姉と情報と噂と
情報を集める仕事をこなすため、ギルド職員に俺は尋ねる事にしてみた。
「すみません、この依頼を受けようかと思っているのですが、この依頼書に書かれている事以外で何かこの依頼についての情報とか無いですかね?」
丁度、受け付けにいた女性に聞いてみたが、これ以外の情報は無いとの事だった。
仕方ない。そうなれば、ツテを使って情報収集だ。
俺は、つい先日までソロで冒険者をしていた。そのせいで、色々な人にお世話になってきた。そんな事もあり、いろんな人の連絡先をたくさん知っているのだ。
でも、この世界に電話や、携帯電話なんか無いと思われるかもしれないが、そんな事無い。もちろん有る。なんなら、スマホや、携帯電話なんかじゃなくホログラムだが。
一応、元現代日本の高校生としてはあまり慣れない、というか相手から姿が見られているのだからだ。
よくある近未来を舞台としたアニメや、映画にある感じのだと思えば良いだろう。
まぁ、そんな事は今はどうでもいい。今しなければいけないのは情報収集だ。依頼書を見る限りでは、場所はここからかなり遠いという事が分かるにしても、正確な場所は書かれていない。となると、まずは地図アプリで検索だな。どれどれ、えーっと、街の名前は、シュルエらしい。早速検索してみよう。お、出てきた出てきた。
どれどれ、ふむふむ、よく分からんが、とりあえずこの街の位置は分かった。なんでも、ここからかなり遠いとは言ったものの、まさか700キロ近くの距離に有るとは思わないだろう。どうだろうか、師匠の車で1日で着くだろうか?いいや無理だろう。なんて言ったて、もうすぐ時刻は10時を回ろうとしているからだ。恐らくこれから、集合、出発となると1、2時間はかかるだろう。車で行ったとしても、途中で休憩や、渋滞などで時間がかかるだろう。と、するならば着くのは夜中になるだろうか。流石に依頼を受けたからと言って夜中に訪れるのは迷惑だろう。宿の事もあるし、下見や準備もあるから……ってなんで俺がそんな事考えてるんだよ。これは、師匠の仕事だろ。
はぁー、なんかどうでもいい事考えたら疲れた。なんかめんどくさい。でも、今得られた情報なんて流石にみんなに報告なんて到底出来やしない。仕方ない、もっと情報を集めますか。
さぁ、どうするラバル、考えろ。
と、考えてみた結果、姉さんに頼ることにした。一番これが手っ取り早いだろう。さっそく電話してみるか。
「フィリア姉さん、忙しいところすまないんだけどチョット聞きたい事があるんだけど、今いい?」
「あー愛しのらぁくんのためならお姉ちゃんなんでもするよ。たとえ火の中水の中だって――」
「フィリア姉さん嬉しんだけど、今は時間が無いから手短に」
仕方ないなーなんて呑気な声が聞こえてきたが無視した。
でもまさか、こんな短時間で2回も熱烈な愛情を受ける事になろうとは、まぁ、悪い気はしないが。
「フィリア姉さん、シュルエって街知ってる?」
シュルエという街の名前を出しただけで明らかに、フィリア姉さんの反応が変わった。
「どうして、らぁくんその街の名前を知ってるの」
え、俺なんかしました?
いつもの俺の知ってる温かくて、優しい姉さんとは明らかに違う反応をされ、少し面食らったが何もやましい事なんてないので、正直に言う事にした。
「なぜって、今度の仕事がそこであるんだよ」
「そう、良かった」
心からの安堵、そう言った様な口調だった。
「シュルエは、織物の街でね、糸や、布を作る工場から服を作る工場までとにかく織物で経済が回っているの。でも、そうなるとそれ以外の工業が発展しないくなってしまうの。だから、最近は、経済が滞り始めていて、街から若者が出ていく割合が上昇しているの」
「えーっと、フィリア姉さん、もう少し手短にできませんかね」
「え、そんなに話しちゃったかしら。うん、分かったわ」
「それならいいけど」
「じゃあ改めて、どこまで話したかしら?」
「まだ、何も」
「そう。じゃあシュルエは、織物の街で―」
「フィリア姉さん、ごめん、そこ聞いた」
「あら、そうだったかしら」
「つい1、2分前に聞いたんだけど。もしかして、フィリア姉さん記憶喪失?」
「そんなわけないでしょ!いつ突っ込んでくれるのか待っていただけですー!」
「ハイハイ、分かったから続きをお願いしますお姉様」
「し、塩対応!?」
「そんな暇無いから手っ取り早くおねがいしたいんだけど」
いい加減こんな時までふざけないで欲しい。
「わかったわよ、もう。仕方ないわね。」
そう言うと、姉さんは説明をまた始めた。
「でも、説明するにしても何も無いのよねこの街。本当に、織物しかない田舎町で、特に言う事がないのよね。そんな何も無い街に仕事なんてとうとう仕事がないのかしら」
「何故だろう。遠回しに俺ではなくシュルエがけなされている気がしているのだが」
「そんな事ないわよ」
明らかに俺含めシュルエをバカにしている。なんて罰当たりな事を。
「あ、そう言えば、噂を聞いたことならあるわよ」
噂?俺が知る限り博識な方の人間である姉さんが根拠の無い噂を信じるとは思えないが、何か有るのだろう。
「なんかね、出るらしいわよ」
「幽霊でも出るのか?」
「幽霊なんて可愛いものが出るわけないでしょ」
幽霊が可愛いってどんな感性してんだよ。我が姉ながらよくわからん。
「出るのよ、ドラゴンが」
そりゃあ幽霊なんて可愛いもんだ。