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謎の少女と水筒
「ねぇ、大丈夫?」
それは、小さな声だったものの何故かはっきりと聞こえた。
顔を上げるとそこには一人の少女が立っていた。年齢は同じか少し下だろうか、15、16くらいに見える。少女はもう一度「大丈夫?」
と聞き、おそらく水が入っていると思われる水筒を渡してきた。普通なら知らない人から飲み物など受け取らないのかもしれないが、状況が理解できていないうえにくたくたに疲れていたので渡されたものを受け取ってしまう。飲み始めると、いつも飲んでいる東京の水道水の何倍もおいしく感じた。
自分でも驚くくらい喉が渇いていたらしく、ごくごくと飲んでいると隣で少女がくすくす笑っている。
「可愛いなぁ・・・」
言ってから少女の驚く顔を見て心の声が漏れていることに気づく。慌てて訂正するも、時すでに遅し。少女は最初は顔を少し赤らめていたが自分が慌て始めると、また笑いはじめた。お腹を抱えて大爆笑したりはしていないが、微笑しているのが逆に少し頭にくる。そんなことは一旦忘れて借りていた水筒を返す。軽く頭を下げながら渡すと、少女は両手で丁寧に受け取った。