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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン2 Visitor from the Past

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2-49 生きる意味

龍の一族【未確定情報(一部大書堂検閲済)】

龍戦争以前の時代から大海の龍と交流してきた部族。

便宜上、一族と呼ばれるが、実態としては小さな漁村の村人が該当する。

大海の龍に陸の幸を分け与えることで船の安全や大漁といった恩恵を受けていたとされるが詳細は不明。

龍戦争において龍討伐派により、大海の龍が撃たれたが、彼らは龍の■■を確信していたと言われている。

また、彼らは大海の龍の力を受けており、子孫に至るまで特異な力を持っていたとされるが詳細は不明。

現在、一族は離散し、明確にその血統に名を連ねるものは確認されていない。


裏切りの天使ラキエ、リトを始末したプルトの元にカヨが駆けつける。

彼女も風の国戦力として大同盟との戦闘に参加する予定ではあったが、プルトがデルフィンを呼び出してから時間がかかっていたため様子を見にきていた。

「これは…一体何が?」

玉座の間に入ったカヨは震えた声を出す。

戦闘の後を物語る凄惨な光景だ。

「カヨ殿!いやはや良くぞ参られた。通信機がどこにあるかご存知ないかな?恥ずかしながら他のものに任せっきりで余は場所を知らんのだ。」

惨劇の爆心地に立っていたプルトは笑顔でそう語る。

まるで戦闘などなかったような様子だ。

「通信機であれば私のものがある…が…?」

カヨは恐る恐る持っていた通信機を差し出す。

プルトは声を上げて喜び、部屋の隅で小さくなっていたデルフィンの元へ迫る。

「では、ジェスから指揮権の剥奪と大同盟への投降を。」

デルフィンは涙を浮かべながら通信機を手に取り、必死に呼びかけた。


「終わったようだあ。全てねえ。」

通信機の呼び出しにジェスはつぶやく。

ハウンドもこの通信の意味はわかっている。

「はい…議長お…ええ…承知しましたあ…」

ジェスは短く通信を終えると、ハウンドの方を向き、宣言する。

「大同盟い猟犬殿お。今、私に与えられていた全権は剥奪されたあ。緊急時につきい、議長の独断ではあるがあ、これよりい、我々は投降するう。条件は刃の国の大同盟への参加だあ。」

ハウンドはその内容をトータスに通信で伝えた。


「戦闘停止?意外と時間かかったな。」

オルカはトータスからの連絡を受け立ち上がる。

『それと、これからすぐに風の国からの攻撃が予想される。連戦で悪いが補給を受け休息を取るように。向こうの監視は後続部隊が担当する。補給地点は準備が整い次第、連絡する。』

「なんと卑怯な。」

カインは思わず呟いた。

彼の言う通り、大同盟を消耗させた上で攻撃を仕掛けるというのは卑怯と言われても仕方のないものだ。

「そうか?むしろお行儀がいいと思うがね?」

オルカは反論する。

「風の国は盟約を裏切った刃の国への制裁として攻撃してくるんだろ。それはつまり、宣戦布告ありきだ。」

カインはここまで説明を受けて納得したらしい。

「確かし筋は通っている…しかし、なんと言うか…」

「んまあ言いたいことは分かる。フェアじゃない。けど、フェアじゃないってのはアタシらもそうさ。まともに防衛線を作れない刃の国を有り余る戦力で潰してんだからな。」

カインは押し黙る。

どうしても当事者としての視点優先し、客観的な視点を忘れてしまう。

カイン達の近くで補給班のトラックが停車し準備を始めるのが見えた。


「これでひと段落か。」

サラと対峙していたパル達の元にも停戦の連絡が来ていた。

同時に風の国、プルトとの決戦が近いこともなんとなく感じていた。

「サラ、お前は洞窟へ帰れ。刃の国が降伏した以上、ここは戦場になる。」

「私も…」

「下がれと言った!まともな訓練も受けてない子供ジャリが出る幕はねえ!」

パルはサラの言葉を遮る。

それは軍人としての矜持でもあり、軍人としての正義であった。

だが、それを知る由もないサラは食い下がる。

「冗談じゃない!私だって戦える!」

「細かい事情はわからんが…貴女が出る幕はないのが確かだ。」

サラに対し、ママが諭す。

「お前は関係な…」

乾いた音が響く。

ママがサラの頬を叩いた。

ママの目にはザイチと戦っていた時の強い光を宿している。

「子供の出る幕ではないッ!いいか!軍人というのはお前たちを守るためだけにあるのではない!お前たち子供が戦場に出ないために代わりに戦う存在だ!」

パルは無意識に視線を下げていた。

かつて戦った相手の持つ正義を自分という存在が踏みにじっていることを知ったからだ。

子供が戦場に出る理由はいくつかある。

生きるため。

生き残るため。

だが、そのどれもが遡っていくと正規の軍人に起因する。

彼らという力が足りない。

或いは及ばない。

そこを起点に軍人と大人の境界は曖昧になる。

傭兵のように金銭を求めるもの。

自警団のように自分たちのコミュニティを守るもの。

彼らは力が欲しい。という至極単純な要求に答えた。

この境界の曖昧な状態はすでに軍人という規則の元に成り立つ存在を脅かす。

金さえ払えば人殺しや拷問、虐殺でさえ行う。

また、自警団もその力が健全に振るわれ続けるという保証もない。

規則の外であることが最大の問題となる。

自由とは制御下にないことと同義だ。

制御不能になった力は大人と子供の境界を曖昧にする。

引き金を引けば人を殺せる。

簡素化された重火器は筋力の差をなくし、体格の差をなくす。

人殺しのハードルを下げるのだ。

これは術式も同様だ。

魔力は人々の生活に根付いている。

自転車に乗るように、一般に販売されている魔力製品を扱えるようになる。

各国に点在するヤタ重工の支店。

そこに足を運べば人殺しのための重火器も術式も手に入る。

国がそれを供与するのか、己の力で手にするのか。

経緯は異なれど、おおよそそう言った理由で軍人に守られる立場の人間は戦場に出る。

パルは顔を上げ、サラと目を合わせる。

「オレが言えたことじゃない。だがな、簡単に人を殺すなんて覚悟を決めるんじゃねえ。こんな時代で、こんな状況で、仕方ねえと思うかも知れねえけどよ。お前はオレと同じように生きる必要はない。」

今度はサラが目をそむける。

サラにとってパルの生き方をなぞるのは簡単だ。

自分にはそれだけの能力がある上、誕生して20年以上、前線で生き抜いてきた前例がある。

だが、生きるとは。

人生とは。

過去を積み上げるということはそう単純でわかりやすいものではない。

常に想定外のことが起き、明日の天気さえ知ることはできない。

眠れば目覚めるとは限らず、次に眠りにつける保証などない。

生きていれば死ぬこともある。

そういうものだ。

サラはそういった意味で楽な道を選ぼうとしていた。

仮に死んだとしてもそれはそれだと考えていた。

それは思考をしないということに等しい。

サラはそれに気付いたのだ。

「おとなしくしとけ。全部おわりゃ誰かが生き方を教えてくれる。」

パルもママもザイチさえも笑っていた。

自分もそう言って笑えるようになるのだろうか。

生まれたばかりの目的もないサラはそう思った。

だが、生きる目的など漠然としていて明確になることなどあまりない。

それもまた、人生というものだ。


議場ではハウンドがジェスの身柄を取り押さえていた。

デルフィン議長から権限のすべてを剥奪された直後、自決しようとしたからだ。

「やめなよお…猟犬…私は終わりにしたいといったはずだあ。」

抵抗するジェスをハウンドは力で御する。

「刃の国が存在する以上、自分は目の前で死のうとする捕虜を見過ごすわけには行きません。」

「大同盟にメリットもない…違うかなあ?」

ジェスは反論する。

「メリット?馬鹿なことを。教団の指示系統に組み込まれていた貴方は重要な情報提供者だ。」

「情報を渡すとでもお?」

「どうかね?俺の鼻は物資を嗅ぎつけてるんだぜ。」

ジェスは抵抗をやめる。

「猟犬というより狸だねえ…君はあ…」

観念したようにぼやくジェス。

ハウンドは真剣な口調で話す。

「あんたが死んだらこの国の復興はどうなる?風の国以外に避難した人たちもいるはずだ。彼らのためにもあんたには生きていてもらう。」

「…柄じゃないんだけどねえ…そういう内政事せいじはあ…」

ハウンドは笑う。

「これだけのことをやって内政が苦手はないでしょう。驚きましたよ。よく兵も兵器も集められた。それし物資も。」

ジェスはハウンドが自分を捕虜や敵ではなく大同盟の組織に属する上官のように扱っていると感じた。

「おかしなもんだあ。私が大同盟などとお…」

ジェスのぼやきはこれから彼を待つ無数の業務に対して放たれた。


大同盟軍による初めての軍事行動『刃の国侵攻作戦』はここに終結した。

幸いにも大同盟の死者は0。

刃の国の方は脱走者を含む約23名が死亡ないし行方不明で、最後まで抵抗していたジェスを含む4名が捕虜となった。

大同盟軍は刃の国の投降を即座に承認。

当初の予定通り、同国は大同盟の属国となる。

大同名側の作戦総指揮者であるトータスは即座に刃の国駐留を大同盟に進言。

段取りよく承認までこぎつけた。

それはレイア、ソラ、ヤーポートという大同盟の軸を形成する大国の長が揃っていたことも大きい。

大同盟は当初の予定とは変わったものの刃の国からの提供とパルが用意させていた龍の国物資で補給を行い、風の国を迎え撃つことになる。

滅び、破壊の後が痛ましいこの国に戦火と血の彩りが加えられるまでそう時間はかからない。

全ての決着。

大局的に見た場合、これはその決着を導くだろう。

だが、一部の人間にとっては異なる。

特に過去との決着を望むものたちにとって、この戦いはスタートラインだ。

ここで目の前の拗れた問題に片をつける。

その思いは過去との決着を望む彼女たち全員が一致していた。


次回は水曜日。

活動報告更新してます。


Twitter→https://twitter.com/yukks_sousaku?s=21

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