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白の襲撃者  作者: 田中 遊華’s
シーズン1 Trigger of Catastrophe

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1-3 パル

魔力量まりょくりょう【一般情報】

人などが持てる魔力の総量(最大〜とも)。

一般的に全てを使い切っても問題ない。

休養すればその魔力量まで回復する。

衰えることはないが、生まれ持った最大量を増やすこともできない。

魔力量の多い人間は老いの進行が遅いとの仮説があるが真偽不明。


王城に帰還した後、ハウンドは女王の執務室にいた。

日を改める予定だったが、説明をしてほしいとのドラゴンの要望があったからだ。

「じゃあ、貴方の身だしなみを整えてからね」

と、笑顔で返した女王にハウンドは驚くしかなかった。

自分が怯えすぎなのか。とさえ思った。

紅茶を飲みながらそんなことを考えていると部屋の扉をノックする音が聞こえた。

女王が入室を促すと白いシャツに黒のジャケットとチノパンの20歳ほどの女性が入ってきた。

その瞳は血を思わせるように赤く、髪は真珠を思わせる銀髪で背中のあたりまであるストレートヘア。

先程のお化けのような出立ちから一変、王宮に使えるメイド達によって、人の姿になった。

ハウンドはようやく安堵した。

10年前に会った頃からほとんど変わっていない。むしろ美人になったと思うほどだった。

ここでようやく彼の中のドラゴンのイメージと彼女が合致した。

フレイル驚き、立ち上がって、

「お…女の子…なの!?」

と声を上げた。

(言ってなかったな。そういえば…)

ハウンドはドラゴンの参加反対ばかりに気を取られていたことを思い出した。

「ごめんなさいね。男性だと思っていたから服も男物しか用意してなくて…」

と言いながらもその目はまだ、目の前の少女がドラゴンだという事実を受け入れ難い様子だった。

「問題ありません。陛下。」

ハウンドの記憶にある粗暴な言葉遣いとは異なる礼儀正しい言葉と声だった。

「私は動きやすい服装の方が好みなので。」

私という一人称に少し引っかかりながら、どうせならドレスでも着せてやればよかったのに。とハウンドは思った。

「と…とりあえず座ってちょうだい。もう1人来るからもう少し待ってて。」

フレイルは動揺が隠せない様子だったがドラゴンは茶化すことなく、失礼します。と言ってハウンドの隣に座る。

石鹸の香りがハウンドの鼻に運ばれる。

その時、もう一度部屋の扉をノックする音が聞こえた。

女王に促され入ってきたのは70歳くらいの老人だった。

背筋を伸ばし、紺のスーツを着たその立ち姿は細いながらもしっかりとした力強さと気品を纏っていた。

「ドクか!?」

ドラゴンははしゃぐように立ち上がって老人の方を見る。

「おぉ!ドラゴン!見違えたぞ!美人になったものだ!」

はっはっは。と笑いながらドクと呼ばれた老人はドラゴンと握手を交わす。

ハウンドも挨拶のために立ちあがろうとしたが女王が止める。

「紹介は私からするからとりあえず座って。」

老人は促されるままドラゴンの隣に座る。

祖父と孫のようにハウンドの目には写る。

「貴方達3名を本日、現時刻をもって私の直属部隊である白の部隊に任命し、新型艦ノーチラスを同部隊に配備します。」

儀礼的な口上を述べ、資料を3人に手渡すとフレイルは彼らの対面に座った。

資料の表紙には『白の部隊概略』と書かれ、右肩には『極秘』の文字がその重要性を物語る。

彼女の説明は簡素だった。

軍を動かせば他国を刺激しかねない案件や自分が外遊する際の事前調査及び公務中の護衛。

未開拓地域や緩衝地帯の調査など任務は多岐にわたる。

また、彼らに与えられる新造艦ノーチラスは多目的戦艦で海上、海底だけでなく地上でも活動可能であること。

そして、資料の最後尾には部隊員の略歴があった。

「まずは隊長となる陸軍魔法中隊長のハウンドね。あ、でも今日付で中隊長じゃなくなるわ。」

簡単に紹介した後、フレイルはハウンドへ挨拶を促すように彼と視線を合わせる。

「セリンスロ・ケン。コードネームは猟犬ハウンド・ドッグ。ハウンドと呼ばれている。よろしく。」

簡単な挨拶を終えるとフレイルは資料のページをめくりドラゴンがドクと呼んでいた男を紹介する。

「技術担当のドクトル・シュナイダー。緊急時の外科治療なんかも担当してもらうわ。」

老人は資料を静かに置き、ハウンドの方を見て話す。

「アルデント・シュナイダーだ。ドクトルだとかドクと呼ばれておる。ノーチラスの建造に設備面で関わらせてもらったから船のことで気になることがあれば聞いてほしい。」

その名は軍人であるハウンドですら知る名であった。

アルデント・シュナイダーは魔力に関する動力機関の改修やそれを応用した機器の発明で民間、軍事ともに名を馳せ、血液に薬剤を投与することで自然治癒力を高める研究などの医学方面でも高い地位を持つ天才だ。

(大物だな。隠居したと聞いていたが…)

彼の発明には戦場の内外問わず、ハウンドも助けられていた。

ああ。とハウンドが答え握手を交わす。

ハウンドはページを捲り、最後の1人であるドラゴンの略歴に目を落とす。

そこには集合写真の切り抜きが貼られた白紙の書類があった。

写真を見るにおおよそ十数年前、ハウンドが初めてドラゴンと出会った頃のそれに近かった。

白紙とはな。とドクがつぶやいた。

ドラゴンは写真を懐かしんでいるように見える。

フレイルは、

「ドラゴンなんだけど経歴に関するデータは削除しました。写真も退役した軍人の持っていたものね。13年前かしら。」

と、説明する。

削除した。つまり、ここにいるドラゴンはドラゴンではない。

文字通り、新たな個人として配属されることになる。

フレイルは続ける。

「ドラゴンがドラゴンとして動くのは彼女を知る人間に警戒されかねない。そこでなんだけど…ここで貴女の名前を決めましょう!」

楽しげに提案されたそれにハウンドは驚く。

偽名を名乗らせる。それは不思議ではないが与えるのではなく決めさせる?

ハウンドは驚いた。

予め決まっていないのは、この部隊が女王主導というより、私設部隊であるということでもあった。

「貴女、本名とかあるの?あるならそれでもいいわよ。」

狼狽えるドクとハウンドをよそに身を乗り出すようにしてフレイルは問う。

ドラゴンは、いえ、孤児だったので。と答えるがその様子はハウンド達と同じく狼狽えた様子だ。

そう。と少し悲しげに呟いたフレイルはソファに沈み込み腕を組んでドラゴンを見る。

「真珠みたいに綺麗な髪ね。羨ましいわ。」

「恐縮です…」

とドラゴンは顔を赤らめて小声で返す。

よし。とフレイルは呟き、再び身を乗り出すようにして言う。

「パル!真珠パールのような髪だからパルよ!」

黒毛の猫にクロと名付けるような安直さにハウンドは呆れすら感じるほどだったが当のドラゴンは髪を褒められたのが余程嬉しかったのか気に入ったようだった。

であれば。とドラゴンは口を開く。

「ルビリア・パル…でいかがでしょうか?」

ルビリアという名にハウンドは聞き覚えがあった。

かつて陸軍の士官だった女の名でゴーレムを軸とした機甲部隊の長を務めていた人物だ。

(戦死したんだったか。)

ハウンドの管轄していた部隊ではなかったため、この時の彼はしらなかったが、ルビリアの部隊は作戦中に孤立、その救助に向かったのがドラゴンだった。

また、彼女の姉は現役の海軍将校でもある。

フレイルは、その名をうわごとのように何度か呟いた後、手を叩き、いいんじゃない。と賛同した。

こうして、女王の白紙の命令書で動く、白の部隊は設立された。

指揮官ブレーンにハウンド

技術者メカニックにドクトル

襲撃者ストライカーにドラゴン改めてパル。

この3名のみの小規模すぎる部隊ではあるが、その力は龍の国で最強と言って差し支えないものだった。


次回は土曜日?あたりに。

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