1-37 死と謎と
魔力式MRIの設定及び医療用語等はChatGPTとの共作です。
ファクトチェックは簡単に行いましたが現実のものと異なる場合がありますので念のため。
36 死と謎と
MRI【一般情報】
魔力(Mana)共鳴式(Resonance)画像法(Imaging)の略。
魔力によって特定の波長のエネルギーを生み出し、それが体内の特定の分子に吸収されて共鳴反応を起こすことを利用した診断機器。
画像は断面図として出力されるがそれを元に体内の様子をコンピューター上に再現することもできる。
旧来は磁気(Magnetic)による方式が存在していたが、現在ではこちらが主流となっている。
磁気、魔力共に略称が同じなのは販売元のヤタ重工が商品イメージを掴みやすくし、導入をスムーズにするためあえて同じにしている。
王都大学附属病院の地下喫煙所で一服していたパルとハウンドの元にレイアがやってきた。
2人は慌てて灰皿にタバコを押し付ける。
そのままでよかったのに。とレイアは申し訳なさそうに言うが、仮にも姫の前でタバコを吸うようなことは彼らの忠誠心が許さなかった。
「どうかなさいましたか?」
ハウンドは言葉を選んでいる様子のレイアに声をかける。
レイアは顔を上げると、
「はい。2人が船で話していたことについてです。」
ハウンドはなんのことか理解しきれていなかったが、口論になった話題だとパルはすぐに合点がいった。
「貴女を正式な姫として女王になっていただくかどうか…ですね。」
パルの言葉にレイアは頷く。
パル自身、熱くなって反論していたのは彼女もまたハウンドの思いに通ずるものがあったからだ。
12歳の少女にいきなり滅んだ国の長として就任してもらうということはある種の無責任でもある。
それは彼女にしかできない。という考え方は一種の思考停止でもある。
加えて、彼女のカリスマ性に賭けるのではなく、龍の国を手中に納めんとする教団へのカウンターでしかなく、パルは彼女を自分たちの都合で復讐の道具として扱うのは気が引けた。
それは、敬愛するフレイルの娘であるという事実を含めてだ。
「ハウンドの言葉。とても嬉しかったです。イーグルから私が龍の国の姫であることはずっと言われてきました。龍の国がテロで滅んで、母が死んで…でも、私自身どこか。その、言っていいかわかりませんが他人事のように感じていたんです…」
無理もない。王族でないハウンドでさえそう思った。
これまでの情報を総合すると、レイアは龍の国に足を踏み入れたことはない。
レイアにとって龍の国とは隣の大陸の国でしかない。
そんな国の女王になってくれ。などと言われたところで不安になることも、他人事のように感じても、なんら不自然ではない。
それは。ハウンドは言葉に詰まる。
反射的に自分自身口を開いたのはよかったが、なんと返せばいいかわからなかった。
「無理もないと思います。オレ達だってどうすればいいのか。よくわからないままここにいる。」
横槍を入れたのはパルだ。
彼女はレイアの前にひざまづくと手を取る。
「ただこれだけは誓わせてください。オレは…オレ達は貴女を守ります。貴女の意思を尊重します。貴女の龍として。」
薄暗い地下で行われた宣誓は、覚悟だけではない。
亡くなったもの達への鎮魂と受け継いだものとしての責任だった。
一行は検査を終えたという報告を受け、Aiユニットに併設された部屋に集まっていた。
撮影されたMRIを元に医師から説明を受けるスペースだが通常の診察室などと比べて広めに作られている。
まず。シマヅはそう切り出して一枚の画像を出す。
コンピュータによって作られた臓器の画像のようだ。
「これがご遺体の心臓部です。弾丸は真っ直ぐ心臓を貫いた後、背中へ貫通しています。ただし…」
「弾丸じゃない…?!」
シマヅの声を遮るように声を上げたのはドクだ。
「弾丸は回転しながら進む。それは体内に入っても同じだ。つまり、打ち込まれた弾丸は肉や骨を巻き込むようにして進む…」
ドクの解説をシマヅは引き継ぐ。
「それに対して画像ではストローのようなもので綺麗に円柱状にくり抜かれています。つまりこの穴は…」
「魔法だな。こんなに綺麗に開けるとなるとかなりの専門的な光魔法の使い手でないと無理だ。光魔法はなんでも作れるように見えて扱いが面倒だ。太い円柱を正確に作る必要性がわからねぇ。」
次に遮ったのはイーグルだ。
「可能か不可能ならどっちだ。」
パルがイーグルに問いかけると、彼は少し間を置いて、可能だ。と呟く。
「可能だがこれをやる意味はなんだ?調べれば1発でおかしいってわかるのに…」
イーグルは腕を組んでぼやく。
「自己顕示欲だよ。イーグル。」
今度はレイモンドが仮説を立てる。
「これをやった人は外見だけ見て慌てふためく姿を見た後、自分でネタをバラしてさらに慌てるのを見たかったのさ。こういうタイプは上司が嫌いで表立って対立するのを怖がっている。自分を狡猾だと思っている人間だ。」
レインモンドの話にハウンドはある人物を思い浮かべる。
「サーペントだ…!あいつならこういう仕掛けをやりかねん。」
トータスも頷く。
「なんや君ら…烏合の衆どころか探偵みたいやで…?」
ツスルは流れるように進む推理に舌を巻く。
「まぁしかし…だ。この傷をつけたのがサーペントだと仮定しよう。実際あいつならこれをやった後、さも当然のようにパルを現行犯で捕まえることはできるだろう。だが、本来の死因はなんだ?」
トータスの疑問に、シマヅは別の画像を出す。
脳のようだ。
「直接というか死因は脳卒中です。ここ!頸椎!つまり首から魔力を注射されています。これが動脈を塞ぎ脳卒中を引き起こし、死に至らしめた。魔力は時間経過で消えるから証拠は残らない。」
シマヅも淡々と真実が明らかになるこの状況に興奮している様子だ。
「それなら技術はわかる。」
再び、ドクが口を開く。
「動物の安楽死などに用いる魔力針だ。整体にも使われる。傷が小さく高い強度と薬品の注射量を感覚的に制御できる。魔力を流すことで止血や手術の際に術野の正常な血管を保護するためにも使ったことがある。一般の医療現場で使われてるかはわからんが。」
シマヅは手を叩き、正解です。とドクを指差す。
「これを実践しているのはドクトル・シュナイダーのフォロワーだ。貴方が作り上げた技術ですし!」
まぁ、落ち着いて。とドクはシマヅを宥める。
「マイセンだ。人のために使われるべき技術をよもや殺人に使うなど…」
ドクの教え子への言葉に怒りがこもる。
パルもまた、自身を改造した首謀者でもあるマイセンに対していい感情は持っていない。
「これが全てってことでええか?シマヅくん?」
ツスルはシマヅに聞く。
「えぇ。女王陛下には他に異常は見受けられませんでした。」
ツスルはシマヅの言葉を聞いてレイアの前に立つ。
「こんな場所で申し訳ありませんが、面会を…」
レイアは静かに頷くと、扉ではなくシマヅの前へ進む。
「シマヅ先生…我々のためにありがとうございました。面会は時間をかけませんから…」
時間をかけない。という言葉に一同が呆気に取られる間にレイアは部屋に入って行った。
静かな部屋に微かに漏れ聞こえる泣き声。
パルが、オレに任せといてくれ。と言い。
皆、パルを残して部屋を出た。
パルは怒りのままに左手首に残された手錠の残骸を引きちぎる。
アザのように刻み付けられた傷はすぐに塞がった。
復讐する相手を見つけた。
それが、より怒りをはっきりと自覚させた。
次回は土曜日




