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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン1 Trigger of Catastrophe

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1-24 復讐者


連絡船バイソン【一般情報(一部国際機密)】

監獄島と港の国を繋ぐ連絡船。

受刑者や面会人の輸送を行う。

外部からの攻撃に対して強くなるよう設計されている一方で、火器は最低限の迎撃のみとなっている。

船の名前は龍の国の海軍同様、監獄長のコードネームなどから取られるが、ペイントの一部が変更されるのみである。

なお、監獄長が船長を務める都合上、船酔いしやすい人間は監獄長になることはない。


ホエールの計らいで港の国への密入国をすることとなったハウンドとパル。

2人は大書堂の地下倉庫に来ていた。

「およそ3時間ってところだ。出張所の職員にも話をつけてあるからスムーズに行けるはずだ。」

コンテナの中にはテーブル、ソファ、ベッドがあり、安宿のようになっている。

「出張所の場所は港の近くだったな?」

パルがホエールに確認すると彼は頷いて答える。

「輸送船は軍港じゃなく通常の貨物船同様、船着場に入る。そこから車列での移動になる。狙うならそこだ。」

ホエールの言葉に2人は頷くとコンテナの中に入る。

係員が扉を締め、閂が閉じられる音が聞こえると、コンテナ内の照明が起動し、内部を照らす。

「やめろよ。換気扇とかねぇんだから。」

ソファに腰掛け、早速タバコに火をつけようとしたパルにハウンドが注意する。

パルは、へいへい。と不機嫌そうに肩をすくめタバコをしまう。

外からノックが聞こえる。

「その中、禁煙だからな!縁があったらまた会おう!」

ホエールが外から叫んでいるのが聞こえる。

パルは外から見えないのがわかった上で手を振って答える。

「Amantes! (アマンテス)Buen viaje!(ボンボヤージュ)」

ホエールの言葉にパルは赤面し、アギトを投げつける。

勢いよく壁にぶつかった音が外にも響いたらしく、ホエールの笑い声が聞こえてくる。

「あのクソジジィィィ!今度あったら今度こそ殺してやる!」

コンテナが動き出し、ハウンドは咄嗟に手すりに捕まる。

「なんで言ったんだ?」

ホエールの聞き慣れない言葉にハウンドは意味を理解したであろうパルに聞く。

「誰がテメェに教えるかい!!」

パルは不貞腐れ、ベッドに飛び込むと布団を被る。

ハウンドは2人っきりの部屋なのに取り残されたような気分になる。

大きな振動がした後、静かになった。

船への積み込みが終わったのだろう。

ハウンドはソファへ腰掛ける。

インカムに反応はない。

反撃への旅路。

ギリギリまで追い込まれたからこそできる捨て身の反抗。

そんな状況ではあるが、意外と落ち着いている自分に少し驚く。

自分の信じた道だからこそ、落ち着いていられるのだ。


監獄長のバイソンは、3時間後に控えたレイモンド・サイカー移送の最終調整のために一足先に港の国に来ていた。

本来であれば監獄島からの移送は、彼が艦長を務める船で行うのが通例だが、龍の国でのテロ事件を受けて特別措置として龍の国海軍のドルフィンが移送、バイソンは事前準備という割り振りとなった。

「島に戦艦ドルフィン及びドルフィンが到着しました。オンタイムです。」

報告を行った部下に例を述べると彼は、港の国の海軍への報告のために歩き出す。

テロの直後、龍の国の人間は国民、軍人問わず散り散りとなった。

バイソンは事後処理を買って出たトータスの言葉に甘える形で監獄島にドルフィンと共に戻ることとなった。

ドルフィンの船は海戦に特化した仕様であり、国民の移送よりもバイソンの指示で動くことは、龍の国の軍隊解体を見越しての策でもある。

ドルフィンは急遽、監獄島への転属となったために少し時間がかかり、島に着いた直後に移送を任されることとなったが、彼女自身、それを気にしている様子はなかった。

「ドルフィンが島に到着しました。予定通り、3時間後に到着します。」

新聞を読んでいた港の国の海軍長、スキッタ・フィールは顔を上げる。

細い金のフレームの眼鏡をかけている。

「ありがとうございます。バイソンさん。移送に関しては新任の方が担当すると聞いていましたが大丈夫ですか?」

柔らかい声に演技のような裏は感じない。

見たところ30代前半といった感じだが、若くして大国の海軍を束ねるだけあって、その仕事ぶりはバイソンも舌を巻く。

「移送に慣れたメンバーがレイモンドと共に船に乗り込みます。私の船より強力ですし、彼女はトラブルにも慣れています。」

フィールは満足気に頷き、読んでいた新聞をバイソンに見せる。

龍の国テロ事件の首謀者である男女の手配書だ。

どう思われますか?フィールの問いにバイソンははっきりと答える。

「どうであれ、女王陛下の殺害、国民への大規模テロ。それは許されざる行為です。」

フィールは目を細める。

「それが身内でも。ですか?」

「関係ありません。誰であれ、自分は自分の仕事をします。絶対に、ただでは済まさない。」

バイソンは、そう言い終えると、失礼。と断ってフィールの元を去る。

残されたフィールは、怖いねぇ。と肩をすくめ呟くと立ち上がる。

「ネズミ取りを始めるか…」

机に備え付けられた電話機を取り、現場の副長に、港に入るすべての貨物を検査するように伝えた。


レイモンド・サイカー到着の2時間前、パルたちの載った船が港に到着した。

積荷は2つ。

両方とも港の国にある、大書堂の出張所宛の本となっている。

だが、タイミングが最悪だった。

本来であれば多くの船の往来がある港だが、テロ事件を受け、大半が日程を変更。

加えて、監獄島からの移送も予定されている以上、港に近づく船は片手のほどもなかった。

フィールとバイソンは積荷の確認のためにコンテナへ近づく。

「大書堂から出張所宛のコンテナになります。中身は消耗品と本です。」

副長の報告を受けたフィールが手を挙げると港の国の海軍兵士たちがひとつ目のコンテナを開ける。

中には木箱がいくつか入っているが、特に怪しいものはなかった。

「おかしいですね。」

バイソンが後ろから声をかける。

「えぇ。荷物はひとつだと聞いていましたが。それに、なんですか?これ。」

もう一つのコンテナには内側から何かをぶつけたような膨らみがある。

修理しようとした様子もない。

「警戒してください。」

フィールが声をかける。

爆発物か銃火器か。

そんな不安が場を支配する。

バイソンは腰に刺した剣に手をかける。

ガタン。と音を立てて、閂が外れ、緊張が高まる。

照明が付いており、中の様子は簡単に見通せる。

安宿のような作りでベッド、ソファ、テーブルが設置されている。

バイソンは周りを見渡す。

潜める場所は多い。

フィールはベッドとソファに触れる。

人肌の温もりを感じて、即座に声を張る。

「総員警戒体制!密入国の疑いあり!」

コンテナを囲んでいた兵士が一斉に散らばる。

副長は大書堂への問い合わせを始めている。

バイソンは練度の高さに感心した。

「移送は止められないですよね…」

バイソンは少し弱気なフィールの言葉に申し訳なさを感じる。

頷き答えると、フィールは割り切ったように振り返る。

「最初のコンテナの木箱を開けてください!大書堂には私から説明します!」

バイソンがコンテナを覗くと少し懐かしい気配を感じた。


「うまくいったな!」

パルはコートについた土埃を払いながら笑う。

「冗談じゃねぇ!ここどこだよ!」

ハウンド穴から出て来ると周りを見渡す。

船からコンテナが下ろされた後、一つ目のコンテナが開いた音が聞こえた2人はすぐさま、クロガネで穴を開け地下トンネルを掘り進みながら脱出したのだった。

コンテナとその下には穴が空いているがベッドの下であるため即座に気付かれることはないと思っての行動だ。

ハウンドは穴を閉じると、目を疑う。

パルの背後に人がいる。

パルも気づいたのか跳ねるように距離を取ると、目を見開く。

熊かゴリラのように巨大な大男。

それだけならば戦場で見たはずだが、2人が驚いたのは体格ではなく出立だ。

彫の深い顔に口紅。

わずかにカールした長い黒髪。

ピンクのワンピースから覗く膝下は走り込みによって作り上げられた男の肉体だ。

「あら♡訳ありね?」

「あんたがか?」

パルは思わず口にしてしまった。

ここは異世界なんだろうか。

(あ、夢かこれ。そうだよ。うん。)

目の前の仁王立ちの背後からくる同じような2人が全力疾走して来る姿を視認して思考を止めた。


次回は水曜日

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