面の半分潰れたそれを本能のままに叩きつけられたのだった。
ハウンドは更に7回ほど叩きつけたところでファエルの反応がないことに気付く。
しかし、彼女の顔面が再生を始めていることに気付くとそのまま片腕で背中側へ投げる。
仰向けになったファエルに馬乗りになったハウンドは前足で殴りつける。
また、不可思議なことにファエルの羽は1発殴られるごとに小さくなっていく。
再生し意識を取り戻したファエルはそのことに気付く。
(まさか…殴りつけ…ながら…魔力…食って…)
ハウンドの連打は止まる気配がない。
このままでは自分の魔力を食らいつくし、再生できなくなる。そう思ったファエルの考えは正しかった。
「いい加減に…なさい!」
ファエルの腹が大きく開く。
彼女の切り札でもある下の口は人を丸飲みするほどの大きさだ。
「THAAAHHHHH!LAAAAAHHHHHHH!」
ハウンドの咆哮に答えるように彼の手に氷の柱が生み出される。
彼はそれをファエルの下の口に突き立てる。
下の口は氷の柱を咬み砕くことができず、大口を開けたまま塞がらなくなる。
更に、柱は上下の端から広がり、口を開くこともできなくした。
「UUUUUUUUURRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!」
ハウンドが再び雄たけびを上げ、ファエルの顔面を後脚で踏みぬく。
ファエルの頭は一撃で潰された後、体ごと砂のようなものになって消えていく。
「GgggggLAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
1人勝ち残ったハウンドの雄たけびは城全体を揺らすほど大きなものだった。
その雄叫びと振動に思わずトータスとリエルは思わず手を止める。
酔っ払いの殴り合いのように胸ぐらを掴み合っていた2人は示し合わせたように手を離し距離を取る。
直感的に戦闘している場合ではないと感じたのだ。
「ハウンド…」
「なんか知ってんのか?」
トータスの呟きにリエルは反応する。
「ちょっとな。不味いかもしれんぞ…」
そう呟いたトータスは背後から猛スピードで接近してくる何かに気づく。
「AAAAAAAAHHHHHHHHHHHHH‼︎」
ハウンドが雄叫びを上げながらトータスに殴りかかった。
地下。
接見の間の扉の前に座っていたパルの前に1人現れる。
パルはそれを待ち侘びたように立ち上がる。
「オレはずっと考えてたんだよ。どうやったら教団は天の国で軍事クーデターできるかなってよ。」
その言葉を聞いた1人は立ち止まって耳を傾ける。
「この国の状況を聞いてからずっとだ。お前がいるのにどうやるんだろうなって思ってたよ。」
必死とはこういうことを指すのだな。とパルは目の前の1人から放たれる殺気にそう感じた。
次回は水曜日




