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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン1 Trigger of Catastrophe

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1-12 ルビリアの2人

オルカ【個人情報】

龍の国海軍の女性将校。

本名『ルビリア・サフィア』

現海軍のNo.2であり、自身と同じ名前の戦艦『オルカ』の艦長を務める。

麦の国出身であるものの、ある時、当時、海軍トップであったホエールに見出される。

格闘術や重火器の扱いにも精通しており、軍人としての戦闘能力も高いものを持つが、最も得意とするのは光魔法を用いた防壁構築であり、その速度はトリガーよりも速いと言われる。

強度も非常に高く、パルが幽閉されていた部屋の防壁も彼女のものである。

なお、コードネームの由来は、ホエールが指導係をしていたこともあってか、彼の戦闘スタイルと酷似しており、ホエールに『似ているもの』という意味も込められている。


「すまんな。何もできなくて。」

申し訳なさそうに言うドクに、気にすんな。とトータスは笑う。

ウエルが現れた後、マネキンのように固まり、戦闘では蚊帳の外だったドク。

皆、喧嘩の経験すらない男に戦列に加わることを望む様なことはしない。

第4天使ウエル、第1天使エルカの『挨拶』からほどなくして白の部隊の3人とオルカ、トータスの家族を加えたBBQが始まっている。

ケンジも普段の様子に戻っており、大きく口を開けて肉にかぶりついていた。

オルカはパルに世話を焼き、肉を渡したり、酒を注いだりと楽しんでいる。

「あー。そろそろ話をしても?」

ハウンドは楽し気な雰囲気を壊したくなかったが、全員に酒が回る前に用件を済ませたかった。

「そういや初めましてだな?噂通り、いや、その名の通りって感じだな猟犬」

「恐縮です。貴女の方こそ噂通り、いえ、それ以上の実力者のようだ。」

ハウンドの評価に、茶化すんじゃねぇや。とオルカは笑う。

「天使について聞きたかったんですが、なんというか。」

ハウンドは言葉に詰まる。

彼が事前に用意していた質問はウリエとエルカから答えを得ていた。

だが、それ以上に300年前の人物。ドラゴ・ドライムが天使になっていたことの衝撃が勝っていた。

「建国の王ねえ…。」

トータスの発言はハウンドの考えと一致していた。

「歴史上の人間が天使になるのか?」

オルカの仮説は通常なら一蹴するところだが、魔力、物理の両方の攻撃を通さないその異常性が、この突飛な仮説を現実のものに近づけていた。

ハウンドは、そういえば。とパルの証言を確認する。

「天使の羽ってのはどうなんですか?」

「船でやり合ったやつに限って言えば確かに出してなぁ…羽…」

オルカはジョッキを傾ける。

「あとはなんかちっこい船みたいなのもあったよな?」

オルカの隣に座っていたパルは彼女を覗き込むようにして言う。

オルカはパルの頭を撫でながら、あぁ。と肯定して続ける。

「天使自身はムチ使ってたっけな?あとはリアレスっていう雑兵と言うか船というかそんな奴を使役してたな。」

なるほど。とハウンドは手帳にメモする。

「聞いた感じだと天使の戦闘形態がその羽なのか?」

トータスは自身の顎を撫でならが言う。

「もしくはリアレスと呼ばれる眷属の使役に使っているのかもしれません。」

「お前と一緒だな。」

彼らの仮説を聞いて、オルカはパルの頭を何度か軽く叩く。

「パルについてここで語るべきではないだろうよ。ハウンド、知りたくば自分の目で見てみるといい。」

権限はあるはずだ。トータスはそう言いながら背もたれに体重をかける。

ハウンドの視界の端でドクが申し訳なさそうに俯いているのが見えた気がしたが、彼は気にしなかった。

しばしの沈黙の後、トータスの嫁であるアイシャが岩のようなローストビーフを持って来てそちらに話題が動くとそのまま天使についての話は出ることなく宴は終わった。


トータスは椅子に、オルカは邸宅のソファーに座ったまま眠り、パルは強引にオルカの膝枕に寝かせられていたが、いつのまにか眠っている。

片付けが終わる頃には日が傾いていた。

上の空でタバコを吸っていたハウンドにドクが話しかける。

「パルについてなんだが…。」

ハウンドもかなり酒が入っていたが、ドクの真剣な声に気を引き締める。

「全てはワシの責任なんだ…。トータスが言うように今すべき話じゃない。」

ドクは下戸で酒を飲んではいない。

「あまり気持ちのいいものではない。だが、パルはあの子が悪いわけではない。ワシが…ワシが巻き込んだんだ…」

震える声にハウンドはどう返していいかわからない。

ドクの後ろからトータスが肩を叩く。

「あまり思い詰めるもんじゃねぇ。子が親を選べないように、あいつもまた、選択肢のないまま今に至ってんのさ。」

ありがとう。と言うドクの言葉。

ハウンドはかつてないほど、少女の原点に興味を持つ。

トータスはハウンドの興味を察したように、

「お前、いい機会だから見てみるといい。パル達は明日の昼頃に帰すからよ。」

いつになく真剣な声。

ハウンドが礼を言うと、

「いや、お前は知っておかなきゃなんない。あいつとこれから先も一緒にいるのなら。」

トータスはそう言うと、ドクを連れて邸宅に入っていく。

残されたハウンドは真っ直ぐノーチラスへの道を歩み始める。

宴の余韻など消え去っていた。


彼女は夢を見る。

己の記憶を。

何度も見た離別トラウマの再演。

森の中で響く爆音。

(クソ…またこれか…)

生き残れ。

背中から微かに聞こえる声。

弱っていく心音。

生きろ。

涙で視界が霞む。

救助対象は自分を家族と言ってくれたひと

オレを置いていけ。

できるわけない。

震える声は自分のものだ。

死なせたくない。

失いたくない。

その一心で森の中を駆け抜けていく。

軽い。

常に見上げていたその人は。

今はとても軽い。

近くで爆発が起こる。

小さな体と小さくなった体が吹き飛ばされる。

偶然近くにあった洞窟に這いずるように入る。

背中から彼女を下ろす。

残った手を握る。

私がなんとかする。

砲撃の主が身内りゅうのくにである以上、話せばわかるはずだ。

やめろ。

なぜ。

(死なせたくない…!)

右腕で頭を引き寄せられる。

(動かねぇ…!)

軍から離れろ。

耳元で囁く声。

(嫌だ!アリアンナ!)

愛…して…

私をひとりにしないで!


「…おっぱい?」

目を覚ますと心配そうにオルカがパルを見下ろしていた。

「大丈夫か?うなされてたぜ。」

心配そうに頭を撫でるオルカ。

「なんか…悪い…変な夢…見てた。」

体を起こしながら目を擦る。

「あの時のフラッシュバックは変な夢か?」

オルカの声は優しい。

「悪い。悪夢でも大切な思い出だ。」

笑って見せた。

笑顔だったかは、わからない。

首に手を当てる。

汗ばんでいるが、それ以上に夢の中の。

10年以上前の力が抜けている腕の感覚がまとわりつくように残っていた。


次回は水曜日

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