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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン1 Trigger of Catastrophe

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1-32 龍と鷹と天使と

イーグル【個人情報】

元大魔堂長。

天才ジーニアスと呼ばれ、魔法の扱いに精通する。

特に稲妻を魔力で起こす、雷魔法はその難易度から理論や術式はオープンになっているにもかかわらず彼しか使うことができないとされる。

ハウンドの同期でもあり、共に陸軍魔法中隊の隊員として活躍した。

大魔堂へはその才能を買われ、保護されるように引き抜かれている。

コードネームを持つのは陸軍時代の名残であり、彼自身も大魔堂の所属となった後もコードネームを使っていたためイーグルで定着している。

大魔堂解散後の足取りについて記録はない。

本名、イザード・ウルパム。


砂の国の入り口とも言えるヒコノという街にパルとカレンは足を踏み入れていた。

手続きが緩いオープンな場所だが、それ故、危険な薬物の取引などにも用いられている。

パルは出店で買ったスナザメの串焼きを頬張りながら歩いていく。

フレイルからはここで鷹を探すように言われているが詳細はわからない。

無論、当てもなく歩き続ける気はない。

カレンの持つ魔力探知器としての機能とパルの勘で少しずつ場所を絞り込んでいた。

幸い、このヒコノは人の出入りが多いものの車両の通りは少ない。

簡単に距離を離されることはないだろう。

ふと、人混みの中にいる赤い髪の男が目に止まる。

「あいつ…」

パルには見覚えがあった。

龍の国で一度、戦った相手。

「おや?私のツキもまだ捨てたものじゃないですね…」

第一天使エルカ。

そしてその視線の先には一人の少女。

少女は怯えながら、後退りするが、背後の行き止まりが後退を止めた。

「貴女が何者かは置いておきましょう。あの厄介なイーグルもいないようですし…」

イーグルはいなくてもドラゴンはいるぜ?」

エルカの後頭部に突きつけられたパルアギトに物怖じすることなくエルカは笑う。

それが通用するとでも?」

「試してみるか?この距離ならガキでも外すことはねぇぜ。」

パルは挑発に乗る。

カレンはすでにノーチラスへ連絡し、中継を始めていた。

エルカが少女へ距離を詰めようと踏み込むが、足が前に出ない。

彼自身、気付かぬうちに地面から伸びる土の足枷をつけられていた。

「イーグルか!」

落としていた視線を上げるが、イーグルは見当たらない。

辺りを見回そうと首を振ったのをパルが見逃すはずもない。

両膝を後ろから打ち抜き、膝をつかせ、エルカの背中を転がるようにして少女の前に降り立つ。

少女の目は間近でみる戦闘に恐怖していた。

パルの方は、少女と目があった瞬間、確信めいたものを感じる。

龍の国の姫君。

背格好も聞いていたものと一致する。

女王フレイルの娘。

その雰囲気はなんとなくだが、母親を想起させる。

託されたもの。

怯えながら後ろ指差す少女の絞り出すような声にならないそれは確かに、フレイルと似ている。

「今ちょっといいとこなんだけど?」

パルが不機嫌そうにぼやくと、

「なら、俺が相手しよう!」

膝を再生させ立ち上がったエルカとパルの間に割り込むようにイーグルが現れる。

「ストーカーか?お前は…?」

パルは久しぶりに会った知人に対して小言を垂れる。

「見えない方がいいこともあるのさ。ドラゴン。」

イーグルはそう言って笑うと、杖を地面に当てる。

すると、エルカとイーグルを囲む箱のように結界が生み出される。

パルは少女を抱き抱えると、行き止まりの壁を蹴って高度を稼ぎ、結界の天井を駆け抜けて街へ走り出す。

カレンもまた、パルの行動に追従するように走り出す。

エルカは反射的に結界から出ようとするが、透明な壁に阻まれる。

「当然といや当然だけどな。追わせはせんぜ。」

エルカは苛立ちを隠せない。

「追わせない?こないだのように時間稼ぎでもするんですか?無駄でしょう?貴方を消してアレを追いかければいい。それに…」

エルカの言葉に気を取られていたイーグルは反応が遅れる。

目の前から忽然と消えたのだ。

最初からそこにはいなかったように消えたエルカを追うために彼もまた走り出す。

(ドラゴン(あいつ)…お嬢さんが誰だか知ってんだよな?)

一抹の不安がよぎった。


パルとカレンは少女を抱えたままノーチラスとの合流地点へ向かっていた。

「あ、あの!」

少女の声にパルは足を止める。

「おろしてください!イーグルが!」

先ほどまでの怯えた様子はない。

パルは少女を下ろすと、跪く。

「申し訳ありませんがその辺の話は…」

「貴女が私を迎えに来たのはわかりました!でもイーグルを助けないと!」

少女の言葉を遮るようにパルは突き飛ばす。

転がり、肘を擦りむいた少女が顔を上げると、黒い液体が顔に数滴落ちてきた。

「おやぁ?貴女にとってもその子供は大事ですか?それとも単に守ったんですか?いずれにせよ、貴女がくたばってくれるならこちらとしては助かりますがね。」

パルは思わず吐血した。

いきなり現れたエルカの左手から伸びる爪はパルの腹部に深々と突き刺さっている。

軽口も返せないパルの様子が傷の深さを物語っている。

パルは視界が段々と狭まっていくのを感じた。

『彼女を保護しろ!』

ノーチラスからの指示を受けたカレンが動き出すよりも早く、何者かが駆けつけ、エルカを殴り飛ばす。

ハウンドだ。

全力疾走してきたためか、彼の来た道は大きく抉られている。

ハウンドはパルを抱き上げる。

目は虚で、呼吸も苦しそうなのが見て取れる。

「イーグル!手を貸せぇ!」

怒声を上げるのと同時にハウンドの体から4体の猟犬が飛びかかる。

「やっと追いついたってのに…!」

走ってきたイーグルは息を切らしなが杖を振る。

「雷よ鳴け‼︎」

杖にはめられた宝玉が輝くとそこから稲妻がエルカに向かって伸びる。

猟犬たちと挟み撃ちになる。

「面倒な…」

エルカは羽を纏うようにその場で回るとドーム上に結界が生み出される。

「防御陣か!」

イーグルは分析しながらハウンドの隣に追いつく。

エルカの視界は自らの羽によって遮られる。

1秒程度の僅かな時間だが、2人が撤退しようとする動きを見逃してしまう。

「なにっ?!」

その声は2人が逃げたことではなく、上空から巨大な魔力の砲弾が視界に入ったからだ。

全力のバックステップで着弾点から逃れるが、その場所を読んでさらに追撃の砲弾が飛んでくる。

エルカの目は砲弾の発射点を追う。

見えたのは黒い巨大な棺のようなものだった。

ノーチラスである。

異常事態を察知し、魔力による低空飛行ホバーによって陸上に上がってきていた。

ノーチラスはイーグルとハウンドを収容したのか後退しながら砲撃を続ける。

エルカはヒコノの街の外れまで後退していた。

砲撃によって混乱した声がすぐ後ろまで来ている。

(打っては来ない…)

騒ぎ立てる街をよそに砲撃はピタリとやんだ。

だが、それは街への被害を出さないという人道的な理由ではないことはエルカにも理解できた。

「逃げたか…」

ポツリと呟いた言葉は落ち着き始めた街でも誰も聞き取れないほどだったが、彼の怒りは背中から十二分に伝わってきた。

「あら?貴方らしくないわね。」

恐れ知らずとも言えるその声に影から見ていた街の人間たちは震えた。

「ファエルか。」

男の知り合いらしい彼女と何度か言葉を交わすと2人は光に包まれるようにして消えた。

ヒコノの住民は自分たちの街であるにもかかわらず取り残されたような感覚に囚われるのだった。

次回は水曜日

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