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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン1 Trigger of Catastrophe

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1-5 アギト

N-PAAえぬぱあ【一般情報】

Non-Personal Authentication Armament(非個人認証武装)の略称。

世界中に銃火器を始めとする鉄器類を販売する鉄の国のヤタ重工が販売している武器類の総称。

使用者の魔力を登録する必要がない多量生産モデルが多い(認証式にするサービスもある)。

魔力量の少ない人間でも扱え、拡張性、信頼性も高いことから多くの国で導入されている同社の看板シリーズ。

また、種別ごとのお手入れセットと同時購入もしくは1ダースの発注で名前などを最大8文字まで刻印するサービスが地味ながら人気。

近年、その利便性の高さから非正規軍での使用が問題視されている。


向かい合って座るパルが嬉しそうにハンバーグを頬張る姿を見ながら、ドクは始めた会った時との姿を重ねる。

自分の娘が子供の頃好きだったそれを頼んでやったことを今でも昨日のように思い出すことができる。

5年ぶりの日常が彼にとっては幸せでもあった。


ハウンドは城下町の外れにある自宅にいた。

ドクから二輪車を使ってはどうかと提案されたのだが、車を王都付近の陸軍事務所に停めていたので断った。

自宅に用意していた遠征用のスーツケースの中身を確認し、追加で着替えを別のスーツケースに入れる。

帰りは徒歩になるが、1時間ほど早く戻れる見込みだ。

麻紐で2つのスーツケースを繋いだ後、ツララを呼び出して首輪を作らせる。

紐を首輪に通して引っ張ってもらうのだ。

氷の魔術を専門としたツララはこう言った物理的な構築能力に秀でる。

(途中でなんか食べるか)

外に出る。過ごしやすいこの時期はハウンドもドッグスもお気に入りだ。

ふと、ここでもマザーに繋がるのか気になった彼は、インカムに呼びかける。

「いかがしましたか?ハウンド」

と帰ってきた。

「城下町の露店で軽く食べようかと思うんだが。」

数秒の沈黙の後、麦の国から出店されている店に列ができているようだ。との声がインカムから聞こえてきた。

道案内を頼んだところハウンドの位置がわからないということで店のおおよその位置を教えてもらい通信を終える。

賑やかな城下町の喧騒はすぐそこだった。


ハウンドは集合の30分ほど前にブリッジに到着したが、すでにパルとドクは戻っていた。

どうやらマザーを交えて話をしていたようだ。

荷物を置いてくるといい。というドクの言葉に甘え、自室へ向かう。

ブリッジを出てすぐに、1番の部屋です。とインカム越しにマザーから教えてもらった。

部屋は簡素で中央に机と椅子があり、左手にユニットバスがある。

規模的に隣のパルの部屋と互い違いになるように配置されている様子だ。

右手にはベッドがあり、生活自体は問題なさそうだ。と思えた。

スーツケースを部屋に置き、ツララを戻して部屋を出る。

オートロックでインカムを認識して開錠している。というのがドクからの説明だった。

ブリッジに戻るとパルは煙草を吸いながらドク達と話を続けていたが、ハウンドの入室を確認すると灰皿に煙草を押し付け火を消した。

すでに何本か吸い殻がある。

「ここは禁煙にするかね」

とハウンドが呟くと、パワハラだ。とパルが声を上げた。

冗談だよ。と返しながらドクに、何から始めようか。と聞く。

「なら2人の装備を説明させてくれ。さっき届いたんだ。」

と言った。

ドクは2人に大きな紙袋をそれぞれ渡す。

とりあえず着てみてくれ。と言われ、パルが自室に向かったのでハウンドも向かうことにした。

パルの装備というより衣装は、黒のインナーとパンツにベージュのロングコートで街中でも目立つことはない地味めなコーディネートだ。

これなら、中身はなんであれ、スーツケースを引きながら街を歩いても観光客に見えないだろう。

肩掛けのダブルホルスターもあり、この上からコートを羽織れば外からは銃を持っていることはわからないようになっている。

銃は袋になかったが、パルが以前に使用していた2丁拳銃のサイズだろうなと彼女は思った。


ハウンドは髪色と同じえんじ色のスーツ上下に白のシャツ、ネクタイは黒がチョイスされた。

パルに比べ少し目立つ色合いだが、要人との打ち合わせなどの想定で、相手に舐められないように。とのフレイルからのオーダーだった。

ブリッジで、ドクからサイズは問題ないか。と問われたがついさっき採寸したようだ。とハウンドは答えた。

ハウンドは先月受けた定期健康診断の結果から、パルが王宮での着替えの際に測ったデータをもとに調整したという。

それでなんだが。とドクは切り出す。

「3層目にも荷物が届いている。ワシの専門外だから見てくれんか?」

もちろんだ。とハウンドが快諾し、3人は3層目の武器庫に向かう。

すると、先程なかった50センチ四方の木箱があった。

開けていいのか?パルが聞くとドクが頷く。

パルが開梱するとそこには2つのケースが入っていた。

1つにはヤタ重工のマーク、もう1つには龍の国のエンブレムである剣と龍が描かれている。

ドクは、お前の開けよう。と言い、ヤタ重工のマークのある箱を取り出し、近くの作業机に置く。箱の右下にはNonN-PAA-HG138-AGIT-typeCと銀のプレートに刻印されている。

ヤタ重工の命名規則からNonN-PAAは個人認証式パーソナライズの武装で、HGはハンドガンの略称。138はモデル名を表すが、これは、最新モデルに該当する。とハウンドは分析した。

AGITとtypeCについては、パルのためにあつらえられたものを示すのだろうと推察した。

「アギト…ね」

と、パルが呟いたのを聞き、ハウンドは興味を非常に惹かれた。

ドクが箱を開けながら、解説を始める。

「これはヤタ重工から各国向けに販売されているハンドガンを知り合いに改修してもらったものだ。」

箱には黒く光る2丁の拳銃が収められていた。

ハウンドは、すぐさまマガジンがないことに気づく。

「パル、お前が使用していたアギトは133ベースで、5年前のものだったし、現物は既に廃棄されていた。だが今回、白の部隊発足と同時期にN-PAA138が発注されたのでな。せっかくだからその内、2つを女王陛下に頼んで回してもらったのさ。」

そう言いながら1つをパルに手渡す。

「これまで同様、お前にしか扱えない。」

パルがグリップを握り、ハンマーを下ろすと銃は微かに青白く光る。

パルの魔力が登録された証だ。

「お前さんから魔力を吸収、蓄積し、魔力の弾丸を発射する。威力は変わらんが耐久力が向上しておるし、メンテナンスも簡単になっとる。」

パルは自らの獲物をなれた手つきで確認する。

スライド部分には『AGIT-type_C』と刻印されている。

それはアギトのカスタム使用であることを意味する。

ドラゴンは長年、アギトと名付けられたほぼ同じ仕様の銃を使用していた。

「そして、以前と同様、マガジンを廃止し、魔力タンクを代わりに搭載。軽量化も限界まで施してある。」

ハウンドは先程、マガジンのなかった理由を理解した。

既存の弾丸は魔力量の少ない人間でも使用できるように、弾頭は物理的なもので魔力はあくまで火薬の代わり過ぎないが、環境の変化に強く、長期保管が可能になるというメリットがある。

一方でデメリット、というより、避けて通れない問題も幾つかある。

まず、物理的な弾丸であるためリロードは必須であり、機械的なトラブルも少なからず存在する。

また、発射の際に魔力をグリップから吸収されるため、魔力量が少ない人間は連射が難しい。

だが、このアギトは外観こそ既製品とほとんど変わらないものの、それらを、パルの圧倒的な魔力量で無視できてしまう。

魔力タンクを持つということは緊急時でも、魔力をチャージすることもなく発射できるし、魔力という媒体を放つのでリロードの必要はない。

戦場で洗練された強引ながらも考え抜かれた機能美が詰め込まれている。

常人であれば2発と打てない仕様ではあるが、パーソナライズはタンクを装備しているが故の安全装置として必要となる。

大量生産されているモデルをベースにするのは、パル(ドラゴン)が本来、獲物を用いない想定だったことに由来する。

当初は圧倒的な魔力量を持つ最強の兵士というデザインだったものの、実戦に投入した際に敵どころか味方さえ巻き込むほどの出力だったのだ。

これについてはパル自身の魔法適性によるところも大きいのだが、作戦行動を行う上での小回りを求めた際に制御のための装備を作成することとなった。

しかし、急を要したため、既製品を改造して使用したことが始まりだった。

パルは最初に渡されたものを左脇のホルスターに納め、もう1つのパーソナライズを行う。

ドクはパルに銃を渡した後、龍の国のエンブレムの描かれた箱を取り出すと、今度は君だ。と言って箱を開けた。

そこにはハウンドが今持っているものと同じ、柄だけの刀があった。

「今、使っているものとほぼ同型だが、迷彩機能と金属探知機や術式検知に引っかからないよう細工してある」

と言ってハウンドに手渡す。

「術式の組み込みなんかは、お任せしてもいいかな?」

というドクの言葉に、問題ない。と答えた。

ハウンドは柄にドッグスの術式を仕込んでいた。

近接戦闘ではドッグスのいずれかが刀身となる仕組みだ。

今のものに愛着はあったが、長年の無理が祟ってガタがきていた。

しかし、同じ型は、すでに廃盤となっており、なかなか代わりが見つからない状態だったので、交換は非常にありがたかった。

特に、術式の検知に引っかからないのは願ってもない機能だった。

「任務開始まで3ヶ月あるができれば早めに使って使用感を教えてほしい。改修の必要があればできる限り対応しよう」

とドクは言った。

ワシからは以上だ。と言い、ドクはハウンドを見る。

パルもまた、指示を促すようにハウンドを見ていた。

「今日はとりあえずここまで」

と、初日を締めた。


次回は土曜日

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