ペットと共に異世界へ
異世界。
もし、異世界に何か持っていけるとしたら何を持っていくだろう。異世界もののラノベを読みながらふとそんなことを考える。
チート級の魔法や、一撃で敵を倒せる剣。もしくは、スマホやパソコンなど電子機器だらうか。どれも、異世界に持っていけば、とても役に立つかもしれない。しかし、最後に思い付いたのはペットだった。
うちには、生まれた時から一緒に暮らしているペットの猫がいる。名前はクー。ペットというよりはもう家族に近い存在である。ある日、いつも通り学校から帰り、クーと遊んでいた。一通り遊び終えて、宿題をしようと自分の部屋に向かおうとするとクーがついてきた。クーを抱き上げ、部屋のドアを開けると、部屋の中に吸い込まれるような感覚に襲われた。そのまま部屋に吸い込まれ、まぶしい光に包まれた。
目を開けるとそこには、中世風の街並みが広がっていた。
「ん?」
状況を理解できなかった。体が無意識にもときた場所に戻ろうと後ろを振り向くが、レンガの壁があるだけである。さらに、状況が分からなくなり自然と手から力が抜けた、それと同時に腕の中にいたクーが抜け落ち、流石猫と言わんばかりの華麗な着地を見せると、いきなり走り出した。数秒遅れて、体が反応する、しかし一度走り出した猫は止まれないのか、ものすごい速度で市場と思われる場所を駆け抜けていった。屋台の数が減り、少し広場のようになっているところで、クーは止まった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
普段あまり運動をしない体には、猫を追いかけるなど過酷すぎたようだ。一方クーは、何食わぬ顔で毛並みを整えている。近くにあったベンチに座り、ぜーはー言いながらその様子を見ていると誰かに話しかけられた。
「ねぇ、大丈夫?」
それは、小さな声だったものの何故かはっきりと聞こえた。