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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン1 Trigger of Catastrophe

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34/308

1-27 合流

ドルフィン【個人情報(含_軍事機密)】

龍の国が開発したデザインベイビーの1体。

専用に開発された戦艦ドルフィンの魔力炉及び艦内システムとリンクしており、同戦艦を手足のように操る。

単体での戦闘は考慮されていないがオルカに師事し、彼女の元で一線級の力を身につけている。


パルとハウンドは予め設定していた港の国北西の海岸に到着していた。

「どこ行った?」

砂浜にできた着地の模様を確認しながらパルは尋ねる。

あれだな?ハウンドは遠くの海上を指差す。

そこは港の国の市場のあたりだ。

「おいおい…これじゃあ…」

パルは目を見開く。

脱出用の船が追いかけてくるであろう陣営の近くにいる。

あれではレイモンド奪還を狙う追撃部隊と正面からかち合う形になる。

『…る……ど…』

ノイズ混じりの音声がインカムから聞こえてくる。

パルとハウンドが視線を合わせる。

すると目の前に黒い箱のような物体が浮き上がってくる。

『パル!ハウンド!』

数日会わなかっただけだがその声に懐かしさを感じる2人。

「ドク!無事だったか‼︎」

パルははしゃぐように手を大きく振る。

『あぁ!ともかく早く乗ってくれ!レイモンドも乗っている!」

懐かしさすら感じるノーチラス右舷のハッチが開いた。


バイソンにトドメを刺したはずのフィエルは拳から伝わってくる感触に違和感を感じる。

(砂…いや水か…?)

バイソンの死体を投げ捨てると、地面にぶつかった衝撃で水があたりに飛び散る。

フィエルが周囲を見渡すと、全速力で走り去ろうとする車を見つける。

「小癪なマネを…」

そう呟くと羽ばたくようにして飛び上がる。

逃げる車の後部座席に横たわるバイソン。

運転手は護送を担当していたドルフィンだ。

獲物エサを見つけた猛禽類のように上空から素早く飛び込む。

狙いは車が、入って行った一本道。

その進路だ。


ノーチラスのブリッジではパルが再開の喜びをドクにぶつけていた。

「ドク!よかった…ホントに…」

ドクは苦笑しながらパルの頭を撫でてやる。

「一体、どうなってるんだ?」

ハウンドの問いに、

「あ、それ僕も聞きたい。」

と聞きなれない声がする。

声の主はレイモンドだ。

先ほど出会ったばかりのはずだが、すでに馴染んでいる。

「うむ。とりあえず、ワシの方だが、龍の国近くに潜っていたところ、オルカ達に見つかってな。なんでもお前達が港の国で騒ぎを起こすというもんだからついてきたのさ。」

「サフィアが来てるのか?!」

ドクの説明を遮るようにパルは驚きの声を上げる。

「あぁ。なんでも緊急事態だからってことでな。ワシがここに着いた時、港の国ではお前達の襲撃に合わせて民間のゴーレムが暴走して混乱状態だった。どうしようかと思っておったらツムジの反応をマザーが拾ってな。そこであのサーベルタイガーと会ったんだ。」

ハウンドは相槌を打ちながら補足する。

「俺達は大書堂から港の国に入った。そん時、騒ぎになったから大書堂が事態を察知してオルカに話をつけてくれたんだろうな。」

ドクは、不思議そうな顔をする。

「大書堂?なんでまたそんなところに…?」

色々あったんだよ。とパルは笑って誤魔化す。

「まぁその辺は追々ってことで…」

ハウンドもパルに合わせてドクに続きを促す。

ドクは不服そうな顔をしたが、すぐに元に戻る。

「船の連中はゴーレムの対応に向かい、ワシはレイモンドを回収して潜航していたというわけだ。」

「大体の事情は分かった。マザー。市場で暴れているゴーレムはどうなっている?」

ハウンドはマザーに問いかける。

「現在は沈静化しているようです。船もこちらに向けて動き出しています。」

レイモンドはマザーの声に驚いていたが、

「一件落着ってところだね。」

と、立ち上がって笑って見せた。

彼の声を聞いたハウンドは、もう馴染んでるな。と少し思った。


フィエルは路地に激突するように着地すると、右の拳を振り抜き、突っ込んでくる車のフロント部分を破壊した。

投げ出されたドルフィンとバイソンが地面に転がる。

フィエルは最初の標的を手負いのバイソンに決めると、悠然と歩き出す。

「さて…まずは貴方から死んでもらいましょう。より良き世界の礎になりなさい。」

バイソンの髪を掴もうと手を伸ばす。

しかし、彼の体は水の流れに乗って移動していく。

おやおや。とフィエルは呆れて見せると、一飛びでドルフィンとの距離を詰める。

ドルフィンが目を見開き驚く。

フィエルの右足の着地が踏み込みとなって左の蹴りが飛んでくる。

そのモーションはドルフィンにはスローモーションに見えたが、防御は間に合わない。

腹部に強烈な痛みが走る。

呻き声を上げるよりも早く、左、右のワンツーが顔面を襲う。

「いけません。いけません。順番は守っていただかないと。」

フィエルは咳き込む彼女の姿を楽しむように両手で指を鳴らす。

彼女が壁を支えに立ちあがろうとすると、フィエルは興奮した様子で声を上げる。

「しかぁし?そんなに死にたいのであれば?トラ神様も?順番が違ったことを誤差としてお許しくださるでしょうねぇ?」

フィエルの言葉からターゲットが自分に向いたと確信したドルフィンは術式のある右目に魔力を込める。

四連刺水突しすいとつ…」

彼女の言葉いのりに呼応してフィエルの背後から4本の水の柱が勢いよく伸びる。

(し…心臓を…)

ドルフィンの意志を汲み取るように柱は先端からうねり、フィエルの心臓へと伸びる。

フィエルは余裕の笑みを崩さない。

(当たる…)

いかに素早くとも時間差で襲いくる棘を回避できない距離だとドルフィンは確信した。

「当たりませんよ。」

ドルフィンの思考を読んだようにフィエルは自慢げに答えると、目の前から消える。

身構えようと腕を上げるが、それよりも早く、フィエルの右ボディが突き刺さる。

彼女の体内から、鈍い音がした。

喉を駆け上がってくる何か。

「かはっ…」

弱々しい声と共にそれは口から出る。

彼女はそれが視界に入って初めて自分の血だと知った。

息が苦しい。

薄れゆく意識の中、彼女の視界が最後に捉えたのは弓を引くように力を貯めるフィエルだった。

バイソンの時のように魔法みがわりを使う余力も時間もない。

(ご…めん…な……さい…オル…か…)

謝罪というより、懺悔のような言葉は声になっていなかった。

拳が放たれる。

だが、すでに彼女の意識は失われていた。

槌で木を思いっきり叩いたような鈍く、重い音が響く。

直前に意識を取り戻したバイソンは目を見開く。

フィエルの拳が衝撃に耐えきれず破裂していたからだ。

「なんでテメェらいつもアタシの身内を虐めてんだ?あぁ?!」

ルビリア・サフィア

再び怒りに燃える彼女。

「いやぁ、私のミスだ。巻き込んで申し訳なかった。」

バイソンは誰かに抱えられる。

誰かはわからなかったが、どうやら味方のようだった。

「クソジジィが…テメェマジで責任取れよ?」

オルカはバイソンを抱える男を指差す。

「サフィアちゃんね?もうちょっと老体を労るとかないのか?一応師匠なんだよ?君の…」

老人は気まずそうにぼやく。

バイソンは自分を抱えているのがオルカの師、ホエールだと気づく。

「亡くなられた…んじゃ?」

絞り出すようにホエールに問いかけると、彼は笑って、内緒な?と答える。

状況に置いていかれたフィエルはオルカから距離を取るように踏み切ると、空中で反転し、ホエールを狙う。

回転を加えた右フック。

砕けた拳はすでに再生している。

鞭で打ったような炸裂音があたりに響く。

フェイルの奇襲は、光の壁に阻まれる。

「ちょっとどいておくれ。」

ホエールの右手に生成されたハンマーが壁にへばり付いたフィエルを剥がすように炸裂する。

衝撃をもろに受け、そのまま壁に30センチほど減り込むフィエル。

ホエールはバイソンとドルフィンを今、車で到着した男に預ける。

大書堂で、パルに本を手渡した司書だ。

「班長くん。2人を頼む。できれば応急処置もな。」

班長くんと呼ばれた男は頷くと車を反転させ走り去った。

「ようやくストレス発散できそうだ。」

オルカは壁から這い出て再生してくフィエルを見て狂気の笑みを浮かべる。

(そんなんだから結婚できないんだよ。)

あまりの怒りにホエールはギリギリ自分の思ったことを口に出さずに済んだ。


次回は土曜日

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