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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン1 Trigger of Catastrophe

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17/306

1-10 挨拶

ホエール【個人情報】

トータスの前に軍部長を務めた海軍出身の将校。

白鯨と呼ばれる戦艦を中心とした海軍部隊を率いた。

当時の海軍は兵器、兵士の質、練度の高さから世界最強の海軍とも呼ばれた。

なお、したたかに陸軍の予算を海軍に回すよう誘導するような政治力にも優れており、トータスは彼を予算泥棒として蛇蝎の如く嫌っている。

7年前に軍部長として港小島へ向かう際に何者かの奇襲を受け、死亡したとされているが、詳細についての記録はフレイルが削除した時点で存在しなかった。


ドクがブリッジに入るとすでにパルとハウンドが揃っていた。

始めよう。とハウンドがドクの方を向いて言うと、天使に関する情報について、簡潔に説明を始める。

パルもドクも口を挟むことはなかった。

ハウンドは手書きのメモをもとに話をしていたが、時折、そのメモに付け加えていた。

天使。

明確な敵意を持って宣戦布告を行った謎の存在で、高い戦闘能力と再生能力を有する。

トラ教団と呼ばれる宗教組織が恐らく関わっていること、7体存在する可能性があること。

ドクにとって実感はなかったが、2人の真剣な様子が、事態の大きさを物語っているように見えた。

「問題はだ。俺たちはこの天使、そしてトラ教団について何も知らないってことだ。」

ハウンドは、お手上げだ。と言わんばかりにペンを投げ出す。

「トラ教団は世界中にネットワークを持つとも言われる。だが、その目的は、まるで見えてこねぇ。」

パルはボサボサになった髪を手で直しながら続ける。

「7体の天使。はっきり言って同時に来られたらオレでも対応できない。」

ハウンドは自身の願望も混ざった意見を出す。

「それをしないのは目的が戦争じゃないからだろうな。」

だとしてもだ。とパルは立ち上がる。

「だとしても戦争の火をつけることはできる。あんだけの戦闘能力を持つ存在が本気で世界を正しく導くとは思えねぇ。」

ハウンドは頷き、

「一度、龍の国に戻る。陛下への報告と、天使との戦闘経験を持つオルカことルビリア・サフィアの話を聞く。」

あいわかった。と言うパルの声を確認して、ハウンドはドクの方へ向き直る。

「ドク、あんたにはアギトのメンテと、麦の国で起きた火災についてできるだけ情報を集めてくれ。あの引き摺られて行った男を追いかけることになるはずだ。」

ドクは、承知した。と告げ、ラボへ向かう。

無理難題であっても、了承してくれる彼をハウンドはとても頼もしく感じていた。

「お前も、覚悟しとけよ。戦列参加の可能性、十分にあるぜ。」

ブリッジを出ようとしたパルの言葉にハウンドは背筋が伸びる。

わかっている。と返し、タバコに火をつける。

(実戦か…何年振りだよ。)

そこには高揚感と緊張の混ざった不思議な感覚があった。

いや、それだけではなく、強敵との戦闘に対する期待感のような血の熱さも感じていた。


翌日、午前中に6番ドッグへ帰港したノーチラスへの消耗品の補給作業が済むと、ドクとパルが、なにやら相談している様子が見えた。

なんかあったのか?と聞くと、パルは、

「ん?ちょっとな。まあ心配するこたぁねぇ。ちょっとした遊び心の話さ。」

と、はぐらかす。

その顔は彼女が幼かった頃にイタズラを仕掛ける際にしていた悪い笑顔だ。

彼がそれを最後に見た時は、口を割らない捕虜に対して、家族の行動を把握しているような素振りを見せて情報を吐かせた。

(碌なことじゃないだろうなぁ…)

と思い、ハウンドは足早にその場を去る。

面白いじゃないか。と言うドクの声が背中に響いても聞こえないふりをしながら。


執務室にいたフレイルに、いつもと変わった様子はなかった。

ハウンドは彼女に麦の国での一件と天使について報告した。

フレイルは、説明の後、少し間を置いてから、

「ご苦労様だったわね。その天使について、私から言えることはないわ。」

と、申し訳なさそうに言う。

白の部隊へ休暇を与えるはずの内情調査が、まさか新たな火種に繋がってしまうとは彼女も予想外だった。

我々への気遣いは無用です。ハウンドの言葉は彼女の胸中を察したようだ。

フレイルはそれを聞いて、事態が自分の想像より急を要するのではないのか。と思い始めていた。

「オルカに話を聞くってのはトータスに相談してみて。2人とも国内にいるはずよ。」

「せっかくだからもてなすぜ」

部屋に1人の大男が入ってくる。

顔には無数の傷、白いものの混じる無精髭。

顔の老け具合と不釣り合いな肩幅はドクより少し年上とは思えない程だ。

「お久しぶりです。トータス。お変わりないようで。」

ハウンドが頭を下げると、入ってきた大男、トータスは笑いながらフレイルの机の前に進む。

彼は龍の国全軍を束ねる立場であり、陸軍に所属していた際は、ハウンドの上司として彼を育て上げた男だ。

鉄拳と謳われるその戦闘能力は老いた今も健在であり、圧倒的な経験値もあいまって、現在でも最上位の実力者と言って差し支えない。

「陛下も如何かな?我が家のBBQはここの食事より安全ですぜ。」

丁寧と雑さの入り混じった誘いに、遠慮しとく。とあしらうフレイル。

トータスは3人に向き直り、

「よし!じゃあ行くか!出所祝いのために色々準備してあるからよ。」

とパルの方を見る。

「オルカがこねぇと意味ねぇよ。ドンガメ。」

呆れたパルの答えに、きょとんとした表情のトータス。

ハウンドはすかさず、

「オルカが本件、絡んでます。彼女に話を聞くためにあなたを頼るよう、指示された次第です。」

話を聞いてなかったのか。とハウンドは思った。

どうやら、部屋の前についたところに自分の名前が聞こえたから入ってきたようだ。

オルカか。とトータスは呟く。

「概ね理解した。お前がいるならオルカはすっ飛んでくるだろうぜ!」

パルは、そうかもな。と答える。

トータスは持っていた封筒をフレイルに渡すと、3人を半ば強引に引き連れ部屋を出る。

変わってねぇなぁ。と言うパルの愚痴は彼の笑い声にかき消されていった。


トータスの家は陸軍の基地近くにある。

出勤が楽だから。と以前言っていたことをハウンドは思い出していた。

オルカは参加を即答したらしいが、2時間ほど待ってほしいとの連絡があり、トータスの計らいで彼の家の庭にいた。

トータスは10人ほどで囲むようなBBQセットを陸軍の新兵たちに用意させている。

「おや?豪華なメンバーですね。」

その場の全員が戦闘状態に入る。

いつの間にか現れたのは水色の髪をした男とも女とも思えない人物。

ハウンド達はその人物が天使であると直感で察していた。

トータスは現れた人物の気配が、人のそれではないことを経験から察する。

「私は第4天使、ウエル。あなた方には消えて…」

もらいたく。と続くであろう言葉を遮るようにトータスの右ストレートがウエルの顔面に直撃する。

うめき声など聞こえるはずもない。

トータスの鉄拳は直撃した部分を自身の魔力によって炸裂させ、破壊する。

無論、トータスの拳もまた、無事では済まされない荒技ではあるものの、彼の高度な身体強化魔法によって拳の被害を抑えつつ最大限の破壊力を一点に叩き込むのだ。

ウエルの首から上は吹き飛び、司令塔を失った亡骸だけが丸太のように2、3メートル転がっていく。

なんでぇ。と物足りなさそうに言うトータス。

彼の目には身体強化魔法使用時特有の雷のような光がほとばしっていた。

「ケンジ〜。下がっとれ〜。」

トータスは後方にある家から外に出てこようとしていた孫に優しく問いかける。

トータスが死体に戻した瞬間、首無し死体の抜き手を視認する。

「過保護だねぇ。」

抜き手が彼の喉元を貫くより早く、彼の後ろからパルとクロガネが飛び出す。

クロガネは自身の体を巨大な岩盤のように変化させるとそのまま抜き手を受け止め、ギプスのようにウエルの右手を包む。

パルはクロガネによって崩れたバランスに合わせるように沈んでいく左手首を右手で取りつつ、左手指の第二関節を折り曲げた独特の形を作り、ウエルの鳩尾みぞおちのあたりに当てる。

龍閃りゅうせんの3番。龍勁りゅうけい。」

車が小動物を跳ねたようなドンと言う音が響き、背中側の衣装が円形に弾け飛ぶ。

見事!と言うトータスの声と共にウエルの体は膝から崩れ落ちる。

「魔力でもって相手の内臓を破壊する暗殺拳。久々にいいものを見せてもらったぜ。」

パルの魔法を解説するトータス。

パルは彼に視線を向けることなく、倒れ伏すウリエの死体を見る。

クロガネの後を追うようにして、それを囲むホムラ達も同様だった。

「まだ、油断はできません。パルの情報が正しければ、奴らの再生能力はこの状態からでも…」

ハウンドの声を遮るように二度目の音。

今度は先ほどとは異なり、軋む様な、何かを引きちぎる様な、耳を覆いたくなるような不快な音だ。

ドサッという音はウリエの体ではなく、引きちぎれた右腕が落ちたからだ。

ハウンドがトータスに説明をしていた際、ウリエの体は動いた。

筋肉の反射運動のようなごくわずかな動きだったが、パルは見逃さず、そして迷う事なく、ウリエの腹に左足による弾丸の様な蹴りを叩き込んだ。

その勢いはすさまじく、ウリエの体は、パルのつかんでいた左腕を残して肘のあたりから千切れ、胴体は再び、地面を転がる。

トータスはあっけにとられ、きょとんとしている。

パルはメンテが終わったばかりのアギトを引き抜きながら、

「まだだ。ドンガメのパンチが浅かったわけじゃねえ。オレの龍勁が甘かった訳でもねえ。」

地面に力なく落ちていたウリエの左腕が、勢いよく胴体に向かって飛ぶ。

「単純な話だ。こいつらはこれじゃ死なねえ。」

パルの言葉が聞こえていたのか、ウリエの体には左腕が接続され、拍手をしていた。


次回は水曜日

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