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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

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2-55 ドリーム・タッグ

連携【一般情報】

2人、或いはそれ以上の人数で作業などに当たることを指す。

単独よりも役割分担や協力によって効率化を図ることができる。

しかし、戦闘のような複雑な作業の場合、両者の相性や練度が重要となるため、付け焼き刃の連携となってしまい、返って効率が低下することもある。


カインに戦場にたどり着いたカインが状況を把握するまでにそう時間はかからなかった。

敵方の大将であるプルトが悠然と立ち、その足元にはハウンドを始めとする大同盟の兵士たちが倒れ伏している。

「君も…私とあれを戦わせまいとするのかな?」

優しげなプルトの声は罠にしか聞こえない。

カインは刀を構える。

油断を誘い、相手の真意をついたような言葉を吐く。

典型的な敵性言動だと判断した。

「語る必要はない。あれが誰を指すのかなど小生が知る由もない。」

「ならばどうして挑むのだ?」

「それも語る必要なし。貴様がこの状況の根源であることなど見ればわかる。それが答えよ。」

プルトの左肩から龍の翼が出現する。

鏡合わせのような姿にカインは無意識に重心を下げる。

否が応でも警戒してしまう。

天の国での戦闘経験は、彼にとって忘れることの出来ぬものだった。

自身と同等かそれ以上の戦闘能力。

老いたとはいえ師を圧倒した女。

それに近しい力をプルトが持っている。

それはわかっていた。

わかってはいたが、いざ直面すると思考が警報を鳴らす。

こいつは危険だ。

故にカインは仕掛けない。

後の先。

相手の初動に合わせ、動く。

それが出来る相手であることはよくわかっている。

プルトはカインの意図を察したのか、仕掛けに回る。

初速でカインの視界から消えると、右側に回り込む。

だが、カインの動体視覚はそれを見失ってはいない。

咄嗟に距離を取りつつ、横なぎに払う。

プルトもそれに合わせて距離を取る。

プルトの口角が上がるが、カインの目はより鋭く光る。

先の先。

相手にリアクションを取らせることなく一方的に勝負を決する。

黒之玉刃鋼くろのたまはがね。」

黒炎と共に細い刀身が姿を現す。

カインにとって、この剣は手にして半日と立っていないものだが、異様なまでに手になじんでいる。

まるで長い期間、己の技術の研鑽を共に歩んできたような感覚。

その正体は、山斬一刀流という技術体系がこの宝剣の変化を前提としていたという意味でもある。

山斬に捧げてきた時間に答える褒章。

そういう感覚を感じていた。

プルトはその変化を目の当たりにし、表情を険しくする。

「山斬の剣か…なるほど、与太話というわけでは無いらしい。」

「山斬一刀流。推して参る。」


謎の男と交戦していた、パルは次第に男を圧倒し始める。

それは、彼女がギアを上げた。というより、龍勁のダメージが如実に現れて来ている。

弱点を攻めるという至極単純な戦法が、男を次第に追い込んでいく。

左のフェイントから、右のローキックで動きを止め、膝を鳩尾へ。

半歩下がった相手の首筋へエルボーの連打。

更に下がったところに追撃の飛び膝蹴り。

男は彼女の連携になすすべも無く、されるがままに圧倒されていく。

パルが、止めを刺そうと、拳を固め、魔力をそこに集中させた時、男との間に、誰かが割って入る。

「っと。そこまでです。」

第一世代天使の筆頭、エルカだ。

得意とする転移魔術でここにいきなり現れた。

「龍閃の8番。」

パルはそれを意に介さず言葉いのりを放つ。

彼女からすれば、相手が誰だろうと敵であれば関係はない。

「そういう訳には行かない!」

エルカは指をだすと、空中に円を描く。

パルの体は、円に飲まれるようにして消える。

エルカと男は光に包まれ、消える。

プルトも想定していない事態。

いや、プルトすら道化にしようとする策。

それに乗るということは当然、彼への背信行為になる。

だが、そうせざるを得ない。

教団の力の根源である『遺産』。

その存在を脅かすのなら、それを排除する。

それが、この世界を安定させるために必要なことなのだ。


カインとプルトの戦闘は大同盟軍の目の前で行われているが、その実態を把握できているものは少ない。

把握できる人間が軒並み倒されている。といってもいい。

だが、信じがたい光景であるのも事実だ。

カインが刀を振れば、この世のものとは思えない禍々しくも美しい黒炎が舞い、片翼の悪魔とも言うべきプルトがその間を縫うように飛行する。

しばし、接近し、何度か打ち合い、どちらかが離れる。

互角というより、千日手に近い。

決着に足るだけの火力をお互いに相手にぶつけられない。

互角という意味では、カインとパルも同じだが、カインとプルトではそこが異なる。

パルとカインはお互いに過剰とも言える火力を押し付けあったが、プルトはそういった力勝負を嫌っている。

不利という判断ではなく、自身の持つ、俯瞰視点を活かすという意味で、足を止めての打ち合いより、隙を伺いながらの機動戦の方が活かしやすいのだ。

そういう意味ではカインは攻めあぐねていた。

プルトの目をかいくぐろうと、フェイントや挟撃、テンポをずらした攻撃を試したが、掠ることもない。

近接戦闘となれば活路を見出せるだろうが、その前にプルトは距離を取るだろう。

プルトの狙いは焦り。

カインが焦り、動きを鈍らせた瞬間、一気に畳かけてくるだろう。

カインはプルトの動きと周りの状況に忙しく目を走らせ、剣を振るっていたが、それをやめる。

後の先でもって、決める。

カインは覚悟を決めると、目を閉じる。

未熟な自分では視覚に頼りすぎてしまう。

簡単なフェイントや誘導に引っかかる。と判断した。

プルトの位置は暗闇からでもよくわかる。

異常な魔力量が、逆に導いてくれる。

プルトはカインの意図を察したのか、地面に降り立つとゆっくりと距離を詰める。

カインもそれを感じたのか構える。

叫びたくなるような緊張感の最中、プルトが一気に加速し、距離を詰める。

カインも即座に反応し、目を開く。

高速で接近してくるカインをしっかりと捕らえている。

「陽炎…」

カインの剣から黒炎が飛び出し、視界を遮る。

急停止した、プルトに対して半歩下がったカインは再度、接近しながら突きを放つ。

狙いは心臓。

カインが動かないと踏んで俯瞰視点では無く、動体視力に優れる通常の視界に戻していたことが仇になった。

反応が遅い。

だが、その一撃は魔力の鎧に止められる。

パルが得意とする魔力を放出する防御だ。

カインは、肘を畳んで、即座に切り返す。

「山斬一刀流…乾坤突!」

再び放たれた突きはプルトの右目を狙うが、やはり、魔力の壁に阻まれる。

だが、カインは即座に、刀を手放し、刀剣のかしらを掌打で押し込む。

乾坤突は掌打で刀を押し込むことで射程を限界まで伸ばす業だが、カインはこれを二度の衝撃を伴う業へと昇華させた。

さらに追撃の黒炎。

プルトの体は轍を作りながら後方へ押し込まれる。

さすがにプルトもこの連撃を眼球きゅうしょに貰うとは思ってなかったらしく、咄嗟に目を抑え、傷のないことを確認する。

だが、その反射的な行動こそ、カインの狙いだ。

黒炎を纏うようにしながらカインがプルトの視界に入る。

防御する間もなく、拳が腹部へ直撃する。

ステップインしながらの寸勁。

助走のついたこれを寸勁と呼ぶのは異なるが、その拳は魔力の壁をすり抜けるようにしてプルトへ直撃した。

しかし、カインの手に、十分な手ごたえは感じられない。

あたりはしたが、プルトが咄嗟に腰を引いたため、威力が落ちた。

プルトは即座に、体勢を立て直すと、拳を構えなおそうとするカインへ飛び膝蹴りを放ち、背後に回る。

そこから追撃のミドルキックで体勢を崩すと、反転しながら首を蹴りつける。

追撃の貫手で、右腕でカバーできない脇腹を狙うが、回転しながら飛んできた刀に阻まれる。

時間差の隔円斬かくえんざん

追撃の寸勁を放つ前に用意したのだろう。

プルトは舌打ちしながら急停止する。

だが、隔円斬とは単純に刀を投げる業ではない。

刀を手放すという隙をカバーするために追撃とワンセットになる業だ。

カインは、強引に踏ん張り、回転する刀を掴むと体勢を直すように回転。

その勢いのまま、再度回転し、プルトの胴を薙ぎ払おうとするが、わずかに届かない。

それを見て、踏み込むプルトを後続の黒炎が阻む。

時間にして数秒という時間だが、カイン渾身の連撃は致命打とはならず、奇襲に奇襲を重ねたが故に、相手に多くの情報を与えてしまった。

一方で、得られるものもあった。

プルトの俯瞰視点と通常視点の切り替えは即座にはできない。

それは接近してくる隔円斬を把握できなかったことから明白だ。

また、格闘技に類する技術は確かなものをもってはいるが、咄嗟に目をおさえるといった反射的な行動を抑制する訓練は十分に積んではいない。

総合すると、プルトへ致命打を与えるには『通常視点の状態』で『魔力の鎧を突破』しながらということになる。

そう結論付けたカインは構えながら思考をやめる。

不可能に近い。

そう判断したからだ。

まず、視点の切り替え。

これはプルトの意思に準ずる以上、先ほどのように無防備になって仕掛けさせる。といったハイリスクな手段が必要になる。

だが、当然、プルトは先ほどの攻防からそういった策への警戒を行ることはないだろう。

そして、魔力の鎧。

パルとの戦闘ではまだ、魔力を断つという宝剣の呪詛が十分に機能していたが、今は状況がとこなる。

加えて、そのパルとの戦闘では呪詛のある宝剣を手放した瞬間、一方的に攻め込まれたことから、カインにあの魔力の鎧を突破する策はない。

当然、こちらも先ほどの攻防の影響で、プルトは消耗を考えず常に展開するだろう。

魔力の消耗を待つにはあまりにも時間がかかりすぎるのも、この結論を補強する。

だが、それは単独でプルトと闘い続ける場合に限る。

ハウンドやオルカがいない今、自分と連携してプルトを倒せる可能性のある人物。

それが合流してくるのを待つ。

カインは、つま先に力を込める。

プルトの動きを最小限の消耗で対処し、合流を待つ。

しかし、そんな彼の思惑は簡単に裏切られる。

息をととのえたプルトが、一歩踏み出した瞬間、それが、2人の間に現れたのだ。

空中に現れた円から吐き出されたそれは、拳を地面に叩きつける。

いや、殴りかかろうとした体制のまま、地面へ向けて落とされている。

拳が地面にめり込むと、亀裂が走る。

カインもプルトも巻き込まれまいと距離を取る。

「いってえええええええええええええ!クソ!なんなんだよ!おい!クソ!どこだよ!ここはぁ!」

地面に食い込んだ右手を引き抜きながらパルは当たり散らす。

「めっちゃいてえ…」

情けない声を出しながら拳を撫でるパルの隣にカインは立つ。

「手を…貸してもらおう。」

「んあ?あ?」

カインの言葉で状況を察したのか、周りを見回す。

負傷者はいないようだが、血が飛び散っている。

つまり、重傷者が出たということだ。

そしてここにいない人間を探せば、それがだれか把握することは容易だ。

「そうか。そうかい。剣聖。手え貸せ。」

「小生がそういったのだが?」

「そうだっけか?まあいいじゃねえか。どうすんだ?」

「だから小生が…まあいい。手を貸そう。」

「そういわれると腹立つな。手え貸してやるよ。」

「なに?」

「ドリーム・タッグ結成だ。助け合いってやつだよ。」

パルはそう言って手を差し出す。

カインは釈然としない様子で息を吐くと、差し出された手を握り返した。


次回は水曜日。

活動報告更新してます。


Twitter→https://twitter.com/yukks_sousaku?s=21

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