第79話 殺人カップルは空を往く
前方には、鳥の魔物に乗る兵士が展開している。
その後ろには、箱型装置を背負って飛行する魔術師の部隊もいた。
すべて合わせると一万人を超すだろう。
恐怖を打ち消すため、全軍に精神魔術が施されているようだ。
睨み合いもそこそこに兵士が突撃してくる。
その後方から七色の魔術が幾千もの筋を描いて放射された。
我々を狙って次々と飛来し、要塞の各所に命中する。
まさに破壊の雨だった。
振動がここまで伝わってくる。
しかし、全体としてのダメージは微々たるものだろう。
機能面にはまったく問題ない。
この程度で壊れないことは知っている。
「ふむ、悪くないな。及第点だ」
操縦席に腰かける私は悠々とボタンを押し込む。
要塞に備えられた大砲が一斉に動き出して、轟音と共に砲撃が始まった。
爆発に次ぐ爆発。
青い空に血の花が咲き狂った。
前方を占拠する軍があっけなく崩壊し、無数の肉片となって落下していく。
ボタンを押すたびに砲撃が連打される。
立ち向かう者も撤退する者も等しくミンチとなった。
「ハハハ、これは便利だな! 悪くない乗り心地だ」
魔術的な技術で映し出された映像を前に、私は手を叩いて大笑いする。
とても清々しい気分だった。
この手で命を刈り取る感覚は薄いが、ゲームのような手軽さと、現実の殺し合いの臨場感が上手く両立している。
ジェシカも映像を眺めながら嬉しそうにしていた。
休憩中の余興としては十分だろう。
浮遊島と遭遇した我々は、三十分ほどで勝利を掴み取った。
凄まじい密度の砲撃はジェシカの防御魔術で完封できたし、動力源である巨大亀を始末すれば、簡単に撃墜することができた。
そして、召喚した無人の浮遊島で移動を始めて現在に至る。
巨大亀は驚異的なタフネスを披露したが、死ぬまで爆撃を叩き込んで抹殺できた。
私の攻撃力は今や反則クラスだ。
使い込むほどに馴染む感覚がある。
本気になれば、どんな存在だろうと殺せるだろう。
私は気分よく口笛を吹きつつ、操縦席から巨大亀に指示する。
兵器として調教された巨大亀は従順に空を進んでいく。
「すぐに操縦方法が分かるなんてさすがダーリンね。どこで勉強したの?」
「フィーリングで分かるものさ。乗り物は人が動かしやすい設計になっているからね」
どうしても分からなかった部分については、浮遊島の乗員を召喚して確認している。
軽く尋問すれば懇切丁寧に説明してくれた。
だから手間取ることはなかった。
指紋認証のセキュリティーも、蘇らせた艦長の手を切り落とすことで解決した。
最低限の機能なら単独でコントロールできるので、操縦面で詰まることもない。
我々を乗せた移動要塞は、快適な空の旅を続けていた。




