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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン3 Fake and Lie

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3-19 貴族たち

貴族たち【未確定情報】

龍歴以前から活躍した6つの家系からなる組織。

その力関係から序列が確定しており、特に頂点のサザーランド家の発言力は非常に強い。

各家の概略と序列は以下の通り。

サザーランド家(当主サザーランド・ロイエ):豪商であり販売ネットワークを持つとともに、重工業の開発ノウハウを持っており、現在のヤタ重工の礎を作り上げた。

スラー家(当主スラー・クリス):陸運のネットワークを持つ。現在はヤタ・インフラテクスを管理しており、陸運だけでなく通信網の管理、運営を行っている。

セヴァン家(当主セヴァン・ナイル):弾丸や砥石といった戦場消耗品を扱っていた家。現在は小売販売店であるヤタ・マートの運営を担当している。

シヴ家(当主シヴ・アンドロス):医療品の販売、開発を行っていた。現在も商品は変わらず、ヤタ・メディカルサイエンスを担当している。

ソド家(当主ソド・マクマリス):海運事業を行っていた。かつては第2位の地位だったが、港の国が本格的な海運事業に着手すると衰退。現在は海上機器を扱うヤタ・マリン・メカニクスを担当。

シジマ家(当主:シジマ・レオラ):兵士教育及び派遣の傭兵ビジネスを行っていた。現在はヤタ・ヒューマンマネジメントを担当。各家の執事たちはシジマ家の教育を受け、派遣されている。


刃の国を訪れていたパルとハウンドは刃の国の代表であるジェスとの面会を続けていた。

ジェスの話では龍歴以前から活動をしてきた貴族たちとその関係者であるシジマ・ロウラの登場。

そして、大同盟軍の総督であるツスルは貴族たちを潰すために行動を起こしているのではないか。という推察。

だが、根本的な話は何一つとしてはっきりとしていない。

「ロウラは貴族なのか?」

パルは疑問をこぼす。

ロウラを追うことが今のパルたちに与えられた仕事ではある。

しかし、それはあくまでもトラ教団の残党狩りに近い仕事であり、貴族たちという存在はまるで知りえないものであった。

つまり、今のパルたちにとって仕事の内容は理解の外にあり、漠然としたそれに対して新たに指示があるわけではなかった。

ただ前提として、ロウラを追うというのは変わらない。

その認識はパルもハウンドも同じだった。

そんな彼女たちにジェスは可能な限りの情報を開示する。

「ロウラは貴族たちの一つ、シジマ家の人間だあ。だが、当主ではない。」

「具体的にどう違うんです?」

「まず、貴族たちは6つの家からなる互助組織だあ。その当主たる6人こそが貴族たちの意思決定を行う連中だあ。」

「つまり、ロウラは当主ではないからヤタで仕事をしてるってことか?」

「シジマ家でなければそうなるう。」

「勿体ぶるんじゃねえ。」

「シジマ家の当主であるシジマ・レオラはその存在が不明らしい。」

「ロウラがレオラ?」

「ンなわけあるか。」

「そう、そんなことではない。ただ、ロウラを足がかりにレオラを引きずり出しい、貴族たち攻略の足がかりにするう。」

パルは腕を組んで大きく息を吐く。

話が複雑かつ面倒になってきている。

ロウラを追う。

教団との完全決着のためではなく、貴族たちという別組織を討つための布石として。

ただ、貴族たちを討つ意味はわからない。

それはハウンドも同じだったようで、疑問を口にする。

「なぜ今、貴族たちを?鉄の国を討つ意味は?そもそも遺産は?」

「それはツスルに聞くしかいないねえ。」

パルはもう一度息を吐く。

秘密。

秘密。

秘密。

そして、そんなやり方を好むのは1人しかいない。

「レイモンドの奴に言わせれば『すべて問題ない。』って言うんだろうな。」

「いかにも言いそうだあ。」

3人ともレイモンドを信用する気はなかった。

しかし、彼が彼女たちの疑問すべての回答を知っていることは察せられる。

「一度、総督と話します。今後の方針は明日の朝にでも。」

「了解したあ。」

ハウンドは立ち上がり、敬礼すると、パルもそれに追従するように立ち上がる。

敬礼かあ。

あくまでも自分を軍人として扱うハウンドに、ジェスは複雑な感情を持つのだった。


ロウラは護衛とともに港で船を待っていた。

鉄の国での報告会を終えた彼女たちは、再び、刃の国へ移動する。

指示があったわけではないが、政治的、軍事的な最前線である刃の国に居れば今後の動きに即座に対応できるからだろう。

「申し訳ありません、邸宅に戻ることなく移動することになってしまいました…」

ロウラは海に向かって謝罪する。

一見すると非常に奇妙ではあるが、返す声があった。

「かまわないよ、ロウラ。むしろ貴女には苦労をかける。私が不器用なばかりに…」

返す声は女のものだ。

ロウラと似ているが、彼女以上に高貴さを感じさせる。

「お心遣い、感謝いたします。『レオラ様』。」

「ここで出すべき名前じゃないよ。」

ロウラは反論しようとしたが、船が到着し、それを遮った。

彼女は護衛を先に船に乗せる。

「おいたわしや、御姉様…」

ロウラの言葉は波間に飲まれ、先を歩く護衛すら気に留めない。


ジェスとの面会後、ノーチラスに戻ったハウンドとパルは、ブリッジでツスルと通信をしていた。

「以上が、ジェス代表との面会結果です。ロウラは結果として貴族たちという存在に近しいですが、大した発言権を持っていません。ただ、彼女を通じて今一つ実態のはっきりしないシジマ家の当主を引きずり出せるかもしれません。」

モニターに映るツスルは何度か頷く。

その様子は予想通りというようにも、期待外れのようにも見える。

『引き続きロウラを追ってもらったほうがよさそうやな。』

「シジマ・レオラを追うんだろ?」

パルは不満げに口を挟む。

『それも半分やな。ただ、ロウラは大同盟と明確に対立しとる。無視はできへんよ…なんや?』

ツスルの様子が変わり、表情が曇る。

どうやら悪い知らせのようだ。

「いいニュースから話せよ?」

パルが煽るように聞くと、ツスルは呆れたように息を吐く。

「いいニュースはレイモンドが生きとるいうことや。悪いニュースは奴が攫われた…」

「向かいます。」

ハウンドは即答するが、パルが手を挙げて制する。

「待てよ。この国はどうする?」

ツスルは少し考え込むと指示を出す。

『ハウンド君は刃の国でロウラを、パルちゃんは医の国でレイモンドの捜索を…』

「冗談だろ?」

「逆では?」

彼の指示に、パルとハウンドは同時に反論する。

『逆のほうがええんか?』

「いいも何も、人探しはオレよりハウンドのほうが向いてる。犬を放てば半日で医の国を網羅できるさ。」

「言いすぎだ。1日はかかります。ですが、パルの言う通りですよ。医の国なら二輪車で日の出ているうちに到着します。」

『なら、向かってもらおうか。』

ツスルは納得した様子で指示を改めると通信を終える。

「二輪扱えんのか?」

パルは不安げにハウンドに問いかけると、笑顔でうなずく。

「心配ねえよ。これでも陸軍の軍人だぜ?」

パルは口角を上げ、彼の背中が見えなくなるまで見届けていた。


「龍歴214年に開墾された麦の国北西のブドウ畑で栽培された『ジーン』という品種は、その香りと病気に強いことから一気に人気となりました。しかし、これは偶然、つまり突然変異によって生まれ、これで作られたワインは『遺伝的覚醒種ジーン・ブラスト』の二つ名で呼ばれています。」

メイド姿の女は蘊蓄を語りながら、グラスを2人の男の前に置く。

「244年製のジーン・ブラストになります。」

メイドはそう言ってグラスにワインを注ぐ。

「ありがとう、ルリス。これもよい買い物だった。」

初老の男が自慢げに語ると、対面に座る男は小さく笑う。

「スラー卿、貴方は値段で買い物をされているのかな?」

「カカカカ…セヴァン卿は若いのう。高いから良いのではない、良いものだから高いのだ。」

スラーはセヴァンの言葉に目を細める。

老人め。

貴族たちの間でたびたび行われる会合は単なる付き合いとはわずかに異なる。

それぞれがお互いに力を見せあう。

高い車、高い酒、高い絵画、高い彫刻、高い家具。

高ければ高いほどいい。

特に他より同じジャンルだとなおいい。

それは知識を示すことであり、下手な買い物は自身の格を落す。

そういった意味では街角の井戸端会議と変わりない。

その規模が数百倍、数千倍になっているだけだ。

競い合い、見せつけあい、己の方が格上だと見せつける。

鳥がより羽の美しい姿を見せ合うように。

「244年ですか…先日、243年を仕入れましたよ。良いものは高い、全くその通りでしたよ。」

セヴァンは己の格を守ろうとする。

古ければ良いわけではないが、相応のものを手に入れるだけの力はあると示す。

「カカカ…是非飲み比べたいものよ。」

「ご冗談を。最高の当たり年とされる244年製と比べられればあれは泥水だ。」

「謙遜するな。大戦争前のジーン・ブラストはそれだけで家が建つ、泥水で家は建つまい。」

セヴァンは格が守られたことに安堵し、ワインのグラスを持ち上げる。

はっきり言って酒の味などどうでもいい。

鼻に入る香りは確かに芳醇で歴史を感じる。

口に流し込めばその香りは脳を刺激し、舌から感じられる風味は深く、比類なきほどに自身を満たす。

飲み込んでもその香りは忘れることを許さない。

喉の奥から覗くそれは洗練された心地よい酸味を感じられる。

だが、これが家が建つほどの感動だろうか。

これを飲み終えれば薄れ消えていく。

それなら家でも建てた方がいい。

貸家にすれば収入が入る。

自分の邸宅にするならそれもいい。

数十年『使える』。

それとこの泥水ワインを天秤にかければどちらが勝つか火を見るより明らかだ。

そういった意味でセヴァンにとってこの井戸端会議は退屈なものだった。

「失礼致します。」

セヴァンの退屈を裂くようにリリスが再び現れる。

封筒を持っており、サザーランド家の印が押されている。

スラーはそれを受け取ると、乱雑に開ける。

「サザーランド卿から招集への同意依頼だ、読むかね?」

セヴァンはそれを受け取ると、書面に目を落とす。

『親愛なるスラー卿。この度、新たな友人を皆に紹介したく、招集の盟約に従い、貴殿の名を貸していただきたい。サザーランド・ロイエ』

招集の盟約。

貴族たちが一堂に会し、話し合いを行う場を設ける。

条件は3つあり、一つはいずれかの家の党首が死亡した際、次期当主の承認と紹介を行うため。

二つ目は、サザーランド家と他一つの家が要求した時。

三つ目は、サザーランド家を除く三つの家が要求した時。

今回は二つ目に該当するが、さほど珍しい話ではない。

メイドの人事配置や新たな事業モデルの承認など、様々な理由で招集される。

そんなことより。

「新しいメイドですか?リリスと言ってましたね。」

「うん…?さあ?そうかな?」

いい女だ。

それを手元に置くために泥水の金を使う方が効率的だ。

セヴァンはリリスの所作と後ろ姿に酔いしれていた。


次回は土曜日。


Twitter→https://twitter.com/yukks_sousaku?s=21

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