2-59 信じるということ
ルビリア・パル【個人情報】
龍の国陸軍総括。
同国の総括としては比較的若い人選ではあるが、これは大同盟軍の結成直前に就任したことから、前線での発言力を強化する目的があったと推測される。
大戦争時代から同国の兵士としてたぐいまれな活躍をしてきた彼女だが、大同盟軍による風の国迎撃作戦において、作戦終了を告げる無線連絡をしたのち、行方不明となる(MIA )。
これについては最後の目撃証言が、剣聖カインを運び込んだというもので、生存の可能性が十分にあることから現在も調査が行われている。
パルは、プルトを殺すことを選んだ。
それを仕方なかった。と言い訳するつもりはない。
あの時の自分は間違いなくプルトを殺すことを選び、プルトはそれを承知した。
彼女は本部へ通信を入れたのち、プルトとカインの体を背負って移動を開始。
カインの体はドクとカレンに預け、自身はプルトの死体と共に守護の森の洞窟に来ていた。
パルは洞窟の隅にプルトの死体を安置すると、大地の龍と目を合わせる。
「軍事利用させたくねえ。悪い…ここしか思いつかなかった。」
龍は静かに頷く。
この男には見覚えがあった。
約30年前に自分の血を採取しに来たあの男だ。
龍の目が光を放つと、プルトの遺体は石棺に納められ、パルの足元には椅子のような岩が姿を表す。
「今は…休めばいい。全ては解決せんが、少しは楽になるだろうよ。」
パルは、その言葉に笑みを作って頷くと、椅子に沈み込むようにして眠りに落ちた。
一連のやり取りを見ていたサラは龍を見上げる。
どうやら詳細を聞こうとしないのが気になったらしい。
「あまりずけずけ人の事情を聞くものでもないわい。」
サラは、わかってる。と呟くと、座り込んで寝息を立て始めた。
パルが行方不明となって3か月が経過しようとしていた。
風の国と刃の国、そして大同盟の会談は円滑に進み、風の国は難民虐殺や教団への多大な援助を行ったとして、大同盟への参加が拒否され、事実上の解体となった。
刃の国は議会関係者が全員死亡したという事実もあったが、大同盟参加後に即座に支援を行ったことが功績として扱われるようになり、ジェスを筆頭に再スタートを切ることとなった。
一方で教団についてはその存在が曖昧になったものの、資金源である『遺産』の所有者であり、トップであったパーシヴァル・プルトが死亡したため、自然消滅を待つことで合意が成された。
教団の扱いについては、テロの恐怖を建前とした軍拡を進めるためであるという非難が相次いだ。
しかし、実態として各国は来たるべき『遺産』争奪戦に向けた準備に注力することを考えており、大同盟の結束は表面的なものとなりつつあった。
この会談は大同盟として参加国のトップが初めて膝を突き合わせる機会ともなったため、他にも多くのことが、決定された。
大半は大同盟としての機能や権限といった土台の部分が多かったが、教団の脅威が沈静化していない状況を踏まえ、常設の大同盟軍を組織することも決定された。
これは、かつてリト達の提唱した大同盟の結束を脅かす存在へのカウンター部隊としての趣を継承しており、詳細な人選などは追って選ばれることになっている。
この部隊には『遺産』争奪戦のために極端な行動を起こそうとする国への牽制であるとともに、各国の余剰戦力を吸い上げるための安全装置ともいえる組織でもある。
全ては平和のためであり、『遺産』のためでもある。
だが、肝心の『遺産』の詳細を知るはずのパルの行方については議題には上がらなかった。
そういう意味では、世界は平和への道を進んでいた。
トラ教団と大同盟の戦闘は多くの人間の命を散らせ、傷つけた。
それは勝敗では差別されず、傷を負ったという事実は平等に振りかかった。
だが、血生臭い戦争は終わったはずだ。
皆、そう考えていた。
これで時代は変わると。
しかし、パーシヴァル・プルトの、トラ教団の策はこれで終わりではない。
その目的も遺産もそういった意味ではまだ教団を支えている。
全容を知る人間が少ない中、大同盟は更なる苦難と戦うこととなる。
過去の清算は終わった。
そう考えるのは簡単だが、たった1人を殺した程で終わる者ではない。
剣聖と猟犬は新たなる可能性を見つけ、龍は自身の生き方を継承させようとする。
八咫は己の頭を喰らいあい、馬人は世界を知る。
人の策に乗り、思考を止め、ただ流されることが簡単だった。
そして第四の龍は静かに産声を上げ、神出鬼没の少女は彼女たちを試す。
終わる世界に残る希望に意味はあるのだろうか。
偽物(Fake)と(and)嘘(Lie)の螺旋が世界を巻き込むとき、始まりと違う答えを求め、彼女は戦場に舞い戻る。
血濡れた手では、所詮、血濡れた道しか教えられぬと知りながら。
シーズン2完結です。
不完全燃焼…
シーズン3は4月3日からになります。
少し長いインターバルとなりますが、TRANQUILOでお待ちいただければ。
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