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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

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2-53 『サーペント』という謎


船舶運用型デザインベイビー【一般情報】

ヤタ重工が開発、販売を行っているデザインベイビーの内、艦艇とセットで生産されるモデル。

船の内装や動力の制御パーツとして開発されており、1人で大型の戦艦を制御可能になっている。

これにより、人員の訓練等を必要とせず、納品されれば即座に海上戦力を確保できるというメリットを持つ。

ただ、船舶の動力系統や搭載される魔力内装、魔力炉に合わせてデザインベイビーを調整する関係上、互換性に乏しく、デザインベイビーもしくは船舶が使えなくなれば残った方も廃棄せざるを得ない。というデメリットもある。

戦艦以外にも水産会社向けの漁船モデルや海運用モデルも生産されていたが、基本的に専用に調整された船舶とセットになるため高額になりやすく、軍事目的以外にはあまり採用されていない。

一方で人工的な生命の誕生とそれを生体パーツとして軍事運用することに対する否定的意見は少なくなく、各国の軍縮もあってデザインベイビー全体の生産力は低下、ごく少数が研究用として生産されるに留まっている。


パル達の前に現れた光の球、その中から現れた男の顔はパルとハウンドにとって馴染み深く、感情を逆撫でされるものだった。

「サァァァペントォォッ!」

パルは怒りを爆発させ、男に襲いかかる。

相手が教団の幹部だからではない。

相手が自分達を裏切り、フレイルをはじめとする多くの龍の国の民を殺した元凶だからだ。

「ルビリアァァァァァァァァァァッ!」

男もまた、パルを認識すると雄叫びを上げる。

彼はパルの右のハイキックを腕で挟むようにして受けると、そのまま後方に投げ捨てる。

男は、地面を蹴り、パルとの距離を詰める。

立ちあがろうとしていた彼女の顔面へサッカーボール・キック。

パルはこれを首の可動で間一髪回避する

最初に違和感を感じたのはハウンドだった。

何かがおかしい。

パルは体を起こすのではなく、低空のタックルで蹴り上げた足ごと、男を倒しにかかる。

パルの手が男の胴を捉える瞬間、彼は跳び箱を飛ぶ要領で彼女の背中を飛び越える。

パルもここで冷静さを取り戻した。

即座に停止し、体を起こすと反転しながら再びハイキックを放つ。

だが、それは示し合わせたように男も同様だった。

着地から素早く反転し、ハイキック。

2人の蹴りが交錯した瞬間、ハウンドは違和感の正体に気づく。

サーペントが強すぎるのだ。

教団に寝返ったサーペントが天使やそれに類する技術によって生み出された存在であれば格闘技としての技術力は低いと見積もっていた。

「おかしい…天使はあれだけ動けるもんなのか…?」

ハウンドの思考は声になっていた。

隣にいたカインも同じようなことを考えていたらしい。

「確かに天使とは思えぬ。しかし、アレはサーペントでは?」

「そうだ。あれは龍の国の軍人だった。けど、サーペントってのはデザインベイビーだ。つまり、パルと正面からやり合えるほどの戦闘能力を持ってるなんて聞いてない。」

「あれさサーペントではないと?」

「これまであいつが力を隠していた…?ならなんで今まであいつは裏方に徹していた?あれだけの実力があれば出番はあったはず…」

デザインベイビーは特定の要素を持って生産される。

例えばドルフィンは船舶運用のために生産されたモデルであり、彼女と戦艦『ドルフィン』が揃って初めて戦力と言える。

無論、彼女自身、ハヌルロス争奪戦以降戦闘訓練を積むことである程度の戦闘能力を有しているがそれでも彼女以上の力を持つ兵士は多く存在する。

それは努力不足というより、魔力量や適性の面で限界が設定されており、個体差という誤差で収まる範囲以上に成長することがない。

デザインベイビーとはそういうものであり、ヤタ重工も完全に人工的な兵士としてパルやママのような生産英雄ファクトリー・ヒーローの研究を行っていたが、悉く失敗している。

「いずれにせよ…あれの正体を見極めねえとって感じだ。俺にはサーペントが2人いるようにしか見えねえけど…」

ハウンドの呟きにカインも頷く。

事実、目の前の男はあのパルと互角に戦っている。

2人は自然に発展した足を止めて拳の撃ち合いを続ける。

と言っても鮮血が飛び散る我慢比べのようなそれではない。

当たらないのだ。

放たれた拳はいなされ、躱され、防がれ、直撃しない。

時折、不意打ち気味に放たれるローキックすら的確に対処される。

痺れを切らしたパルは右の拳を開き、指を畳む。

男はパルが打拳ではなく掌打に切り替えたと察する。

拳という塊は防御に弱く、相手の出方次第では拳の方が破壊されかねない。

故に、男はパルが掌打に切り替えたのに合わせ、半歩ほど距離を詰める。

掌打は腕を伸ばし切る距離がなければ最大威力を発揮しにくい。

それは押すという単純な力の動かし方に腕という機器が長けているからでもある。

掌打による突きは己へのダメージを抑えつつ、『直線的な』攻撃において高い威力を持つ。

逆に言えばフックやアッパーといった肘を畳むような攻撃は不得手となる。

半歩詰めることでその最大威力を発揮させず、自分の攻撃を先に当てる。

その思考と判断、そして効率的な実行は訓練というより実戦の中で培われるものだ。

それを誕生して10年と経たず、前線での戦闘経験に乏しいサーペントが持つというのはやはり違和感がある。

パルでさえ、幾重にも視線を潜り、殺しにくる相手を見て学び、本能的な反射を思考レベルにまで解釈することで身につけたものだ。

それは彼女に限った話ではなく、ハウンドもカインも同様だ。

無論、パルは自分へのダメージを気にして掌打に切り替えるタイプではない。

詰められた距離に対して距離感を測るようにローキックを放つ。

男も素直に足をあげ、それを受ける。

パルは破裂するような着弾音を待たず、男の足に弾き返されるように一度、足を戻し、ミドルに切り替える。

ほぼ同時に炸裂音が響くほどの速度で放たれた2撃目のミドルが男の体制を僅かに崩す。

そこに待っていたのはこれまでの緊張感ある打撃戦からは想像もできないほど優しい、触れるだけの掌だった。

「5連龍頸。」

パルの確信めいた言葉いのりは絶滅の確信だ。

男は速射砲のような音を上げる魔力の波を受け、膝をついた。


「通信状況は!」

大同盟軍本部ではトータスが混乱した状況の整理に努めている。

パルたちの戦闘開始から数十分後、プルトとエルカが行動を起こしたタイミングで大同盟軍の通信網は機能停止していた。

「復旧のめど立ちません!」

「観測型ゴーレムからのデータ受信も途絶えたままです。」

「ヤタ・コミュニケーションズの技術者が確認作業に入りました。」

次々と上がる報告にトータスは焦りを覚える。

これが教団の策であればそれは通信されると困ること、つまり別動隊による奇襲や離反を誘発する行為が今、進行しているということになる。

それに、日常的に機器を扱う大同盟の通信担当ですら原因を究明できない妨害が成されているということは、教団側に商品だけではなく戦術的な妨害を仕掛けるほどの強力をする人物がいるということでもある。

ヤタ重工は確かに、教団と大同盟の戦争継続を望んでいるだろうが、ここまで直接的な干渉は想定していなかった。

理由は単純であり、仮に直接的に大同盟の妨害を行っていたのであれば、大同盟が勝利した後で、ヤタそして鉄の国そのものが次の攻撃対象になるからだ。

また、ヤタ重工のシンゴのように大同盟に便宜を計る社員もいる。

総合的に考えれば、ヤタ重工の一部、或いは一派閥が教団側に付いている。

トータスは舌打ちするとノイズの走る画面を睨みつける。

無論、画面がそれにおびえる訳でも答える訳でもない。

だが、彼にはノイズが自分をあざ笑っているように見えた。


パルと正体不明の男の戦闘、その後方。

プルトは出現した魔法陣を蹴る。

そこから弾けるように飛び出した無数の魔力光線が空に登った。

オルカはその既視感に恐怖する。

いや、皆、すでに見たものだ。

半日と経っていない。

龍閃の2番『惑龍閃』。

パルが刃の国の守備隊を壊滅させた光線。

飛び上がった光線は乱雑に、或いは恐ろしい精度で落ちる。

プルトの瞳が真紅の光を放つ。

パルが地面に触れるものを探知して精度のある無差別攻撃をしたように。

プルトは空から見下ろし、標的を指定する。

「やらすかよ。」

誰に向けたわけでもないオルカの言葉。

それは、守り切るという覚悟だ。

オルカは拳を突き合わせ、魔力を込めたそれを地面に突き立てると彼女を中心にドーム状の光の壁が生み出される。

プルトもその範囲に含まれることとなるが、今、それを気にしている場合ではない。

だが、広範囲かつ強力な魔力防壁には欠点もある。

それはオルカも承知するところであるが、彼女以外に真っ先に気付いたのはバイソンと三強大だった。

彼らが、オルカとプルトの間に入るようにすると、プルトはその欠点を察する。

「なるほどな。」

その一言で、ママやオジマ、ヤマトも気付き、オルカを守るように立ち位置を変える。

「なるほど、なるほど。ルビリア・オルカ。お前の信頼の仕方は美しいな。己が無防備になる巨大防壁の展開。そして、それに呼応するように龍の国どころか、他国の軍人も動いた。なかなか見られるものでもないな。」

プルトはそう言うと、再び、全員の前から消えた。

上空に飛んだ光線が落着するまで数十秒。

全員の生存を賭けた超短期防衛戦が始まった。


今回で年内更新は最後になります。

次回は1月3日に更新予定です。

年明けから連載を始めて、一年走り抜けられたのは日々、読んでいただいた皆様のおかげです。

今年一年、ありがとうございました。

来年はシーズン2完結、そしてシーズン3開始となります。

来年も拙い文章ですがよろしくお願いいたします。

更なる飛躍を目指し、自分の世界を書いていこうと思います。


Twitter→https://twitter.com/yukks_sousaku?s=21

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