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悪魔勇者 立志編  作者: 響 翔哉
第1章 依頼
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冬とギルドと茶番劇

いよいよ始まります。

 俺は今、まだ冬の寒さ抜けきらない2月の大通りを歩いている。

 今日は冒険者の仕事があるので、冒険者ギルドに向かっているのだ。

 至る所で人々が凍える体をお互いに温めあっている。

 カフェや、飲食店からは湯気が上がり、次々と体の冷えた人達の心も体も温め始めていた。

 に、しても寒いな~今日は。出来れば家で温まっていたい。でも、仕事はしないとな。

 そんな事を考えていると冒険者ギルドに着いた。

 ギルド内に入ると見慣れた初老の男性と若く真面目そうな魔法使いが掲示板の前にいた。

「おはようございます師匠、フルメルさん」

「よォ、クソ坊主」

「おはよう、ラバルくん」

「ところで、ユリさんは?」

「いや、まだ来てねェな」

 ユリさんはまだ来ていないようだ。まぁ、いつもの事だが。

「ところで師匠、今日の仕事はなんですか?」

「今、この二つから選んでンだよ」

「ちなみに、依頼内容は魔物の討伐か、立ち入り禁止区域の警備のどちらかなんですよ」

「こんな寒いのに魔物の討伐ですか」

「ええ、なんでも山の洞窟を冬眠場所に選んだらしくて、その洞窟を近くの住民が使うらしく」

「なるほど、それは厄介ですね。えーっと、他にはないんですか?出来れば、中の仕事がいいんですけど」

「ねェよ。ンなの」

 まぁ、確かにこんな時期に外以外の仕事はほとんど他のパーティが取り尽くしているからな。

 確かにこのパーティはこのギルドで上位だが、何せみんな朝に弱い。中の仕事は朝イチじゃないとほとんど無いから、必然的にできる仕事が限られてくるのだ。

 ちなみに、中の仕事とは、ダンジョン探索の事で、なぜ人気かと言うと、年間を通して同じ気温で、夏は涼しく冬は暖かいからだ。年間を通して人気な仕事なのだ。

「リーダーがもっと早く起きてくれれば中の仕事もあったろうに。いつもいつも寝坊するからこうなるんですよ」

「うッせェなァ!だったらオメェが早く来りゃいい話だろうがァ!」

 はぁーまた始まった。毎朝名物冒険者ギルドの痴話喧嘩。

 まったく、大の大人が朝っぱらから喧嘩しやがって。恥ずかしくないのか。

 こういうのは、関わらない方はいいだろう。そっとしておこう。でも、こういうのは大抵俺に飛び火するんだよね。

「なァ、クソ坊主もそう思うだろ?」

「ラバルくんは、どう思う?」

「えーっと……」

 はい、来ました。ヤッパリね。こういうのほんとめんどくさい。どちらかの肩を持つでもなく、どちらも不快にさせない良い対処法を是非とも教えて頂きたいものだ。あぁー人生難しーい。

 それにしてもどうしたものか。どう答えるのが正解なのかもうわからなくなった。

 そんな事を考えていると後ろから物凄い勢いで何者かに抱きつかれた。と言うよりは、背骨を折にきたという方が合っているかもしれない。

「グへぇっっ」

 到底人間が出せるような声ではない声が出た。

 そんな事を毛ほどにも感じていない様子のテロリストは、ユリさんだった。

「あ〜ラバルくん。私の愛しのラバルく〜ん。あ〜お持ち帰りした〜い」

 そんな事を言いながら更に抱きついて背中に顔をスリスリし始めた。ふくよかな胸が当たってチョットこれはまずい。

「あの、ユリさんそのやめて頂いても」

「えーっラバルくんは私に抱きつかれるの嫌?」

 今にも泣きだしそうな程目を潤ませながらユリさんは上目遣いで訴えてきた。

 そんな顔で見つめられたら嫌なんて言えない。

「別に嫌って訳では」

「ならいいじゃん。もっとスリスリさせて」

 そうじゃ無いんだけどな。でも、こんなに可愛がられて、しかも美人に嫌なんて言えない。それに胸が当たって嫌なんて言う男は居ないだろう。

「もうその辺にしとけ。クソ坊主が困ッてンぞ」

「そうですよ。どうするんですか、ラバルくんの大事な所が暴走したら。あなたが責任とってくれるんですか」

「っ……!フルメルさん!何言ってるんですか!」

「あーそうか、もうそんな時期か」

「時期ってなんですか時期ってー。ユリさんも、調子に乗らないでください」

 まったく、いい歳した大人3人で俺をイジメるなんて。

「あっ、そう言えば今日の仕事はなんですかリーダー」

「まだ決まってねェ。そこで、ユリ、おめェに頼みがある。どっちか決めてくれ」

「え、私が決めていいの?」

「ああ」

「仕方ないな。今回だけだからね」

 とか言いながらノリノリである。

「では、発表しま〜す。…………………ズバリ、魔物の討伐です」

 うあーヤッパリそっちか。ですよね。だってユリさんそういうの大好きですもんね。初めからそうなんじゃないかと思ってましたよ。

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